ルックバックの映画化が怖い

ルックバックの映画について

ルックバックという作品を読んだとき京アニ事件を思い出した人は少なくないとおもう。内容や公開日からあの凄惨な事件を連想してしまうのは自然。

京アニ事件の当日、自分は都内ゲーム会社でアニメ関連のゲーム制作をしていた。午後ニュースがSNSから流れてきて、心拍数が上がって目がカッとなった。
社内の人間は皆アニメも漫画も大好きな人達ばかりだけど、誰もそれを口に出さず静かに目の前の作業を淡々とこなした。
自分たちにできることをやろうというそんな一日だった。

ゲームを作り続けて次の日になって僕はようやく会社から帰った。
かなり怒りを覚えている。少なからずモノ作りをする立場として、暴力を持って制作者が否定されたことが許せなかった。モノ作りを否定することは、それを上回るモノ作りをし、その作品で表現することでしか否定はできない、だから暴力には屈しないという感情があった。
今でもそう思う。

それから2年後ルックバックという作品がジャンプ+で公開された。
僕は藤本タツキの新作というだけで0時が回ってすぐに何の情報もなくスマホからルックバックを読んで、震えた。
感想はノートにも書いたけど、とにかく一番嬉しかったのは、暴力事件にたいして描き手側が漫画という制作物でリベンジしたことだった。
モノ作りを暴力で否定されても、モノ作りで対抗するのが俺達のやり方だという生き様を漫画で表現してくれたと勝手に感じた。

だからルックバックの映画を否定するなら、それを超える作品を作るのが本筋だとおもう。

ただこの映画化の本編予告をみて、漫画とはまったく違う涙を誘う映画だったら本当に嫌だなとおもった。そしてルックバック自体を嫌いになってしまうのが怖いなとおもった。もちろん作品は僕のものではなく藤本タツキのもので表現は自由だ。

自分勝手なのは僕で、僕はこの作品で泣きたいわけじゃなく、ただただモノ作りする姿ってカッコいいなって思えるようになっていてほしい。
映画をみた帰り道、よーし俺もいっちょまたがんばるぞって思えるような。




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