光 三浦しをん

こんばんは、まっすーです。
今日は読み終えた時、考えてしまう本の1つを紹介します。

三浦しをんさんの『光』です。


【あらすじ】
ここは真浜島。
主人公の信之は、軸(たすく)が嫌いだった。

「ねぇねぇゆき兄ちゃんってば」
家で父親から暴力を振るわれている軸を
遠い親戚である信之が1度やさしくしたことで
懐くようになってしまったのだ。
軸はこちらの機嫌を伺うような怯えと媚びがあった。
信之はそんな軸を嫌悪していた。
そんなある日、
津波が島をのみ込んだ。
そのどさくさの中で信之は人を殺めてしまう。
津波被害で混沌とする中で
殺めた人物は見つからず、
行方不明者として片付けられた。

しかし、軸はその現場をじっと見ていた。

そして数十年後ー。


【感想】
この本は、登場人物に降りかかる”暴力”について焦点があてられている物語だと感じる。
それに関連して、親から受ける暴力、暗い過去、一方通行な想い、枯渇、切望、そんなキーワードが思い浮かんでしまう物語だ。
なぜ三浦さんはこんなにも暗い話を「光」という題名にしたのだろう。



そのヒントは津波にのまれた翌日の描写に隠されている気がする。
津波の被害を次のような文章で表していたのだ。


「光がすべての暴力を露わにした。」


光はみなを照らしてくれる温かいものという
イメージをもつけれど、
もし、その照らす対象が醜いものだったとしたら、、
光によって見たくもないもの
知りたくないものが見えてしまう。
光は闇と正反対のようで実は等しいのだ。


光により真実が露わになった時、
主人公の家族には絶望しか残っていないのではないかと思える作品だった。