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美術館記録 #あたたかい灰色の箱 市原湖畔美術館(千葉・市原)

1月の連休の日曜日、以前から行きたいと思っていた市原湖畔美術館に行ってきました。車で1時間。

前田エマちゃんが 好きな美術館です と紹介していて興味を持っていたところでした。

当日の企画展は 『サイトスペシフィック・アート~民俗学者・宮本常一に学ぶ~』だった。

その日は雨で空は曇っていたのですが、目の前に湖と低い山が広がっていて。箱はちょうどよい大きさで人も混雑していなくて。

また当初企画展自体にはそれ程興味がなかったのですが宮本常一(みやもと つねいち)さんに魅かれずにはいられない展示、とてもよかった。千葉県で2つめの美術館の記録です。

企画展の見所 (1) 宮本のまなざしと記録

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展示は、宮本の父からの手紙から始まります。父から渡された「旅の心得」は恐らく宮本の、地域への見方に大きな影響を及ぼしていて。

あるいはむしろその10の心得こそ宮本の民俗学者としてのそれを端的に表現したものでもあったようでもある。

汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ、田や畑に何が植えられているか、育ちがよいかわるいか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうこともよく見ることだ...(略)...そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないかよくわかる。
村でも町でも新しくたずねていったところはかならず高いところへ上ってみよ、そして方向を知り、目立つものを見よ...(略)...高いところでよく見ておいたら道にまようようなことはほとんどない。
時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。

など。続きを読むと 親からの子どもへの言葉としてはこの時代には革新的なものであったんじゃないかなと思う。

そして 常一はこの言葉と共に家を出ると 日本全国を歩き回り写真を撮りメモを残した。

彼が愛用した オリンパスペン。町や村の日常を残したモノクロ写真。段落がとてもきれいに整えられている分厚いノート。

記録することを好きだったのだと思う、美しかった。


企画展の見所 (2) 地域での実践

同時に、宮本は、地域の研究を学問で終わらせず、農業指導者や社会教育家として、地域での産業・経済の発展を実践したひとでもありました。

確かいくつかの農村や島で行っていたのだけれど、わたしの記憶に残ったのは佐渡でした。自身が島出身だから、やはり島が好きなんだろうなと思う。

例えば、佐渡国小木民俗博物館。廃校となった小学校を博物館にして、民俗資料を展示。

これも正確な数字忘れてしまったのだけれど、確か訪問者数が1日あたり200人の換算になるくらいの年間訪問者数が書かれていたと思う。それだけ交流人口を増やすことすごい。

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出典:宿根木公式ホームページ


企画展の見所 (3) 箱から土地へ移るアート

その後に続くのが、現代の芸術家たち7名の サイトスピシフィックアートでした。Wikipediaによると、

サイトスペシフィック・アート(英: Site-specific Art)とは、特定の場所に存在するために制作された美術作品および経過のことをさす。

今回芸術家たちが焦点を当てた "サイト" は地元千葉の小さな駅であったり、逆に日本全国であったり。

ニューヨークはマンハッタンの都市もあり、タイの小さな農村もあり。

その中で最も印象に残ったのが、曽我英子さんが北海道・二風谷でアイヌの生活と文化に入る中でつくった作品『秋鮭』でした。制作拠点であるイギリスで完成された作品。

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出典:HUFFPOST

鮭の皮で作る靴。アイヌの人々に自ら習い、靴を作り、その動画に自分の言葉を添えて。

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"川の水を溜めたり、放流したりする音が暗い夜空に響いていた。"

"水路を変えることを、鮭、熊、鹿、虫、鳥や草木に、誰か相談したのだろうか。"

年末に大きく話題になったオーストラリアの森林火災。1月に15℃前後の日々が続く暖冬。

これらの現象の中で心に刺さる言葉。わたしたちはどうやって自然を大切にできるだろうか。

下はHUFFPOSTでの曽我さんの文章。


美術館の見所 (1) 屋上でポール群を潜る

展示を見終えて屋上へ出ると目の前に灰色のポールが連立している。"Needles and Pins" という作品らしい。

横を抜けると周囲の景色がよく見える。当日は、途中 雨がポツポツだったのですが、それでもきれい!

その後、帰ってから、大好きなダンサー 菅原小春さんがDEW MAGAZINEの撮影をここでしていたことを知った。かっこいい。

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美術館の見所 (2) 高さ28m揚水機に登る

これがとてもたのしかった。写真の白い建物が美術館、その右手前に見えるのが揚水機。1900年前後に、市原市の水車大工・藤原さんが開発した揚水機。

近くの養老川などから農業用に水を引っ張ってきていたらしい。

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そのときは他に登っている人はいなくて、頂上から湖を見下ろして山を見渡して。景色をひとり占めしているような気持ちでゆっくり、心が晴れやかになりました。

段がところどころ錆びていたのだけれどそれも趣き。

ちなみに、美術館の見所として「PIZZERIA BOSSO」というレストランもあったのですがこのときお昼14時過ぎにも関わらず外で待っているひとも居て諦めました。またいつか。

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アクセス・開館情報など

最後に、美術館の概要。料金は展示により異なるみたいなのだけれど宮本常一さんの展示のときは 大人1名600円 でした。

開館時間
平日:10:00 – 17:00
土・祝前日:9:30 – 19:00
日・祝:9:30 – 18:00
休館日
月曜日、年末年始

Twitterもきちんと更新されていておもしろいです(下の画像にリンク貼ってあります)

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電車でアクセスしにくいところにありますが、小さくて、混んでいなくて。密度が高すぎない展示に心安らぐ美術館。機会がありましたらぜひ。

近隣の寄り道ところ

さて、本当の最後の最後に近隣の寄り道ところをメモさせてください。

1:房の駅

美術館から車で20分くらいのところにあった道の駅。大きめ!

落花生・びわ・海藻やその加工品など。千葉の農産物・海産物の豊かさが見えるたくさんの商品が並んでいました。

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車酔いしてしまっておいしそうだったジェラート食べられなかったのだけれど見ているだけでたのしい場所でした。

道路挟んで斜め向かいには お菓子とお酒のお店もあった。

2:蕎麦 更科

こちらは美術館から車で10分くらい。席は広くて名物の鴨汁そばもとてもおいしかったのですが、Google Map に書かれていた口コミが半分的中。おいしかった気持ちとすこし残念な気持ちとでお店を出ました。

お蕎麦がおいしかったのは確か!

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3:養老渓谷と温泉

この日は行かなかったのですがちょうど美術館から車で20分くらいのことに気付いて。ぜひ記載しておきたい、養老渓谷。

昨年5月に行ったのですが、粟叉の滝を中心に身軽にハイキングできる山道や川沿いのルートがいくつもあって、

橋やトンネルなど見所もあって。

近くにはよい温泉もいくつかあって。行った ごりやくの湯 というところは木の床がひんやり心地良くて、サウナは小さく落ち着けて露天風呂から見える空はとても澄んできれいだった。

またいつか行きたいな。


住みはじめて1年。すこしずつ、どんどん、千葉が好きになってきています。

次はどこに行こうー。


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