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私の居ない場所、私じゃない誰か、きみの腕のなか

あこがれの場所はいつだって、
現状(ここ)じゃないどこか。
私じゃない誰かの中。Я(欲望)の居ない場所。

欲望と私は常に対立してきた。
私は今も昔も「読書と絵が好きな大人しい女の子」のままだ。
『朝の輝く太陽を浴びながら、洗濯物を干して、
 午後の優しい日差しに守られながら、紅茶とクッキーを楽しみ、
 夕暮れのとろ火でシチューをコトコト煮ながら、最愛の人の帰りを待つ。』
それで十分なのに。
何が不満だって言うんだい、欲望よ。

別に、
一生をかけられるほど好きなことがあるわけじゃない。
英語だって勉強したいわけなじゃい。
祖国から離れたいわけじゃない。
富や名声が欲しいわけじゃない。
何も、好き好んで、
時代に牙を剥きたいわけじゃない。
クレイジーに生きてやりたいわけじゃない。
人を嫌って生きていきたいわけなじゃい。
自分を疑い続けたいわけじゃない。

ただ、大好きな人が――もっとも重要な要素が――ここには無いのだ。

ああ、そうか。
憧れの場所はいつだって、大好きなあのひとの腕のなか。
私とお前が一致するのは、そこなのだろう。

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