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豊穣な社会研究センターの活動を推進するにあたって

豊穣な社会研究センターが4月に開設されました。また、このセンターの活動を併走しながら支える組織として、豊穣な社会のための防災研究拠点(YNU防災研)が2021年度から活動を活性化させていました。

豊穣センターとYNU防災研の目指すべきところは少しずつ明確になってきており、ともにチャレンジする仲間も増えてきています。センターと防災研の役割分担がまだ明確になっていないと感じられる方もおられるかもしれませんが、現時点ではそれぞれがお互いを支えながら存在することに意義があると私は思っており、このような併走体制を敷いています。ごく簡単に言うと、豊穣センターがまだ自立できる状態にない、というのが私の直観です。

さて、豊穣センターにしろ、YNU防災研にしろ、メンバーの多くはYNUの専任教員が兼務しています。皆、元から忙しいわけです。今さら、余計な仕事を抱え込みたくない、と思うのが自然でしょう。

現代の大学にはよくある話でして、自分の専門分野のことに「真の専門家として」しっかり取り組んでいればよかった大学はすっかり過去の話で、とにかく時代の流れに沿った新しい組織を作れ、社会貢献を見える形にせよ、大型予算を取れるチームを編成せよ、などと威勢の良い掛け声がかけられ、そのように組織が改変されていきます。そういう改変を重ねないと、文科省から予算ももらえない、というジレンマに大学も直面しているわけです。

私自身もそのような大学の改変(世の中では「改革」という)の流れに無縁であるわけにはいかず、例えば都市イノベーション研究院の創設(2011年)、都市科学部の創設(2017年)などもそうです。

改変が目的となりがちであり、当然にそのための事務仕事も増え、結局、やりたいことをやる時間もお金も無くなり、トータルのパフォーマンスは落ちていく。そんなことになりがちなわけです。もしくは、「選択と集中」なる掛け声の中、ごくごく一部の人だけが得をして、全体は沈没していく。

そんな「流れ」の中、豊穣センターやYNU防災研も発足したわけです。どちらも私がリーダーを務めています。

組織構成や、組織の目標設定も私に任されていますので、これらの組織に関わる方々が本当にやりたいと思うことに取り組み、ご自身の元々の活動にもメリットがあり、その上で様々な発展が生まれるような組織にしたい、しなければならない、という強い思いが私にはあります。そうでないなら、これらの組織は止めてしまえばよい、と本気で思っています。

さて、どのように運営するか、ですが、

まず、私自身のことから述べます。

豊穣センターやYNU防災研の専属の研究者であればよいのですが、併任であり、私自身もこれらの組織ができる前の仕事は丸ごと抱えたままです。学生たちの研究指導、講義は当然です。土木の留学生事務のディレクターも務めています。誰にでも共通の原理ですが、一日は24時間しかない。

そこでどうするか、ですが、以前からの私の行動の原則でもあるのですが、「ミッション・ステートメント」に従って行動する、ということに尽きます。ミッション・ステートメントに従って日々を積み重ねることで、豊穣センターやYNU防災研の舵取りも、元からの大学教員の仕事も、学会等の社会貢献なども達成できるように日々の習慣を組むしかありません。

豊穣センターやYNU防災研のために、新しい活動をわざわざ起こす必要ももちろん少しはあるでしょうが、そうすると負担が増えるばかりです。誰もそんな方針には付き合ってくれないでしょう。それよりは、これまでの日常を自然に積み重ね、それらが自然に融合するようにした方が楽ですし、結局日常も豊かになるかと思います。

ですから、私自身について言えば、私の日常そのものが豊穣センターやYNU防災研の発展につながるように、私の日常を設計するようにしています。

土木学会のコンクリート委員会でも膨大な量の仕事をしていると思いますが、それらも「インフラ長寿命化」「国土強靭化」にもちろんつながっています。豊穣センターの「元気なインフラ研究所」やYNU防災研の「インフラ長寿命化研究ユニット」の目指すところそのものです。

また、「豊穣な社会」と銘打ったことにより、それこそ私のありとあらゆる活動が、豊穣な社会の実現のためにある、と解釈することができます。ほぼすべての研究活動、教育活動、プライベートの時間の大半、がそれにつながっている、と解釈することができ、個々の活動の意味も明確になり、連鎖反応で全体のクオリティが高まっていくようにも感じます。

さて、次に豊穣センターやYNU防災研のメンバーについてですが、

多くの素敵な方々にメンバーになっていただいており、これらの方々と十分に連携できていなかった過去をもったいなく思いますし、まずはそれらの方々の人物を良く知る、活動を知る、ことから始めています。

YNU防災研にある6つの研究ユニットがそれぞれの活動を展開していますが、各ユニットで開催される勉強会はとても面白く、学びの多い時間です。お互いから学び合い、相談できる関係性が築かれていれば、自然に連携・協働は生まれるものと思っています。自然発生的に連携・協働が生まれる場合や、連携・協働を推進する入れ物を先に作る場合など、現時点では入り乱れていますが、それぞれのメンバーの貴重な日常を大切にしつつ、少しずつつながっていく、そういう組織運営を心掛けたいと思っています。

特に、豊穣センターの「つながり方研究所」のテーマは、およそ土木工学のコンクリートを専門とする私が取り組むような研究ではないかもしれませんが、ある意味では、私の興味そのもの、とも言えます。山口システム、東北システム、鞆の浦、などの取組みで私自身が形成されていったわけですが、その根幹には「つながり」があります。私のプライベートの時間での勉強も多くは「豊穣な社会」や「つながり方」のために割かれており、なるべくしてなった、という気もしてきます。現在、様々な分野から、この研究所の目指すところに共鳴して集まってくださっており、どのような研究が展開されるか、私自身もとても楽しみにしています。卒論生が一名、つながり方研究をテーマに研究に取り組むことになり、来週は一緒に鞆の浦へ、そしてそのまま彼のフィールドの一つである三重県の鳥羽に私が連れて行かれます。さっそくつながっていきます。

GWもあと二日。GW中にやりたいと思っていた仕事も少しずつ進めていますが、もう少し進めます。このブログを書くことも、プライベートの活動でもありますが、当然に、仕事でもあります。

細田暁の日々の思い (goo.ne.jp)
より、引用(2023/5/6)。


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