ないものねだり、されど月見はうまし。
〔ないものねだり〕
この言葉をはじめて知ったときどれほど衝撃を受けたことか。
他人の持っているものが羨ましくてたまらなくて、あれがないこれもないと不足が不足を呼んで押しつぶされそうになるあの恐怖。
いま思い出しても苦くて渋い( - "-)(-" - )
数週間前の私は本当にないものねだりだった。
動画を編集すれば絵を描ける人が羨ましいと感じたり、代わりに絵を描いてみても全く満たされない。
かと思えば夜中に突然AmazonやZOZOに一日中張り付いて目に映るものすべてをカートに詰め込んだりとなかなかの荒れ模様。(結局そのときは何も買わなかったけれど)
どうやら心にぽっかり穴が空いてしまったらしい。
特に大きな事件というようなことも心当たりがない。
あまりにも毎日が平和にすぎていると心のすり減り具合に気づくのも遅くなるらしい。
うじうじとベッドの上で泣き言を言いながら、犬に慰めてもらう毎日。
いくつになっても本質は子どもの頃から何も変わってないのだ。
今年も嬉しいことはたくさんあった。
新しいiPhoneもiPadも家具も買えた。
仕事帰りのおやつも何回食べただろう。
買いだめしておいた玄米のおかげでお米にも困らなかった。
おかげさまで服がぴちぴちしているくらいにはいい生活が送れているというのに。
満たされないのはどうして?
足りないと叫ぶ人はだあれ?
考えても仕方がない問いが頭の中をぐるぐると走る。
「こうなったら月見バーガーでも食べに行くか。」
忙しない頭の中で思いついた子どものいたずらのようなアイディア。
まるで今がそのときだと言わんばかりに滑らかに動いていく。
行き先は隣駅にある小さなケンタッキーフライドチキン。
カーネルおじさんの赤い看板が目に入ればたどり着いたも同然なのだ。
今年初めての月見は去年と同じ月見チーズフィレバーガー。
チーズ月見という名前の割にさっぱりした飽きのこない味が好きで毎年この時期になるとケンタッキーに通っていた。
ていねいに包まれたバーガーを開くとまさにワンダーランド。
色合いがね、これまた素晴らしいと思うんですよ。(強調)
近くにあるのがマックばかりなせいか、ケンタッキーに行くには年に数回しかない。
それでもあのチキンの味を噛み締めると幸福パロメーターが一気に上昇して憂鬱の雲が一気に晴れるんだ。
バンズはふかふかで、
レタスはしゃきしゃきで、
目玉焼きはぷるとろで、
チキンはしっとり、
具材のまとめ役のマヨネーズソースも自分の勤めをしっかり果たして。
ごちそうさまを口に出すころにはすっかり心もお腹も満たされていた。
よくよく考えたら最近は忙しさにかまけて食べ物の味もあまり分からなくなっていたなぁ。
そりゃ、満たされないわけだ。
あるものはあるし、
ないものはない。
きっとその先にあるのは「じゃあどうする?」なんだけど、たまにそのことすら忘れてしまうこともある。
良くも悪くもそれがきっと人間の性なのだ。
もしかしたら私だけかもしれないけれども。
お店を出る頃にはすっかりあたりは暗くて、ぼんやりと欠けた月が顔を出していた。
「月が綺麗ですね。」
今宵はそんな言葉がよく似合う。
ほがらか
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