初めまして、ベトナム語専攻4回生の藤川遥太です。
今日はベトナムのインディーロックについて紹介したいと思います。

そもそもインディーロックって何?という方もいらっしゃると思いますが、実はこれを説明するのは簡単なようで難しいんですよね。まぁ音楽なんてつべこべ言わずに聴いたほうが早いのですが、少しだけ説明します。
簡単に言うと、インディーロックはロックの中でも大手レコード会社などに所属せず、作曲や演奏から宣伝、マネジメントまでを自分たちで行うバンドの音楽を指します。ベトナムのポップスといえば、Đàn Nhị(二胡に似たベトナムの伝統楽器)の音色が麗しいバラードや、Suboiをはじめとしたラップ・ヒップホップ系の活躍が目立ちますが、ロックをはじめとするバンドサウンド、それもインディーズで活動するアツいバンドも出てきています。また、ネットの発達で大手レーベルに頼らずともたくさんの人に曲を聴いてもらえるようになったおかげか、若者世代の間でヒットを飛ばすバンドも出てきています。
僕がハノイに留学していたのはおよそ1年前のことなので少し古い曲が多くなってしまいますが、そんなベトナムで今アツいバンドを紹介していきたいと思います!

第1回目に紹介するのは、Ngọt(ゴット)というバンドです!Ngọtとはベトナム語で「甘い」という意味で、その名の通り甘いメロディのEm dạo nàyという曲でよく知られています。


男の子が別れた彼女に「最近元気してるかな…?」と思いを馳せる曲です。この曲のサビの最後に”Anh dù không muốn tình cờ gặp lại nhau lần nữa... Nhưng em có đi trà đá Hồ Gươm?”という歌詞が出てきます。日本語に訳すと、「またバッタリ会ったりしたい訳ではないけど… 最近ホーグオムでお茶してる?」という歌詞です。会いたくないと言いつつも元カノをちょっと想う感じ、甘酸っぱくていいですよね。ホーグオム(Hồ Gươm)という場所のチョイスも絶妙です。Hồ Gươmとはハノイ旧市街の南端にある小さな湖のことです。旧市街は外国人からすればハノイ旅行で誰もが行く場所というイメージですが、ハノイの人からするとちょっと余所行きの歓楽街です。つまり「ホーグオムでお茶してる?」という質問は、単にゆっくりお茶を飲むというだけではなく「最近楽しくやってる?」的なニュアンスがあるんですよね。お洒落かつベトナム(特に都会)の人にとって身近に感じられる歌詞はこのバンドの大きな魅力です。


次は、Không Làm Gìという曲です。
Không làm gìとは「何もしない」という意味です。この曲の一番の歌詞は「子供の頃はお母さんと旧市街に遊びに行って、機嫌が悪いときはベンチに座って何もしなかったなぁ…」という無邪気な歌詞なのですが、二番は「大学の授業がつまらなくて椅子に座って何もしなかったな…」三番は「仕事したくないけど行かないといけないし、会社のデスクで座って何もしてないな…」と、どんどんニヒルな感じになっていきます。そしてギターを掻き鳴らしつつ「Hey, hey, hey, Không làm gì」と歌ったところで急に曲が終わります。
一曲目のEm dạo nàyはかなりポップでしたが、このKhông làm gìはギターがバリバリ鳴っていてかなりロックです。また、ライブパフォーマンスも迫力満点で見ごたえ十分です。


3曲目はXanhという曲です。この曲はボサノバ風のAメロ、Bメロからサビで一気に空間が広がる気持ちのいい曲です。ポップにロックにボサノバ風までなんでもできる、Ngọtの作曲担当Thắng(タン)さんの器用さがわかっていただけると思います。

最後は、最新シングルのTìm Người Nhàという曲です。リバーブ(エコーっぽいやつ)がガッツリかかってて音作りも今風ですね。

僕がベトナムに興味を持ちだした2015年頃の日本語の旅行本や、海外音楽マニアのブログで紹介されていたベトナムのバンドはメタル一辺倒でした。ですが、ここ数年はこのNgọtのヒットをはじめとしてインディーロックの波が来ているように感じます。
最後にSpotifyのプレイリストを貼っておくので、興味がある人は聴いてみてください!


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