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少子化とクーポン

「産み控え」の解消を狙い「クーポンを支給」する新たな方針が波紋を呼んでいる。

私が記憶に新しい育児クーポンといえば、杉並区で発行された「ゆりかご券」。
母子手帳の発行時に貰えるもので、使用方法はとても限定されていた。

何かの役には立つだろう、と
とても前向きな気持ちでそれを貰った。
マッサージや家事代行など色々あるのだが、当時の状況は度重なる緊急事態宣言渦の都会。家族友人に会うことすら回避する日々でわざわざ他人と接触する為に使おうとも思えなかった。
できれば生活必需品に使いたいのだが....

しかし、せっかく頂いた「2万円分」。
諦めずゆりかごの冊子をしっかり読み込んで「これに使おう」と目をつけた用途があった。
「タクシー利用」である。
杉並区住まいの我が家は自動車を持っていなかった。
日に日に大きくなるお腹。妊婦健診でバスや電車を利用するにしても、停留所まで歩くのも大変だった。不特定多数の乗車する満員電車を利用するよりリスクも低そうだ。

早速、アプリで簡単に利用できるタクシー会社に使おうと思うも「杉並区の指定タクシー会社のみ」。

電話することにした。
Aタクシー:何度かけ直しても電話が繋がらない
Bタクシー:自動音声に繋がるも「配車不可」と案内される
Cタクシー:「予約できる時のみ折り返します」と受付の人から迷惑そうに言われる。
その後、待てど暮らせど折り返しなし。
Dタクシー:アプリで予約ができるというので利用するもの、「日が近すぎて予約ができない」「日が遠すぎて予約ができない」あらゆる日程を必死で試すも、予約ができないと表示される。

etc etc .....
国中の「使えないタクシー会社」でも寄せ集めたのかいな?というレベルで捕まらんのである。
ここまでにタクシーが配車できない事なんて前代未聞だ。
別に狭い田舎町の常識を人口過密な都会で持ち出しているわけではない。
都内でも荷物の重いイベント時などに何度もタクシーを呼んだが、電話だろうとWebだろうとアプリだろうと大概は数分で配車された。「さすが激戦区」と感心するほどすんなりタクシーを使えたし、何処も客に対する最低限の感謝を表明してくれた。
少なくともこんなに何社も立て続けに振られる事なんてなく、「配車できる時だけは折り返しますから」などと迷惑がられる事があるはずもなかった。

当時の私はつわりで何を口に入れても拒絶してしまう辛い状況だったのだが
「クーポン指定のタクシーが軒並み配車できない上に何故だか冷たくあしらわれる」という実にくだらない状況に悲しくなり、部屋の真ん中で大きな腹を抱えて涙を流し呆然としていた。

悲しかった。私は期待していたのだ。
「2万円分、歩かなくて済むんだ!」
「妊婦はタクシー代を気にしなくていいなんて、お国は結構優しいのだな!」と。
ただ。区指定のクーポンを使おうとしただけなのに。
「もう、クーポンを使おうとするのやめよう。ストレスだしお腹の子供に毒だよ。」
連れ合いに肩を叩かれた。

残念だったのは、私が「お得だと期待してがっかりした」個人の問題だけではない。
最も重大なのは、この使えないご立派なクーポン様を企画考案、発行し妊婦へ配る事にどれだけの税を投入しているのかということだ。

〝現金だとパチンコに使い果たす親がいる〟?
それはそういう親もいるだろう。
しかしそんな親ばかりではないだろう。
馬鹿親を基準に「制限」をかけて本当に我が子の健康や生活のためにと使いたい人間が只々馬鹿を見るクーポンをせっせと発行する方が、よっぽど国全体の損失に感じる。

ちなみに産科の何某スタッフさんに聞いたのだが、「私の周りの妊婦は、クーポン捨てたって言ってましたよ。」
どれだけ使い勝手が悪いのだろうか....

もはや、発行の目的は何だレベル。
いやもういらん。まじでいらん。
廃車しないタクシー会社しか利用できないクーポンは身体に悪い。
これから母親になる人を助けたいならばクーポンなんて1円分も要らないので出産や母乳外来にまつわる医療費の全てに対し健康保険が使える様にして欲しい。

全てのクーポンが悪だとは言わない。
しかしながら「子供が生まれない現状」を「産み控え」と歪んだ命名して、クーポンて。
わーい!クーポンうれぴー!出産育児への心配がこれで無くなるね!GOTO子育てトラベル!いっぱい利用してもっと産むぞ!
となる稀有な親が... 1人か2人いたとしても。
同じ予算をかけるなら、もっと他の育児支援に使って欲しい。

今年から児童手当にまで制限をかけ、
児童手当が1円も貰えない世帯を作り
「子供の扶養控除」は0円。
何人育てていても税金は減らされない。
「子育て自己責任」制度に力を入れつつ
一方で0歳からもきっちり高齢者支援金を徴収。

挙句、「産むのを控える人が増えて困ったもんだ」とクーポンを配る。
どういう事だ。何が起きてるんだ。

先日、新生児を抱く若い父親を見かけた。
本当につい先日までお腹に入っていたような小さな生命体が、キラキラしていた。
全く知らない子供なのに、
「何か不便はありませんか....」
「できることは何でも手を貸したい」
そんな気持ちが自然と湧いてきた。
「赤ちゃん課金欲」と言ってもいい。
目前の力ない生命体が健やかに生きる為に、出来得る最善を惜しみなく提供したくなる。
そういうものが人間には本来備わっている様に感じた。
自分の老後とか国の未来などは関係なく
ただ沸々と湧き起こる感情は不思議だった。

もちろん政治が本能的な感情のみに左右されてはならないだろうから、私のような素人の感想と一緒くたにしてと仕方がない。
論理的かつ長期的な打算とビジョン。恐らくそれらを尽くした結果が今の大少子化•“子育て罰”時代なのだ。一体どのように理想的な未来図を描いているのか。

どうしたらこの国で家族を持ち、子供を生み育てたいと思う人が増えるだろう。
長期的な心配で子供を諦めている人が、前向きに検討できるだろうか。

そんな国家の存続に関わる最重要課題の一つを、
「どうしたらこの薬局で花柄のトイレットペーパーが売れるだろう」と同じレベルで考えれば、答えは「クーポン」なのだろう。



ところで新聞の端から端まで目を通すような
大人ですらも、「子供の扶養控除がない」
「0歳に課税される高齢者支援金」を知らない人がとてもとても多い、とゆーか殆どの大人知らねーじゃんどうゆうこっちゃが最近になってわかった。

「子育て罰」(子育て世帯に税金は増やし支援金は減らすが、国の為には自己責任で勝手に産んで育てて増やして欲しい)が巧妙に隠されているのが現状だが、
問題提起し多くの国民がその事実をまずは知ること、そこからだと考え発信している。

現与党でも、この法はさすがにやべぇと思っている議員は少なくないのでは.…  


一縷の期待を残して一旦筆を置きます

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