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トイレで社員に新ツールを周知してみた(前編)

 法規書籍印刷株式会社 戦略デザイン企画室の渡邉(え)です。今回は渡辺室長にかわり別のメンバーが記事の執筆を担当いたします。

 今回は記事を前編・後編に分け、前半部分では弊社で開発したPDF検版ツール「Flyp(フライプ)」の社内周知のために行ったちょっとした実験のお話、後半部分では新たに導入することとなったドキュメント差分検出ソフトウェア「Collate Pro(コレートプロ)」に関するお話をさせていただきます。ぜひ2編続けてお付き合いいただけるとうれしく思います。

ツール普及の場にトイレを活用

 突然ですが、2019年に開催された「ソフトウェア工学国際会議(International Conference on Software Engineering; ICSE 2019)」で「優秀論文賞(Distinguished Paper Award)」を受賞したGoogle社のある論文をご紹介します。

 非常に興味をそそられるタイトルです。論文の趣旨は以下のようなものとなっています。

  • 物理的なニュースレターは、開発者にツールのことを知らせることができるシンプルな手法である

  • 「トイレに貼る」という手法を評価するために、開発者数千人、6年分のデータの統計的分析と、著者、編集者、読者などを含めた382人の開発者へのインタビュー調査を行った

  • 結果として「トイレに知らせたい情報を掲示する」という手法に、ソフトウェア開発ツールの利用を促進する効果が一般的にあることが分かった

  • 効果の大きさはツールの適用範囲の広さ、ツールの普及度、ツール名の記憶のしやすさなどの要因によって異なった

 この研究により「社内に便利ツールを普及させたいなら、そのツールの使用法をまとめたポスターをトイレに貼っておくと良い」ということが言えるというのです。「トイレのポスター」というその意外な着眼点がこの論文をとても目を引くものにしていますが、はたして論文の主張が本当なのか試してみたい気持ちが湧いてきます。

「Flyp」のポスターを社内のトイレに

 日本には「トイレ学習」のような、生活に記憶学習を取り入れた勉強法があるかと思います。子供の頃、トイレの目につくところに九九の一覧表や都道府県を覚えるための地図を貼って毎日眺める...なんていうことをした記憶をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。インプットのための古典的勉強法のひとつとして「トイレにポスターを貼る」という文化に日本人はなじみがあるわけです。

 そこで、弊社でもこの効果を実証してみるため、弊社で開発しましたデジタル検版ソフト「Flyp(フライプ)」のリーフレットを2022年よりトイレに掲示させていただきました。


Flypの情報をトイレのポスターで知った社員は思っていたよりも多かった

 社内での新しいツールの周知に「トイレへの掲示」が有用だったのかどうか知るために、制作・校正部門で簡単なアンケート調査を実施しました。

 まず「どこでFlypのことを知りましたか」という質問への回答がこちらです(複数回答可。38名が回答)。



 回答者のうち複数回答した人も合わせれば「社内のトイレの掲示」で知ったという人が60.5%、「社内のアナウンス」、「人づてに聞いて」知ったという人がそれぞれ28.9%、「Flypのウェブページ」、「その他」で知ったという人がともに2.6%という結果でした。


社員の7割以上が日頃からポスターに目を通していた

 次に「トイレに掲示してあるポスターに目を通しますか」という質問への回答を見てみます(41名が回答)。



 「よく目を通す」、「ときどき目を通す」を合わせて72.5%、「あまり目を通さない」、「目を通したことがない」を合わせて20%、「どちらともいえない」が5%、「その他」が2.5%という結果でした。

前編の最後に

 ご紹介した2つのアンケート項目の結果から分かったのは、7割を超える社員がトイレのポスターに目を通していること。そしてFlypのことを知っている社員の6割はトイレのポスターを見て知っていたということです。「トイレポスター」の試みは社内でのツールの周知に一定の効果を発揮したと思っています。

 これまで新しいツールはトップダウンの指示だけではなかなか社内に浸透していかないことが悩みとしてありました。ここで、トイレにポスターを貼ってみたことによりFlypを現場で使う機会が増えた、そういう肌感覚があります。これからも「トイレ」という場をうまく活用して社内に刺激を生む機会にしていこうと考えています。

後編の記事では

 実はここからがこの記事の本題となるのですが、弊社では今期4月より新たな検版ツールとして株式会社Too様が販売されているドキュメント差分検出ソフトウェア「Collate Pro(コレートプロ)」を導入することとなり、すでに実務での運用を始めております。

https://www.too.com/product/collate-pro/

 FlypとCollate Proの大きな違いは何かというと、Flypの良さは、PDFファイルでの画像的な比較に特化しており、比較的少ない分量の比較を手軽に、短時間で、ワークフローの大きな変更もなく行える点にあります。お客さまにもこの手軽さとストレスフリーな使い心地を買っていただきご利用いただいております。
 それに対し、Collate Proの良さは、文字の比較に特化したソフトウェアなのでファイルフォーマットを問わず、プレーンテキストとPDF、あるいはPDFとdocxといった直接比較が可能である点です。また、数100ページ単位の非常に大きなデータの比較が一気にできますし、機能のカスタマイズも可能です。
 弊社においても校正業務の需要にマッチしたやり方で検版ができ、より効率的な校正業務と、品質の向上につなげられると判断し、新たにCollate Proの導入を決める運びとなりました。

 後編の記事では、「法律関連書籍物」と長く付き合ってまいりました弊社の制作・校正業務における実情や、新ツール導入へ至ったいきさつについて、一歩踏み込んだお話をさせていただこうと思います。
 ぜひ前編と合わせて後編もご一読ください。

 (後編へつづく)