見出し画像

クラゲの成長過程がこんなにヘンテコだなんて!

ちょっとこれは…!クラゲってこんなに変身するの!?誰かに話したい…!!

わたしが初めてミズクラゲの成長過程を知ったとき、思いもよらない変身っぷりに本当に驚きました。2016年のことです。わたしが読んだ図鑑では「ミズクラゲ 」というクラゲについて解説されていました。
ミズクラゲといえば、四つ葉のクローバーみたいな傘模様がある白いクラゲで、水族館でもよく飼育展示されています。

画像1

たわん、ゆわん、とのんびり浮遊する彼らのことはこれまでだって何度も見ていました。見知った彼らの知られざる一面です。わたしは夢中になって調べました。

ミズクラゲの成長過程…生活史と言ったりするのか…このことをイベント出展の時に話せないものか……既に知ってる人とも、まだ知らない人とも、「ナンダコレ!?」って驚きを共感したい…!!
わたしは「hoccolie(ほっこりえ)」というブランド名で、クラゲをモチーフにしたアクセサリーを作って販売するという活動をしています。生き物がテーマのイベントに出展したりするので、お客さんとクラゲの成長過程について話せたら絶対楽しいと考えたのです。
言葉だけでは伝えられないと思い、それぞれの形態を作品にして、触って動かしながら説明できるモビールを作ってみました。それがこちらです。

画像2

クラゲは受精卵から見知った形に育つまでに様々な変化を遂げます。 受精卵から成長し、成熟したクラゲからまた受精卵が誕生していく…こうした成長、生殖による変化が一通り出現する周期のことを「生活史」や「生活環」と呼ぶそうです。
クラゲの成長過程にはいろんな形態があって、それぞれに名前がついています。
・メデューサ(成体)
・プラヌラ
・ポリプ
・ストロビラ
・エフィラ
・メテフィラ
成体であるメデューサをオス♂とメス♀に作りわけて、7パーツがゆらゆら泳ぐモビール作品に仕上げました。

モビールだけだと次はどの形態に成長していくのかわかりにくかったので、矢印で成長の順番を図式化したクリアファイルも作ってみました。

画像3

このnoteではモビールやクリアファイル写真を使って、ミズクラゲの生活史をご紹介したいと思います。

胃袋!ミズクラゲの四つ葉

画像4

生活史をご紹介する前に、もうひとつ驚いたことをお話しさせてください。ミズクラゲに餌やり体験をした時のことです。
餌やりをする前は白っぽかった傘の四つ葉模様が、餌やり体験中にどんどん色が変わっていったのです!
この四つ葉のクローバーのあたりは空間になっていて、胃腔(いこう)と呼ばれています。胃腔の中には消化を助ける胃糸(いし)や、卵や精子をつくる生殖巣があるそうです。胃糸や生殖巣があるのがおそらく、アルファベットのCみたいにみえる四つ葉の縁のあたりではないかと思われます。お腹がすいている状態だと、胃の中には胃糸や生殖巣しかないので白っぽく見えますが、餌となるプランクトンを食べると、胃腔が餌で満たされていき、餌の色が透けて見えちゃうんです!白かった模様が、餌色ピンクに染まっていくかのようでした。
水族館でも、四つ葉がピンク色の満腹になったミズクラゲを見かけることがありますよ。ちょうど餌の時間の直後だったのか胃腔(いこう)がピンクになったミズクラゲが撮れました。これは傘の裏側から撮影していて、ピンク色のつぶつぶがクラゲと一緒に漂ってるのも見えました。このピンクのつぶつぶが餌のプランクトンです。この写真では、胃腔の中の胃糸があるあたり(アルファベットのCみたいなとこ)に餌が集中してるように見えます。
ミズクラゲの印象的な四つ葉模様が胃にもなっていて、しかも給餌後には餌の色が透けて見えちゃうなんて…知らない時は色の違いに全く気がつきませんでした。このことを知ってから、水族館でミズクラゲの傘模様を見るのがますます楽しくなりました。モビールでもその違いを作りわけてみたので、そちらもまたご紹介しますね。

では次から、モビールに仕上げた7項目をご紹介していきましょう。クラゲの不思議な成長過程…卵からまた成体になるまでの「生活史」のお話です。

⒈メデューサ(成体)メス♀

画像5

わたしたちが水族館でよく見るクラゲは「メデューサ」と呼ばれる形態だそうです。ミズクラゲにも雌雄があるので作りわけてみました。
ミズクラゲには傘の下からひらりとした口腕(こうわん)が4本生えてると思いますが、メスにはひらひらとした保育嚢(ほいくのう)もついています。口腕の生え際…傘の下中央あたりです。メスの卵がオスの精子と受精すると受精卵となります。受精卵がプラヌラと呼ばれる形態へと育って旅立つまで、保育嚢で保育するのだそうです。

モビールでも、傘の下にひらひら保育嚢をもつのがメスです。保育嚢をデフォルメして表現していますが、なんだかドレスのフリルっぽくておしゃれさんですよね。

⒉ メデューサ(成体)オス♂

画像6

ミズクラゲのオスには保育嚢がなく、傘の下から生えているのは4本の口腕だけです。

モビールでは保育嚢がなく、胃をピンク色に再現したものがミズクラゲのオスです。 給餌後の変化を話せるよう、メスの胃は白く空腹に、オスの胃は餌色ピンクで満腹にと作りわけてみました。

餌色ピンクが可愛くて、ピアス・イヤリングでも胃だけピンクで全体は白い「満腹ミズクラゲ」を作っています。

画像7

⒊プラヌラ

画像8

受精卵は、やがて周囲に繊毛の生えたプラヌラとなります。(作品ではデフォルメ表現していますが、もうちょっとラグビーボールっぽい球体のはずです。)
プラヌラが岩場などに着底すると、触手を生やしたポリプに変身していきます。

ただし、一部の地域のミズクラゲでは、着たプラヌラからポリプにならずに1匹だけのエフィラを発生させるそうです。 どうしてその地域のミズクラゲだけ発生過程が違うのか、従来のミズクラゲと同種なのかあるいは別種なのか…研究を進めているそうです。

クリアファイルでもプラヌラから2本の矢印を伸ばし、ポリプまたはエフィラに変身することを示しました。

画像9

⒋ポリプ

画像10

岩場などに着底したポリプは、プランクトンを捕食して生活します。このピュンピュン伸びた触手を使って餌を捕まえるのですが、動画で見たポリプは触手が素早くピュクッ!と動いていて可愛かったです。
また、ポリプは自身のクローン分身を作るかのように増殖します。しかし水温が下がったり餌のプランクトンが減少するなど、環境の変化によってストロビラへと変身します。この変化はストロビレーションと呼ばれています。 岩場での着底生活から、浮遊生活へと変わる準備です。

ミズクラゲのポリプを飼育したことがある方に聞いた話なんですが、毎日十分な餌を与えていると、いつまでたってもポリプのまま増え続け、ストロビラへと変身しなかったのだそうです。 変身のきっかけには、環境変化が重要そうですね。

⒌ストロビラ

画像11

ストロビラも、岩場などに着底して生活する形態です。ストロビラには花のような形をしたエフィラが何枚も重なっており、上から1匹ずつ海中へと旅立っていきます。この時やっと、着底生活から海中での浮遊生活に変わるわけです。
ストロビラから1匹ずつエフィラが剥がれて旅立っていくことを遊離(ゆうり)といいます。
モビールのストロビラでは、エフィラが遊離する様子も動かしながら説明できるようにしました。大小様々なエフィラをプラバンで作り、重ねることでストロビラを表現しています。
イベントで見かけたらぜひ「遊離」させてみてくださいね!

⒍エフィラ

画像12

ストロビラから旅立ったエフィラはとっても元気に拍動します!ぜひ水族館や動画で見ていただきたいです。成体のミズクラゲって、ふわん…ほわん…とゆったり拍動しながら水槽を漂うので、それがまた見ていて癒しだったりするんですけど、エフィラは元気。
ピュッピュッ!ふわぁ〜〜…ピュッピュッピュッ!!てな感じで、元気いっぱい拍動したり、拍動をやめて浮遊してみたり…可愛い。とにかく可愛い。
わたしの大好きなエフィラ動画をここに貼らせていただきます。ストロビラから遊離する瞬間や、それから水槽内を泳ぎ回る様子が見れますよ。
ミズクラゲ(3)ストロビラ エフィラ遊離

エフィラは、花びらのような8箇所の裂け目が徐々に円形に近づくように成長していきます。
中心からぶら下がってるオレンジの筒のようなものは口腕(こうわん)です。成体のミズクラゲも、傘の下からひらっとした口腕が4本生えていますね。エフィラのときはまだ筒状ですが、成長するにつれてここが4つに分かれていくんだそうです。

⒎メテフィラ

画像13

エフィラが成長して徐々に円形に近づき、色も白っぽくなった形態はメテフィラと呼ばれています。
メテフィラは水管系による傘模様がなんとも美しいのです!水管系というのは、放射管や環状管といった、クラゲの傘にある葉脈や血管みたいに見えるところです。体内の循環器としての役割を担っているそうですよ。
メテフィラはやがてメデューサ(成体)へと成長するそうです。

モビール作品はトースターで焼き縮めるプラバンを使って作っているのですが、水管系による傘模様はこちらの写真の方がイメージしやすいかもしれません。

画像14

メテフィラの傘のところを焼き縮める前のプラバンです。プラバンを光に透かしてみたら、すごく綺麗な影絵ができました!
プラバンはトースターで焼くと1/3ほどに縮むので、それを熱いうちの3〜5秒で曲げてクラゲたちを作っています。

なんてヘンテコなんだ!

以上がミズクラゲの生活史です。メテフィラはメデューサ(成体)へと成長し、命のサイクルが回っていきます。
わたしはてっきり、卵からミニサイズのクラゲが同じ形のまま産まれてくるのだろうと思っていました。クラゲの成長過程を知っている方にも知らない方にも、モビールやクリアファイルを通じて楽しんでいただけたら嬉しいです。
「エフィラ…?なにそれ??」 と聞かれたときにも、「クラゲの赤ちゃんのことでね!クラゲってなんかいっぱい変身するんだって」 …なんて、このヘンテコわくわくが詰まったクラゲのことが、みなさんの会話の中にまぎれこめたら最高だなあ〜そんなことを妄想しながら作りました。

モビールはhoccolieの出展イベントでよく展示をしています。触っていただいたり、写真撮影も大歓迎です。
クリアファイルはイベントや通販サイトで販売もしています。
https://hoccolie.theshop.jp

hoccolieでは「生き物のおもしろいカタチや生態を伝えたい」という思いのもと作品づくりをしています。
モチーフにした生き物のことなど、またnoteに書いていきたいと思います。
読んでくださりありがとうございました!

Twitterでは作品写真や日頃の制作のことをつぶやいてます。
今後のイベント出展情報も発信していますので、よければご覧ください。
hoccolieのTwitter



参考文献

峯水 亮・久保田 信・平野 弥生・リンズィー,ドゥーグル(2015)『日本クラゲ大図鑑』平凡社.

「クラゲの王様!!ミズクラゲの特徴と魅力について」, <http://kurage-ya.com/moon-jellyfish/> 2018年11月21日アクセス. 

「ミズクラゲのエフィラから稚クラゲまでの形態変化を詳しく解説します!!」, <http://kurage-ya.com/ephyra/> 2018年11月21日アクセス. 

「ミズクラゲ 」,<http://northvalley.web.fc2.com/jfish/mizu.html> 2018年11月21日アクセス. 

名古屋港水族館 「四つ目・五つ目・六つ目クラゲ」,<http://www.nagoyaaqua.jp/blog/2015102015100638.html> 2018年11月21日アクセス. 

鶴岡市立加茂水族館「ミズクラゲ」 ,<https://kamo-kurage.jp/shonaizukan/mizukurage/> 2018年11月21日アクセス.

読んでくださりありがとうございます!いただいたサポートは、生き物の勉強や作品づくりにいかしていきます。