見出し画像

応援団はいつでもだれでも入部できます。

保育関連の記事の場合には、個人の特定につながらないように配慮して書かせていただいております。また、いろいろな事情を含めて、基本的に現在形に統一して書くようにしています。どうぞよろしくお願いいたします。


2歳児クラスのBくん。
ゲームあそびをはじめようとすると、じっと座って固まってしまいます。

ちょっとこわばった顔をしているBくんに「応援団」をお願いすると「うん!!」と表情が和らいでいきます。


***

「応援団」とは、ゲームあそびをするときにお友だちを応援すること。
先生と一緒にゲームあそびの準備をお手伝いするときもあります。とても大事な役割です。


この「応援団」ができた理由は、子どもたちに「やらない」という選択肢をつくってあげたかったから。

「やりたくない」「やらない」「いやだ」という…ゲームあそびをやりたくないという子どもたちの意思表示。

場面によっては「わがまま」と捉えられることもあるかもしれませんが…そこは2歳児クラスの子どもたち。
何はともあれ、まずは自分の想いをきちんとわたしたちに伝えてくれたことを尊重したいと思ったのです。


***

「みんなでゲームあそびをしよう!」に対して、やりたくないと感じる子どももいるはずです。

もちろん。
保育士は子どもたちが楽しく過ごせるように事前にさまざまな準備をし、テンションをあげて雰囲気を盛り上げます。
とにかく、みんなが楽しく過ごせるように…楽しくゲームあそびができるように!と。


それでも子どもの気持ちがのらなかった時、無理に参加させるのもどうかなぁ…という想いがありました。

とはいえ、その子どもだけ別の遊びを…というのも少し違う気がする。(子どもの状況によってはそのような対応をすることもあります。)

そこで、クラスの先生方と相談して、ゲームあそびをするときは「応援団」をつくることにしたのです。


もちろん、「やらない」「やりたくない」という子どもがなぜそのように感じたのかをきちんと考え、向き合い、丁寧に対応をします。そのうえでの応援団です。


***

Bくんは「初めてのことや、少しでも不安を感じるようなことは、きちんと自分の中で納得して理解できるまで絶対にやらない」というタイプ。

だから。
どんなゲームあそびでも最初はいつも、応援団からスタート。ルールを理解するためにお友だちの様子をじーっと見ています。
Bくんのなかで、少しずつ「自信」が積み重なってくると、お友だちに誘われてふらっと参加する。そのような感じでした。


でも、いすとりゲームだけは絶対に参加しませんでした。
時間の経過とともに、ルールは理解している様子。応援団として椅子の並べ方等の準備もどんどん上手になっています。
でも、いすとりゲームだけはサポートする先生と一緒にいつも「応援団」でした。


いすとりゲームでは、椅子に座れずに負けてしまった子も応援団になります。
だから、どんどん応援団が増える。
負けてしまって「悔しい…」という気持ちをお互いになぐさめあうように声をかけあう姿もあります。
微笑ましく、とても可愛らしい姿です。

中には、悔しさがあふれ、感情が大暴走!大泣きしながら、ゴロゴロゴロゴロ…寝転びながら暴れ回る子もいます。

負けると悔しいね。
すごく悔しいね。
椅子に座りたかったよね。

「悔しい」気持ちを知った子どもたちに寄り添います。


少しずつ落ち着きはじめると、今度は力強い応援がはじまります。

「がんばれぇー!がんばれぇー!!!」

負けて悔しい気持ちは、まだ残っているお友だちを応援する力に変わる。

どんどん増えていく応援団。
どんどん力強くなる「がんばれ!」の声。

いすとりゲームはいつもとても盛り上がります。

たかが、いすとりゲーム。
されど、いすとりゲーム。


***

Bくんにとって、椅子に座れなかったお友だちの悔しがる表情・あふれる感情等はもしかしたら少々刺激が強かったのかもしれません。
だからより一層「ぜったいにまけたくない→ぜったいにやりたくない!」という気持ちが大きくなってしまったのかな。



どんなに強くてもずっと勝ち続けることはできません。
いつかどこかのタイミングで負ける。
でも負けるのはいや。
悲しくて悔しくて。
ぜったいに負けたくない。

「悔しい」思いはしたくない。
きっとみんなそう思っている。
でも、必ずどこかのタイミングでみんな味わう「悔しい」気持ち。


悔しい気持ちは、きっと成長の糧になる。
成長する上で大切な心の土台になるはず。

でもこれは、こちら側の勝手な想い。


Bくんにとっては今ではないんだよね。
BくんにはBくんのタイミングがある。
だから、わたしたち保育士はそれを待つ。
Bくんをそっと見守ります。


***

「応援団」は、とても良い感じで子どもたちの中で定着していきました。
Bくんだけでなく、周りの子どもたちもその時の気持ち次第で最初から応援団席にいます。
ゲームあそびに参加するときもあれば、「やりたくないもん」の時もある。
2歳児クラスですから。
ころころ気持ちが変わります。
その気持ちを可能な限り受け止めてあげたい。

ゲームあそびに参加したくないときもあるよね。
「やらない」って言ってもいいんだよ。


***

さてBくんですが、年が明けた頃だったでしょうか。
いつものように、先生と一緒に準備をし、とても自然な流れでお友だちと一緒に椅子の周りに立って、いすとりゲームのスタートを待っていました。

応援団席は先生ひとり。

クラスの先生方皆で、驚きながらアイコンタクトをし、「目だけ」で喜びあいます。
変に声をかけてしまって、気持ちをそいでしまってはかわいそうなので…あくまでも平常心(のつもり。)


結果。わりと早めに負けてしまい、大粒の涙を流しながら悔しがるBくん。
「悔しい」気持ちを知ったBくんに声をかけ寄り添う先生と子どもたち。

Bくんは、ずっと涙が止まりません。
少しして落ち着いたものの部屋の隅の方に静かに座っていました。

いすとりゲームはもうやりたくない気持ちかな。
そう思っていました。


子どもたちから「もういっかいやるぅー!!」とリクエストがあり再び準備をはじめると…Bくんはすっと立ち上がり2回戦目に参加。



こんどは ぜったいかつぞ!

Bくんの力強い声が聞こえたような気がした。



***

それにしてもこのクラスの子どもたちは、いすとりゲームが大好きだったなぁ…と可愛らしい姿を思い出す。

最後までお読みくださいましてありがとうございます。 あたたかいお心遣いに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。