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「おおきな木」の訳について

ぼくがいちばん好きな絵本は「The Giving Tree」。邦題は「おおきな木」。みなさんご存じの名作です。

あらすじ:少年と木はいっしょに遊ぶ仲良し。でも少年が大人になるにつれて木から離れていき、たまに帰ってきては、果実や葉や幹をすべてもっていく。最後に木は切り株になってしまう。でも、木はそれでも幸せだった。という慈愛を描いた話。

で、びっくりしたのが、この訳は旧訳と新訳(村上春樹)があって、ボクにとっていちばん大切な1行が、全然違う訳になっているのです。※ちなみに2010年から新訳版

“And the tree was happy…but not really.”

旧版
「きは それでうれしかった だけど それは ほんとかな。」

新版
「それで木はしあわせに なんてなれませんよね。」

えーーーー!なんでーーー!
たしかに新版が正しいのかもですが、ぼくは圧倒的に旧版が好き。というか、むしろこの「だけど それは ほんとかな」のためにこの絵本読んでいたのに。まぁ新旧版いずれも、締めくくりは「木はしあわせだった(うれしかった)」と、ほっこりエンディングなので伝わることは同じなんだけど。

葉っぱも幹も子にあげてしまって、老いぼれて切り株になって、それでもよかった。その満足をもって木は死んでいく。その幸せ。子どもに読み聞かせる時は「ほんとに幸せだったのかなー?」と問いかけたりしたけど、そんなことは1ミリもわかってもらえなくてよくて、どっちかというと自問自答の味わいの1行。

というか原版の「but not really」を「だけど それは ほんとかな」と訳した旧訳の翻訳者、最高すぎるな。カフェラテでもおごってやりたい。2杯おごってやりたい。

ちなみに、このめっさええ話書いた原作者シェル・シルヴァスタイン、裏表紙みたらなかなかのギャップ。

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