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「子どもを評価する」ことは、保育士の仕事なのか?

私が保育士になって最初の年、同じクラスを受け持った同僚は、かなり子どもに厳しいタイプの保育士でした。

子どもへの接し方等は、今振り返ると「不適切な保育」に当たるような言動が多く、まだ右も左も分からない新米だった私には衝撃でした。

例えば、転んで泣いている子どもに、「いちいち泣かないで、痛くないでしょ」と叱る。靴の左右がなかなか分からない子に、「昨日教えたのに何で分からないの。お散歩行けないよ」と脅す。等々。

その同僚が一年後に退職し、保育士以外の仕事に就いたとき、胸を撫で下ろしたことを覚えています。

先日、事務所の整理をしないといけない事情があり、当時の記録のファイルを開く機会がありました。
パラパラとめくる程度でしたが、改めて彼女の書いた記録(保育日誌)を読んで、その観点がとても偏っていたことに気付きました

曰く、靴下が履けない、シャワーを嫌がる、誰かを引っかいた、トラブルを起こした、午睡が短い、好き嫌いがある…。

「保育士が求めること」に達していない部分の羅列で、これを見て、ああ、彼女はチェックリストに沿って子どもを日々評価していたんだな、と感じました。
子どもが何かができなかったり集団生活や活動が思うようにいかなかったりすることを、子どもだけの問題として捉え、評価することが保育士の仕事ならば、こんなに楽なことはありません。

何があっても、「やる気がなかった」「集中力がなかった」「家庭で甘やかしているから」で終わりです。

発達月齢に照らして不得意なことがあれば、スモールステップで援助したり、活動がうまくいかなければ次は集中できる仕掛けを考えたり。
計画通りいかなかったのであれば、計画自体か、進め方に問題があったと考え、次に活かす。必要なのはあくまで「自己評価」です。

実際、「保育所保育指針」には、「評価」という言葉は18箇所使われていますが、全てが保育内容の評価、または自己評価を指し、「子どもを評価する」という表現はひとつもありません。

保育士等は、保育の計画や保育の記録を通して、自らの保育実践を振り返り、自己評価
ることを通して、その専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならない。

保育所保育指針 

子ども達は文字通り十人十色で、同じ学年を受け持っても昨年と今年では全く同じようにはいきません。
そのままならなさに、今年の子どもたちは○○だから、と責任転嫁したくなる時もありますが、その特性を念頭に置いて計画し、工夫することが保育の本質だと、改めて肝に銘じました。



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