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北海道のむかし話3 十勝のコロポックル


むかし、この地方にコロポックル(蕗の下の人)という小人族が住んでおった。

このコロポックルは大変おとなしいお人好しであった。
獣や魚を捕っても自分達だけで食べずに、部落の家々にそっと置いていってくれた。
だが、誰も見た者はいなかった。

ある日、いつものように、そっと肉や魚を戸口から入れてくれたのを、悪いアイヌの男が、手を引っ張って家の中へ引き込むと、コロポックルは、唇や手の甲に美しい入墨がしてあった。
無礼な仕打ちに怒ったコロポックルは、

「いつまでもこの地に住もうと思っていたが、他の地に移ることにした。
しかし、この地は段々と枯かれるように衰えてしまうから、トカブチと言え」

といって、どこかえ消えるようにいなくなった。
それからこの土地をトカブチと呼ぶようになった。
                                                                             
                                                                                更科源蔵 アイヌ伝説より



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