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写真小説 SUNINESS

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狸小路エリが平野遼の作品に出合い、最初は難解な抽象画に抵抗しながらも次第に影響を受け論文に取り組むことになる過程を描きます。それは物語の悲劇が彼女自身の過ちから起こったものばかり… もっと読む
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2020年5月の記事一覧

SUNNINESS (1)   「だから平野遼を評論する」

はじめて狸小路エリと口をきいたのは、新学期がはじまって何日かたった頃だと思う。いや、夏休…

SUNNINESS(2) 「だから平野遼を評論する」

そう、それは夏の暑さが強烈に残る季節で、その馬鹿げた暑さに抗するには、イーゼルに向かうほ…

SUNNINESS(3) 「だから平野遼を評論する」

さて、鉛筆を削るだけの散漫な待機時間に終わりが近づくと、私は茨の道を進む覚悟でその時を迎…

SUNNINESS(4) 「だから平野遼を評論する」

医療をともなう彼の救援行為はともかくとして、私が予備校時代に宗教にかぶれたのは、この、人…

SUNNINESS(5) 「だから平野遼を評論する」

アトリエに戻ったが、私以外の人はいなかった。長い夏休みが終わり、午後のうちでも誰かと共に…

SUNNINESS(6) 「だから平野遼を評論する」

私は自分にいくぶんかアカデミックな趣味があることを自覚している。つまり癖のない絵を描く人…

SUNNINESS (7) 「だから平野遼を評論する」

振り向くと、その人はこちらを見て立っていた。それは上着とズボンがつながった黄色い作業着を身に着けた女性だった。遠くへ去っていく車の音を聞きながら私はその女性を見つめた。胸をぐっとそらしながら細おもての顔をこっちへ向けている。絵具で汚れた繋ぎには北窓をとおして入ってくる光がやわらかい影を落としている。行きずりの人と目が合っても、さして動揺はしないが、あまりに無防備な状況での美しい女性との出会いに私の目は一瞬大きく見開いた。そのわずかな震えは彼女にも伝わったようだ。すると女性は手