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掌編小説マガジン 『at』

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掌編小説マガジン at(あっと)。 これまで、ななくさつゆりがwebに投稿した掌編小説を紹介していきます。 とりあえず、100本! ※2024.6.18 いったん目標の記事10…
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#恋愛小説が好き

情景243.「霧雨の日」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「霧雨の日」です。 霧雨と、けぶるもや。 広がる海はもやに飲まれ、その先は不明瞭なまま。 先の見えない不明瞭さを、霧雨のもやを眺める男女の関係に重ねてみる。 長谷川等伯の松林図屏風。 けぶるもやと場の湿度を感じさせる、とても好きな情景です。 現物は以前、九州国立博物館の特設展でたまたま拝見することができました。 魅入っちゃいますね。 ぼんやりとしていて、曖昧な有り様。 ただ、先には何かがあるのだろうと、そう

情景219.「春にはまだ早い」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「春にはまだはやい」です。 先日、急に暖かくなりました。 翌日、また寒さが戻ってきました。 季節の移り変わりの中にまじる感じ、匂いのようなもの。 ただ、春にはまだ早い。 私たちは時を季節で区切って生きていますから、その時々で目にするものを、つい季節感や風物詩という風に捉えてしまいます。 とりわけ「春」には、何かと意味をもたせがち。 一瞬のうちに、ほわっと芽生えるなにか。 浮き上がるように嬉しいもの。 ちょ

情景102,103.「後ろの同級生」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「後ろの同級生男子」と「後ろの同級生女子」です。 電車通学。気になるひと。 ……話しかけるのって、アリか? イヤ……うーん。 両片思いってヤツなんですかね。 それぞれの視点で、淡い想いの行き先を覗いてみましょう。 こういう、視点が変わって見え方も変わってくる情景のお話、かなり好きです。 情景の醍醐味ですね。 お楽しみください。 ※※『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょ

情景141.「この子は笑いの沸点が低い」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「この子は笑いの沸点が低い」です。 学校の帰り道。押しチャリをして歩く男子女子。 ところで、笑いの燃費ってなにさ。 帰り道。たまたま女子と一緒になった……。 ホントにたまたまだったかは、ともかくとして。 話してはじめて知る一面って、いっぱいありますよね。 笑いの沸点低くしてどんどん笑っていく日があってもいい。 というわけで、よい一日を。 よく笑ってる女子の情景、お楽しみください。 ※※『あなたが見た情景

情景104.「夕陽と影」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「夕陽と影」です。 自分の足元で影と夕陽がじゃれあう。 影に覆い隠されていく中に差す陽光が一瞬のハイライトをつくる。 谷崎潤一郎の随筆で「陰翳礼讃」ってありますよね。 それを意識して、とまではいいませんが、暗がりの奥にある何か美しいものを、光の当たらない部分におかしみや一種の美しさみたいなものを感じに共感しながらこの情景を書いていました。 なんとなく、わかります。 からの、一瞬ひざしが差し入ってきて表情をあ