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スキとキライ

思えば子どもの頃は好きなもの嫌いなものがハッキリしていた。
もちろん今でもハッキリ区別できるものもあるけれど。


うっすらとした子ども時代の記憶で、父が自分の趣味であるスキーに誘ってきたり、メカ好きだったのでノートパソコンあげるからやってみるか?言われたことを覚えている。

私はアナログ派で画用紙にお絵描きしたり本を読んだりする方が好きだったので、ことごとく断って、父は残念だったに違いない。



たぶんそれは4、5歳の記憶で、まだ世の中がバブリーだった時代。父の勤めている会社はよく家族含めていろんな土地へ海外旅行ができて、旅にもよく誘われた。
今だったら行く行く!と二つ返事のところ、当時物語を読んで自分の妄想の旅の方が楽しかった私はそれも断っていた。


今ならノートパソコンも貰えるの!?と価値を天秤にかけて考えたり、スキーに行った方が父が喜ぶかなと人の気持ちを考えたり、旅も行ってみたら楽しいのかもしれないと他の方向性で考えたりすると思う。

もちろん大人になって世界が広がって、価値観が変わったこともあると思うけれど。
潔く興味がないことを断れた子ども時代の自分をカッコイイと感じる。



最近、「プリティ·ブライド」と言う映画を観た。もう20年くらい前の作品。
大好きな映画は?と聞かれれば「プリティ·ウーマン」!!と答える私は、同じジュリア・ロバーツとリチャード・ギアが出て続編とも言われるこの作品を映画館に観に行った。

結局内容は全然違って期待外れだった思い出だけど、U-NEXTのオススメ欄に出てきて急に観てみたくなった。


主人公は一見、男性がすぐ虜になってしまう魅力的な女性。
結婚式から何度逃げ出しても、すぐ次に付き合う男性が見つかる。
でも本当は人に合わせて自分の好きな卵料理ですら分からない、自分を見失っている人。



付き合う人によって好きな卵料理が変わる主人公に、思春期の自分が重なって見えた。
私は何かと趣味が音楽という人と付き合うことが多かった。
ジャンルはヘビーメタル·パンク·ヒップホップ·ハウス…と実に様々。笑


新しい世界が広がるのが楽しかったのもあるけれど、きっと自分も相手のことも見てなかったんだと思う。
相手が喜んでくれるから求めてくれるからそれに合わせて、そのうち自分が分からなくなった。そして逆に人に合わせられる自分が柔軟で大人だと思っていた。


でも気づけばどのジャンルの音楽もハマる程好きではない。
子どもの頃を思い返せば、映画のサントラやヒーリングミュージック、インストゥルメンタルのCDを多く持っていた。(ポップスも好きだけど)
そんな静かな音楽がきっと本当は好きなんだ。



結婚まで至った夫は音楽には全然興味がない人。
でも私はよく思われたくて(付き合っていた頃は婚活ブームで結婚まで持っていきたくて)、女友達と遊ぶ時は派手な服装なのに彼と会う時はネイビーやグレーの地味なコンサバファッションにしていた。

連れて行ってもらうお店も好みと合わなかったけれど、好きなお店は友達と行けばいいやと偽っていた。
結果、結婚当初はこんなはずじゃなかったとお互い喧嘩が多くて、今でも価値観の大きなズレは否めない。


夫は、あの映画のリチャード・ギアのように本当の私を見抜いて見てくれているだろうか。(そしたらきっと幻滅している部分も多いだろうけど。笑)


主人公のジュリア・ロバーツが色んな卵料理を食べ比べて本当はどれが好きか探すように、いつかねと言っていた夢を実現させたように、自分を恥ずかしく思わず人に意見を主張できたように。
逃げ出さず少しずつ自分の心をリハビリして、ハッキリ断れたあの頃のように潔く生きていきたい。


そうしたら、相手のことだって色眼鏡をかけずにただありのままに見えてくるはずだから。


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