触れることさえできないのに

あなたは久々に会ったわたしの腕を見て失望するだろうか。あなたが存在するたびに不在が苦しくて、傷ついてしまうわたしの腕を見て。
肝臓は見えないから良い。血液検査の結果でも見られない限り、わたしの臓器が薬で痛めつけられていることはわからない。

あなたの夢を見た。全てが明らかになってしまう夢。わたしはあなたを失いたくないと思ってしまった。手に入れてもないのに。

わたしたちだけの世界があるような気がした。
あなたは笑って、また会おうねと言って去っていった。わたしは、なにもできない。

わたしを求めるようなメッセージ。実際のところ求められているのはわたしではないと知っている。それでも、思考を鈍らせれば、なんだか楽になる気がした。あなたがいないこの季節を迎えてしまったことにも、耐えられるような気がした。
あの衝撃からもう一年が経とうとしている。あなたはわたしのことを忘れないで、存在してくれている。

あなたがかけるやさしい言葉は、本当は私のためのものではないことを知っている。それでも、もしかしたら、と希望を持たせてくれるあなたが素敵だと思ってしまうよ。
それでも、あなたはここにいない。来ることもない。その事実がどうしようもなく悲しくて、あなたが言った「会いたい」なんて私のご機嫌取りだったのかな。

去年のことを思い出す。去年のわたしはまだあなたが遠いところへ行ってしまうなんて知らずに、ただあなたからのメッセージを待っていた。そして、遠くに行くことがわかってからはずっと一緒にいられたのに。いまそれが起こりえないことであるのはどうしようもない事実で、それがひどく悲しいと思う。あのときあなたの手を離さずにいられたら、と思ってしまう。

振り返らず手を振ったあなたの仕草が、あなたはわたしに執着していないことを表すようだった。わたしはあなたのことが忘れられないけれど、あなたはきっとそうではないんだろうな。

ポジティブな視点で見れば、あなたがわたしにメッセージを送る頻度は上がっている。あなたにとっては造作もないことかもしれないけれど、それでもいい。あなたはわたしの個人的なことを聞いてくれるし、あなたのことも話してくれる。将来のことも、話してくれる。
日本に帰ってきたら、一緒に住もう と言うあなた
そのためには生きて、と言うあなた
そのすべてが愛しくて、ありがたい。

あなたとの生活がこの先にあるのだとしたら、わたしは生きられるような気がした。少なくともあなたが、それをしてもいいと思えるほどにはわたしに好意的な感情を抱いてくれているという、それだけで、わたしは


本当はあなたがここにいるはずだった。でもそうはならなかった。わたしはあなたに会うためではなく、あの街に行かねばならない。あなたの不在を感じてしまうだろうという予感と、すでにその前兆。思い出してしまうよ、あなたがそこで何を話して、わたしとどんなことをして、なんて、全部。

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