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プロセスデザインという魔法を学ぶ

こちらはTECH PLAY女子部 Advent Calendar 2019 22日目の記事です。

プログラム開発のお仕事にも慣れてきた、昨年の新人エンジニア留美さんとこんな話をしました。

留美さん:もっといろんなシステムが作れるようになるには次にどんなことを勉強すればよいですか?プログラミング言語や設計技法、クラウドプラットフォームとかいっぱいあって迷ってます。

わたし:うーん、専門知識については人それぞれだけど、仕事の範囲を広げたいなら「プロセスデザイン」を学ぶことをおすすめするかな。

プロセスデザインって何?

留美さんの今のお仕事は、作るべきプログラムの仕様があって、どのようにして仕様どおりのプログラムを完成するかというのががんばりどころでした。
次のステップとしては、なんのためにそのプログラムを作っているのか(ゴール)を考えて、どうやってそのゴールに到達するかの段取りができるようになることではないでしょうか。

この、ゴールがあってゴールに向かってお仕事できるように考えるのがプロセスデザイナーです。

プロセスデザインを学ぶメリット

プロセスデザインを学ぶメリットはざっくり4つあります。

1. 学習に特別なツールはいらない
2. 学習したことをすぐに実行に移せる
3. どんな職種の人にもプロセスデザイン力は役に立つ
4. 仕事の視座が上がる

ゴールを決める:誰のためのプロセス?

留美さん:なんかむずかしそうな気がしますができるでしょうか…

わたし:じゃあ身近な課題でプロセスデザインをやってみよう。
留美さんが定期的にやっているお仕事で「〇〇のログをチェックする」というお仕事あるよね。

留美さん:ええ、毎日持ち回りでやってます。チェックリストがあってそれに従ってログを見て担当メンバーに報告しています。

わたし:じゃあ、それは誰のためにやってるのかな

留美さん:うーん、業務マニュアルに則ってやってるんですけど、誰のためって考えたことはなかったです。

わたし:そうそう、そういうときがプロセスデザイン力が必要なときなの。「そういうとき」とは業務だけがあって業務を遂行している人が目的(ゴール)を見失っているとき。
石の猫」っていう寓話知ってる?もしかしたらその業務は「石の猫」かも。

プロセスデザインがやることは
・ゴールを決める
・ゴールにたどりつく段取りを決める
・段取りが誰でもできるようにする
の3つ。

ゴールを決めるときに大切なのが「誰が到達するゴールなのか」。誰のためのプロセスかということね。
「誰」を決めることがゴールを決める半分といってもいいくらい。ビジネスプロセスの場合は、いわゆるカスタマーのペルソナ作りが「誰」を決める過程だね。
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余談ですがマーケッターの方に『コンシューマービジネスでのペルソナ作りに行き詰ったときの解決手法』として「ターゲットがどんな雑誌を読んでいるか」を考えるというのを以前教えてもらいました。
その雑誌を見れば、ターゲットとするカスタマーが興味を持つこと、好きなブランドなどがいい具体にまとめられている、というわけです。
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じゃあログチェックは誰のため?を考えるとき気を付けるのは、ターゲットの範囲を大きくしすぎないこと。初めのうちは特に「ターゲットを広げすぎない」ことに注意。
というのも、どんな仕事も突き詰めていくと「人類の幸福のため」になっちゃう。それはちょっと―ハードル高すぎるでしょ。なので初めのうちは顔が思い浮かぶくらいの人をターゲットにするのがよいです。

留美さん:じゃあ、チームメンバーでしょうか。みんなの手戻りがないようにというのがゴールです。

ゴールにたどりつく段取りを決める

わたし:次はゴールにたどり着く段取りを決めるんだけど、いま手戻りがあるのはどんなとき?

留美さん:たまにあるんですけど、最近追加されたプログラムの異常値がフィードバックされなくて、最初からやりなおしたことがあります。

わたし:それはログチェックでは見つからないの?

留美さん:そのエラーはチェック対象に入ってないんですよ。最近追加されたプログラムなので。

わたし:なるほど。システムの改修にチェックリストの更新がついていっていないわけね。

留美さん:じゃあ、リストにそのエラーをチェックするように追加すればいいですね。

わたし:ちょっと待って、それはどうかな。次に別のプログラムが追加されたら同じことが再発しない?
まずはゴールまでのメインルートリソースを考えよう。
メインルートは一番多く通る業務の流れ、リソースはプロセスに必要な道具やデータや人だと思ってもらえればいいかな。

メインルートの例:ログが生成される⇒担当者がログをチェックリストに沿ってチェックする⇒チェックNGがあればプログラム担当者に伝える⇒すべてのチェックがOKになる
リソースの例:チェック担当者、ログ、チェックリスト、プログラム担当者

プロセスデザインで最初に注意するのは、まずはメインルートをしっかり固めること。
例外プロセス(例えばログがとれてなかったら、など)は後から。そうしないと、一番たくさん使うルートのプロセス設計がいつまでたっても終わらないから。
旅行に行くときに最低限必要なものをリストアップしてから、あったほうがいいものをそろえないと準備がいつまでたっても終わらないのと似てるかも。

段取りが誰でもできるようにする

今のプロセスの課題は「チェックリスト」が更新されないことこれを解決するには誰がどうすればいい?

留美さん:プログラムの更新時にこのチェックリストも見直すようにする必要がありますね。

わたし:確かに。それはマニュアル化すればすぐできる改善方法だね。いいと思う。
別の視点してはプロセスにかかわるリソースを減らせないか考えるの。ここではそもそもチェックリストなしにできる方法はないか考える。

たとえば、各プログラムのログフォーマットが共通なら通知すべきログにフラグを立てるとかの共通ルールを設けて、そのフラグがあるものだけ無条件にチェックすれば、そのプログラムの内容を知らなくても報告すべきログとそうでないログが誰でも判断できて、しかもチェックリストもいらいない。

留美さん:なるほど!そうすればマニュアルを更新する手間もいらないですね。

わたし:さらにそこまでできれいれば、フラグの有無は人がチェックしなくてもいいんじゃない?

留美さん:あ、そうか。ログパーサーを使って簡単にSlackに通知できます!毎日誰かがチェックしなくてもいいですね。

わたし:というわけで、プロセスデザインでルーティンワークを1つなくすことができました。めでたしめでたし。

プロセスデザインを学んで、プロセスデザインの目をもって街を歩くと、いろんな工夫が発見できて楽しいよ!

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プロセス設計というものを通じて問題解決の魔法をデザインするようなものですから、いわば現代の魔法つかいとも言えるでしょう

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