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新卒で入社して半年で

仕事を辞めた。
いや、クビになった、というのが正解かもしれない。

私は会社から信用も期待もされなくなったのだと思う。
突然辞めてほしいと言われたのだ。
私は寝耳に水で、とてもショックだった。

そして、その後言われた言葉にただただ立ち尽くすしかなかったのだ。


「君は仕事ができないし効率も悪い。空気も読めてないよね。
仕事が向いてないし、この業界も向いてないよ」


この業界で働くことを何よりも目標として生きてきて、そのための大学も卒業して、いざ憧れの業界で働き始めて半年が経っていた。

このまま数年間この会社で働いて、スキルが身についたら次のステップとしてもっと大きな会社で自分の力を試して、いずれ独立したい、そうするんだろう、とばかり思っていた私は、そんな未来が音を立てて崩れていくのを感じた。

一生この仕事で生きていくんだと思っていただけに、私にはこの仕事しかないと思っていただけに。

私はとても傷ついた。


私って仕事が遅いんだ。

私って効率が悪いんだ。

私って、空気読めてないんだ。


私って、もしかしたら社会不適合なのかもしれないと、そのとき初めて自覚した。


いや、もしかしたら薄々感じていたのかもしれない。効率が悪いこと、空気が読めないことを。
それでも今までの学生生活でもアルバイトでも、それをなんとか補って生きてこれた。笑ってごまかせばそれでよかったし、効率が悪いことも自分はそういうもんなんだと思って生きてきた。
だから、そんなに気にすることではなかった。気にしなくても朝はきた。

しかし、いざ社会人として値踏みされたとき、私はそこに適合していないという事実が、今まで無自覚に生きてきただけに大きな黒波となって私に押し寄せてきた。
社会不適合だということを認識したことで、将来が急に不安になった。とても怖かった。

この業界に向いてないと言われたことも、とても悔しかった。
悔しくて悔しくて、でも自分はこの仕事を続ける能力がないことを知ってしまって、どうしたらいいのか分からなかった。頭の中はずっと混乱したままだった。


その日は私の誕生日だった。
仕事終わりにクビの話をされたあと、帰宅途中に開いたスマホで読んだ友達や家族からの誕生日祝いメッセージがなんともチグハグで、自尊心ズタボロな状態でもメッセージに「ありがとう〜〜!!」と喜びの返信を打っている自分が滑稽だった。
(もちろんメッセージは嬉しかったが、素直に喜べる心理状態じゃなかった)


その夜はショックで何も食べられなかった。
家族からの話も適当に返し、思考が停止した中でお風呂に入り、いつもよりも早く布団に潜り込んだ。

でも全然寝られなかった。
涙が出てきて止まらなかったし、泣きながらスマホで「社会不適合 仕事」「社会不適合 生き方」と何度も検索した。


会社は個人経営の小さなところだった。忙しいから退職の手続きは仕事の目処が立ってからと言われ、私は自宅待機を余儀なくされた。
考える時間は嫌というほどあった。

現実を受け入れる必要があった。
これから自分がどうしていくのか、嫌でも考えるしかなかった。
もらえると思っていたお給料の分をどうするのかも、考えなければいけなかった。

私はそれから数日間、眠れない日々を過ごすのだった。


つづく

ろ〜たすは、徒然なるままにエッセイを書いております。サポートいただけると泣いて喜びます。