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セイロンティー7大産地⑤紅茶の父とチャレンジ精神が生んだ「キャンディー」

セイロンティーと言ったら、まずはキリンの「午後の紅茶」で有名になった産地、「キャンディー」がまずは思い浮かぶ人もいるかも。
私は、市販の紅茶飲料をほどんど飲まないので、最近のキリンのホームページを見てみたら、「午後の紅茶」の中でも、無糖は「ダージリン」、ストレートティーは「ディンブラ」、ミルクティーは「キャンディー」、レモンティーは「ヌワラエリヤ」を「数十パーセント」使用と説明がされていて、使い分けをしているようだ。今度飲み比べてみようかな。

言わずもがな、キャンディーはセイロンティーの中でもっとも有名な産地のひとつだ。でも、ブランドとして「ウバ」や「ヌワラエリヤ」のように味や香りで有名になったというより、紅茶ファンの憧れの地?として有名だ。
というのも、セイロンティーの父「ジェームズテイラー」がこの地で当時、スリランカでは難しいとされていた「チャノキの栽培」に成功した産地だからだ。
本国イギリスで急速に需要が高まっていた紅茶は、もはや上流階級だけの嗜好品ではなくなって裾野が広くなり、需要と供給のバランスを欠いていく。
そんな当時にジェームズテイラーがスリランカで紅茶生産に挑戦したのには、大きなきっかけもあった。
実はスリランカは、19世紀半ばまでコーヒー栽培が主流だった。
(本国ではまだコーヒーハウスも主流の時代。コーヒーハウスで紅茶も販売されていた)
しかし、コーヒーの木がサビ病にかかりコーヒープランテーションは全滅するという悲劇が起こる。
何度コーヒーの木を植樹し直しても、サビ病の菌はその土壌に感染していて、どうしてもコーヒー栽培が復活できなかった。


けれどいつの時代もピンチはチャンス。
農園主はがっかりしながらも、コーヒーから茶の木に移植をし始めたのだ。
ジェームズテーラーはここから試行錯誤に邁進して、わずか数年でスリランカでの「チャノキ栽培」、ひいては「紅茶の生産」を可能にし、イギリス本国へ紅茶を送り出した最初のキーパーソンなのだ。
この歴史上のピンチが、実は近現代のイギリスがヨーロッパの中で特に「紅茶文化」を発展させた分岐点でもあったと思う。
そんな縁ある「キャンディー」という産地の紅茶。

紅茶の特徴と言えば、数年前まで、「特筆する特徴はなく、渋みも穏やかでマイルドな味わい。澄んだオレンジ色で、くせがないため、ブレンドの嵩増しに使われたり、量産型に使われることが多い」なんて紅茶の本にも書かれてしまっていた。

でも、個人的にキャンディーの汚名返上をするとしたら、「安定して平均点を取る」って、なかなかできることじゃないと思うのだ。
その理由として通年安定した気候もあると思うけれど、この地に繁栄をもたらしてくれた(植民地だったという立場は一旦別として)チャノキのDNAのポテンシャルと何か関係があるのではないか、と私は思ってしまう。
もちろん当時からそして今でもチャノキの品種改良は進んでいて、同じ茶樹ではないだろう。でも、当時の人間の切なる願いに応えるチャノキの祖先のたくましい力とキャンディーの土壌との間に何かこの穏やかな安定感を生む秘密があるように感じる。

フルーツティーにも相性がいい

なんだか、紅茶の特徴を話すよりもキャンディーの土地について多くを割いてしまったけれど、実はこのキャンディーはウッディーさとフルーティーさを両立した香りと味わいがある。
淹れ方、使い方次第で本当にアレンジが利くのもいいところ。
ハーブやフルーツとも合わせやすいし、和菓子とも私は合わせる。
BOPとOPでもメーカーによって味の狙いが違うし、少しドライな風味もするのでナッツとも相性がいいと思う。
個人的に表現するなら、キャンディーは「懐の大きいセイロンティー」。
仏歯寺と湖畔の風景を思い出しながら、仏さまにも見守られているせいではなかろうかと思ったり。
市街地から少し足を伸ばして、今度行くときは茶畑にも紅茶の聖地ルーラコンデラにも行ってみたい。


キャンディー湖畔の朝

可もなく不可もなく、、、なんて言わないで機会があれば、ブレンドしていない「シングルオリジンティー」でもキャンディーの懐を感じてみてほしい。
製法や茶園によって、近年は本当にフルーティーで甘味も感じられる蜜香のような紅茶も出会える時があるから、そうした出会いも面白いと思う。

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