【裁判例】RKコンサルティング事件②給与体系

0.はじめに

RKコンサルティング事件は、請求棄却となったことは以前の記事で触れたが、給与体系が非常に複雑なので、判決文から読み取れる給与体系について図式化する。

1.基本的な仕組み

ア 賃金の種類(第5条)
①月例給与
基本保障給
②業績手当
成績手当 計算方法の詳細については別途細則に定める。
③所定外勤務手当
時間外勤務手当,深夜勤務手当,休日勤務手当

基本的な考え方

(図1-1)

以上が基本の給料計算である。
※図では「時間外手当」とあるが、深夜、休日などの場合も含まれる。

イ 基本保障給(第6条)
①基本保障給は,地域別基本保障給を支給する。
②地域別基本保障給は,地域ごとの最低賃金を考慮した額とし,金額については別途細則に定める。なお,月例給与及び業績給与の合算額が最低賃金に基づき算出した額を下回る場合は,最低賃金に基づき算出した額を最低保障給として支給する。

下回る場合修正

(図1-2)

従業員である以上労働時間は管理しなければならないが、成績手当+地域別基本保障給の合計額を実際の労働時間(時間外は除く)で除した場合に、最低賃金以下となると、最低賃金法違反となる。

そのため、最低賃金ラインを下回る場合は、最低保障給が設定されている。

2.成績手当

ウ 成績手当(第7条)
① 成績手当は,従業員が募集した保険契約について,会社が受け取った代理店手数料を別途細則に定める算式で算出した金額のうち,地域別基本保障給相当額を差し引いた金額とする。

成績手当

(図2-1)

成績手当はややこしい。
まず、手数料収入から一定の計算式(おそらく手数料収入×〇%といった内容)で基礎額が導かれる。
そこから、地域別基本保障給相当額が控除され、残りがあれば成績手当になるという者である。

② 従業員等が扱った契約で失効・解約等によりマイナスの代理店手数料が発生した場合は,発生月の代理店手数料にマイナスとして計上する。

戻入

(図2-2)

ちなみに、解約などにより戻入が発生した場合は、発生した月の手数料収入から控除されることとなる。その分、基礎額の計算の前提となる手数料収入が減ることになる。

③ 前項の金額がマイナスとなった場合には0とし,マイナス分は翌月獲得した成績手当部分と相殺する。マイナスの繰越額を翌月分の成績手当部分で相殺できない場合には,翌々月以降控除しきれるまで成績手当部分より控除し続けるものとする。なお,控除はマイナスの発生した古いものから控除するものとする。

戻入マイナス

(図2-3)

さらにややこしくなる。戻入が多く、手数料収入がマイナスになってしまった場合は、そのマイナス分は基礎額から控除する。
わかりづらいのは、「基礎額の控除となる手数料」から控除するのではなく、「基礎額」から控除される。つまり、戻入が多くマイナスの場合の影響は非常に大きい。

3.成績手当+α

エ 月例給与及び業績給与の計算方法(第11条)
 第6条の月例給与及び第7条の業績給与の合計額が最低賃金に基づき算出した額を下回る場合に第6条第2項に基づき会社が支給した最低保障給相当額及び第7条各項により算出された成績手当が地域別基本保障給相当額を下回った部分の過去1年間(入社後1年に満たない場合は,当該在籍期間中とする)の各累計額を合算した金額が15万円を超えた場合には,翌月以降,第7条に定める成績手当の計算において当該合算額を差し引いてもなお余剰がある場合にその部分を成績手当として,月例給与とともに支払う。

これがさらにややこしい。さきほど成績手当で説明したが、基礎額を下回る場合というのがあった。

成績手当

(図2-1)※再掲

15万円超過

(図3)

この下回った部分は累積していくことになるが、この累積額と地域別基本保障給との合計額が、15万円を超えた場合(これにより地域別基本保障給のは15万円以下であることがわかる。)に、その合算額(超えた額ではない)を成績手当から控除するというものである。

争点と裁判所の判断についてはこちらの記事参照

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