【今日のニュース 10/19】分断・供給網(上)「世界の工場」分離の代償ゼロチャイナなら国内生産53兆円消失 ホンダ・アップルが備え

皆さんは、最近「経済安全保障」という言葉をよくニュースなどで耳にしないだろうか。近年、アメリカは中国との対立を背景に、中国に依存しない様々な製品のサプライチェーンを同盟国と独自に築こうとしている。

その代表的な例が半導体だ。先日アメリカのバイデン大統領が韓国のサムスン電子の半導体工場を尹錫悦大統領と視察していたり、国内の半導体サプライチェーンの確保のためにアメリカ議会で数兆円規模の公的支援金が可決されたりしていた。

日本も現在アメリカに追随して中国からのサプライチェーンの脱却を目指しているが、やはりいままでの経済的なつながりが強かったために、非常に困難な状況となっていると言わざるとえない。

早稲田大学の戸堂康之教授らがスーパーコンピューターの「富岳」で試算した結果、部品など中国から日本への輸入の8割(約1兆4000億円)が2カ月間途絶すると、家電や車、樹脂はもちろん、衣料品や食品などあらゆるものが作れなくなり、約53兆円分の生産額が消失する試算となった。これは日本の年間国内総生産(GDP)の1割に匹敵する額が吹き飛ぶことになる。すさまじいダメージである。

供給網の調査会社、オウルズコンサルティンググループ(東京・港)によると、家電や車など主要80品目で中国からの輸入をやめ、国産化や他地域からの調達に切り替えた場合、年13兆7000億円のコスト増になり、これは東証プライムに上場する製造業の純利益の合計の7割にあたる規模に匹敵する。

個別の製品にコスト増を転嫁すると、パソコンの平均価格は5割上がり18万円に、スマホも2割高い約9万円になる。ウクライナ危機などでインフレが進むが価格の上昇幅はその比ではない。

もしこのまま日本がアメリカに追従し、中国と正面から対抗することになれば、日本がとてつもない痛みを負うことは間違いない。日本の政府と企業の「覚悟」が問われることになるだろう。


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