なんで教えてくれないの!
むかし働いていた飲食チェーンは外国人も多かった。
その外国人は正社員だから、よその店舗からの応援要請に応える形で二日間よその店舗に出ることになった。
さてさて、彼は車を持っていないというから私は
『△△さん、どうやって✕✕店に行くつもりなのかな?』
と同僚に訊いた。
…さぁ?バスじゃない?
『えっ?バス?
私、前に✕✕店の隣の店でバイトしていたからわかるんですけど、バスの本数メチャ少ないし、あそこは終着点だから結構広くて迷子になりますよ?
あの店出たあと、彼は戻ってきてこの店出るんでしょう?
時間間に合わないと思います…』
ごそごそと私は自分の鞄からバスの時刻表を出して、「やっぱり」と思った。
お客さんが少ない時間帯に移動しろということは、バスが少ない15〜16時に移動になってしまうんだ。
私は勤務を終えて、休憩室の△△さんに声を掛けた。
『How …go…go…えーと
Will you use bus?
Do you know bus stop?
…near bus stop
Do you know when come bus?』
英語的には文法めちゃくちゃ。
もはや、英語になってないぞ。
だけどインドのお隣の国、ネパールの人だからか、伝わったみたい。
よかった。
しかし、バス停も時間もわからないと言う。
えー!それじゃ大変だ!
私は地図とバスの時刻表を取り出した(この頃私は車がなく自転車で職場に通っていた。通院がバスだったため、持ち歩いていたのだ)。
勤務時間と、移動時間と、バス停の位置を一生懸命、カタコト英単語と身振り手振り、イラストで伝えていると…
『〇〇のやつ、なんか一生懸命やっとるぞ(笑)。』
『…おーい〇〇。
そいつ日本語わかるぞ〜』
『なっ!
ちょっ…なんで黙ってたんです?
△△さんわかってたの?
みんなもひどいよ〜、黙ってるなんて!』
△△さんは裏方寄りの厨房スタッフで、私はホールスタッフだったからあまり接点がなく、彼が日本語がわかることを知らなかった。
『にやにやしてさ〜、わかってるなら言ってくれなきゃわからな…!!?
あっ!からかったんですね!!』
笑っとる。
くぅ〜!!
でも、私が一生懸命時間の計算を筆算でやったから、彼が帰ってきてこっちの店に出られる時間はもっと後ですとパートの長にお伝えできた。
計算が遅いから、一時間もかかっちゃった(笑)。
しかも、様子を見に来た同僚に、
『うわっ!
割り算の筆算してるやつ20年振りに見た!!
お前、スゲーな』
『筆算じゃないと計算できないんです…
今日、電卓忘れちゃって…』
『おま…いつも電卓持ち歩いてんのか?』
『?、ええ持ってますよ?』
ツッコミまくられた。
私にはスタンダードな感覚なのだけど、やっぱりこの頃から既に『障害特性』は持っていたんだなぁと感じるエピソード。
でも、このお店、私みたいなのが6人もいて決してレアケースじゃなかった。
スタッフ全員で24~30人いて、その中6人がこんな感じの人(私含め一般雇用)。
まぁ4~5人に1人がこんな感じ。
全員愛想よくて接客向けではあった(笑)。
こんな感じの先輩から私は仕事を教わり、こんな感じの後輩に私は仕事を教えていた。
感覚が近いから、『ミスりやすいポイント』が共有できるため、すんなり理解にたどり着くのだ。
いやぁ〜、バスの件。
あのときは笑ったし笑われたなぁ。
『おもろいからちょっと見とろー』
ってネパールの人も思うんだな(笑)。
そういや『オモシロ動画100連発』系のテレビ番組に国境ってないよね。
外国の人のドジってる姿でも盛大に吹けるもの。
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