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日々是紅茶⑪「ヌワラエリヤとはじめての花」

「せっかくなので、香っていって~^^」
小さなピンクの花が咲く地面を手のひらで優しくなでながら、彼女は笑顔で言った。
彼女にならって私も手のひらをかざして、その草花の上を左右に往復させてみて手を香ってみたら、なんとも言えないとってもいい香り。
お香の香りにも似た、甘すぎず清々しい香りが手の内側にしっかりと移っている。
植物のもつ香気成分とは、なんとたくましく。
「これはイブキジャコウソウといってね、2週間位の間しか咲かないから、今ちょうどいい時期なのよ~」
とのこと。
初めて出会う植物だった。
見た目は控えめで、花を付けていなかったら普段は他の草に紛れて見過ごしてしまいそうなくらい小さな葉っぱの群生。
だけれど、手をかざせばこんなにいい香りのする植物とは。
ピンク色の小さな花は、お米の粒2粒分くらいの大きさ。
よく見るとめしべの長いシソの花のような形をしていて、その見た目からは想像できなかった、強い芳香を放っている。
ただ地面に這うタイプのようで、自分がしゃがみこんで近寄って初めて分かる香り。
調べてみたら、「和製タイム」とか「百里香」と呼ばれていたりもする。
百里にまで届くほどの香りということか。
そもそも「麝香(ジャコウ)」とは、香水などに使われているムスクのことだから、それほど香りが印象的な草花なのだと納得。
(正式には、草ではなく低木だそうで、茎のように見える部分は茶色く少し硬くてなるほど柔らかい枝といった感じ)
「イブキ」とは滋賀と岐阜に跨る「伊吹山」に多く自生していることから名付けれたとか。
ちなみに伊吹山は、小倉百人一首にも「伊吹のもぐさ(ヨモギ)」が出てくる位、薬草の宝庫でもあり、多様な植物が自生する美しい山なのだそうだ。

この花に出会って、いつか訪れてみたい山の一つになった。

さて、このイブキジャコウソウ、薬草でもあり、別名通りタイムのように使うことが出来るそうで、彼女から分けてもらった株から、早速少し葉と共に摘んでお茶に浮かべてみた。
小さなお花をひとつ浮かべただけで、本当にふわりと高貴な香りが立ち上る。
一気に紅茶の雰囲気が変わる。程よいアクセントになる。
今回は前回の記事で取り上げたスリランカの紅茶、ヌワラエリヤで試してみた。
もともと紅茶自体が青々としたグリーンノートなタイプのヌワラエリヤだったので、まるで高原にいる気分。
ヌワラエリヤも標高が2000m付近の高地産地なので、より相性がいいのかもしれない。

(「ヌワラエリヤ」の特徴については下記でも取り上げているのでよかったら参考まで)

https://note.com/ho_mi_mi_/n/n91c7200119ce

この時期だけの楽しみ方になりそうだ。
もう少し花が咲いたら、誰かとこの香りをシェアしてお茶会がしたいな。





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