見出し画像

お茶は遠いアジアの国から来る神秘~薬か飲み物か?~

前回、スリランカ人と日本人は紅茶を飲む理由が違うらしいという話をした。

お茶がヨーロッパの上流階級の人たちにも飲まれるようになった当時、お茶は、はるか遠いアジアの国から来る神秘の飲み物だった。
もちろん贅沢品で、東洋趣味として器も含めて茶を飲むこと自体が豊かさの象徴にもなり、自慢げにもてなす当時の様子が絵画にも残っている。
けれど、どんどん裾野を広げていったきっかけとして、コーヒーハウスでのお茶の販売があった。その当時のお茶の宣伝は、まさにあらゆることに効く薬のような飲み物。(悪夢にも効くとか!?)

そもそも紅茶の健康効果は、お茶の木そのものの成分として、緑茶やウーロン茶と重なる部分もある。
けれど紅茶は、発酵の過程で複雑な化学変化を起こすことで、紅茶独自の成分が生まれて、色味や香り、美味しさが引き出されるのだが、そのうちの成分がまたいい働きをするのだ。

紅茶ならではの色と香りにはお茶の妙技がある

さて、前回スリランカ紅茶局で購入した冊子でも大体的にアピールしていたという健康効果。
具体的にはどんなものがあるだろうか。

まずは、ざっくりとどんな健康効果が紹介されているか大まかに引用してみる。(参照:「Tea for Health」 The Tea Research Institute of Sri Lanka)
*あくまで私の和訳要約

①ほぼノンカロリー且つ高血圧への貢献
②カフェインやポリフェノール類の薬理学的な効果
③抗酸化作用によって心臓病やがん発症予防、または細胞の老化予防
④口腔内の健康維持
⑤糖尿病への貢献
⑥免疫システムへの効果
⑦腸内細菌バランスへの効果

と、沢山列挙されている。
お馴染みの健康効果もあるが、近年の研究でより明らかになってきたものもあり、とても興味深い。
それぞれが別の作用をするというよりも、根本的な原因へのアプローチによって繋がっているようにも捉えられる。

なにはともあれ、「チャノキ」という植物が私たちに与えてくれている恵みは美味しいだけではないのは確かなようだ。
どんな植物でも、薬となり毒となることはあり、本当に使い方次第。
(しつこいけれど、いつも私が指針にしているアーユルヴェーダの考え方そのものだ。毒をもって毒を制する薬として使われるハーブだって世の中にはいくつかある)

流れゆく雲間の茶畑 ウバ

「チャノキ」から作られるお茶の成分には、お馴染みの苦味の成分「カフェイン」も含まれている。
カフェインは、適度に摂取すれば新陳代謝や消化を促進したり、疲労回復、覚醒作用があると言われている。
けれど過剰に摂取すれば、大脳の中枢神経や胃腸を刺激しすぎてしまい、悪影響をもたらすこともある。そしてカフェインには中毒性の一面もある。
ここで一つのデータを引用してみる。
例えば、コーヒーの豆10gに150㎖のお湯で抽出したコーヒー液のカフェインの含有量は60 mg/100 mL。
それに対して、紅茶を茶葉5 gに360 mLの熱湯で1.5~4 分浸出した紅茶液には30 mg/100 mL。
(参照:農林水産省HP)
紅茶の方がカフェインの含有量は多いという説もあるが、このデータをみると実際に飲用することを想定した際には、紅茶のカフェインはコーヒーと比べると半分位ということになる。
そのせいなのか、体感的に紅茶は中毒性が低いと感じる。
私自身も、実際のところ、お茶(特に紅茶)が好きでほぼ毎日飲んでいるけれど、「一日に一回は必ず飲まないと気が済まない!」といった禁断症状は出たことが今のところない。(人にもよるかもしれないけれども)
なにかの予定により、数日間紅茶が飲めなくても、直接的に不快な症状は出ない。
「チャノキ」が歴史的にひとにたくさんの恩恵を与えてきたにも関わらず、ひとを依存させない植物という点が、私にとってとても魅力的に映る。


若芽を摘んでも芽吹く力強さ。常緑樹では珍しい透明感

お茶の起源でもある中国に伝わる神話の中で、神農は食べられる植物と食べられない植物を自ら食べて見つけていったとされているけれど、そこで毒に当たった際には、茶の葉をかじって毒消ししたと言われている。
神話とは言え、紀元前からの言い伝え、その歴史2000年以上。
「チャノキ」そのものがたくましい生命力を持つだけでなく、その力を人にも惜しみなく分け与えて尚生き続ける本来長寿の木。

紅茶独自のそれぞれの成分と健康効果の関連性については、ここでは書くと長~いカタカナ用語の列挙に??となるので、ご興味のある方に向けてまた別の機会に。

ひとまず、数ある飲み物の選択肢の中で、健康を意識しつつ紅茶を選ぶという選択肢もあってもいいなと思ったので、紹介してみた。

美味しいから入っても良いし、健康志向から入っても良い。
チャノキの魅力に惹かれたからも、またなお良し。
一緒に紅茶の世界にはまりませんか?
というお誘いなのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?