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創世の竪琴に想いを乗せ|創世の竪琴・その63

不思議な光景だった。

目の前に広がっている空間は全くの無、真っ白な無の世界。

そこから先は何もない。
見ていると感覚がおかしくなってしまうように思えた。

(真っ白・・普通、無の世界って暗闇なのよね。
混沌とした暗黒の空間にまず光がっていうのが普通なんだけど。
これだと・・・まるで白紙の状態に戻すって言うか・・ディスクの初期化って言うところ?)

「渚!」

1人ぼけーっと考え事をしていた渚はイルの声で、はっとした。

(いけない、またやっちゃった!)

「ごめん、ごめん、イル。
じゃ、やってみましょう?」

イルと渚が各々の竪琴を取り出す。
渚は女神ディーゼの銀色の竪琴。
イルは男神ラーゼスの黄金の竪琴。

その2人の後ろでは、リーとファラシーナが砂漠に住むモンスターや肉食獣の攻撃に備え警戒している。

「ふぅー・・・・」

大きく息を吸うと渚は竪琴を奏で始める。
イルも慣れない竪琴を指で爪弾き始めた。

(心を込めて・・そこにあるべき世界を想い描いて・・・)
初めは戸惑ったイルも少しずつ慣れてきた。

その竪琴は、手で奏でるものではない、その調べは心で奏でるもの。

自然に目を閉じた2人はその調べの中に入っていった。

2人の心が竪琴の音になり、その調べが1つになっていく・・

と、イルの竪琴から赤、青、緑の3色の龍玉が光を放ちながら出てきた。

それは2人の竪琴の間で少しずつ溶け合い、様々な色に変わっていった。

ファラシーナとリーは目の前に展開されている世界創造に我を忘れて目を見張っていた。

2人の琴の音に乗るようにして、色が舞い、まっ白な世界を染めていく。

それはまるで夢でも見ているよう。

大地が、空が色がつくと同時に立体的になる。
草が、木が生え、花が咲いていく。

心の中にしみ込むような優しい調べが舞う中で、世界が創造されていく。


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