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インタビュー:非営利ソーシャルセクターの監事の役割とは? Vol.1

 多くの団体では、監事の役割が単なる形式的なものに留まっているかもしれません。1年に一度、会計書類に目を通し、ハンコを押すだけと考える方もいるでしょう。しかし、非営利ソーシャルセクターにおいて、監事の果たすべき役割は非常に大きく、組織の信頼性や持続可能な発展に直結します。  
 北海道NPOサポートセンターでは、この間、札幌弁護士会と連携し、NPO法人の監事の職務や役割を検討してきました。その中で、NPO法人で活動する皆さんにとって、「監事って結局どこまで何をするべきなの?」ということが、よくわからないということが見えてきました。監事が実際にどのような業務を行っているのか、監事の職務とその重要性を改めて見直し、実際の現場での取り組みを明らかにするために、非営利ソーシャルセクターで実際に監事を担っている方々にインタビューしてみました!

 第1回目は、札幌弁護士会「札幌弁護士会NPO支援・協働プロジェクトチーム」のメンバーとしても活動している、弁護士の亀田成春さんにお話をうかがいました。亀田さんは、現在、社会福祉法人札幌肢体不自由福祉会の監事を務めています。(以下、インタビュアー:I、亀田氏:K、と表記)

(2024年7月5日、亀田成春弁護士事務所にてお話をうかがいました。)

I:まず、亀田さんが監事をされている「社会福祉法人札幌肢体不自由福祉会」について教えてください。
K:「社会福祉法人札幌肢体不自由福祉会」は、「社団法人札幌肢体不自由児者父母の会」が運営していた直営作業所の事業を、公共性を持ち経営の継続的な安定のため、平成23年に事業を継承し、社会福法人として新たにスタートしております。
障害があっても普通に生きていくことができるように、まだ制度が何もない処から活動を始めてきており、その理念として「利用者本位の運営」と当事者団体だからこそできる「思いを形に」を忘れずに事業を行っており、現在に至っております。
なお、「社団法人」は事業の継承により解散しましたが、新たな活動の拠点として平成24年に「NPO法人札幌肢体不自由児者父母の会」を発足し幅広い活動を展開しています。

I:亀田さんは監事としてどのような活動をしているのですか?
K:法人としては、監事は業務監査担当と会計監査担当の2名を置いています。私は会計監査を担当しており、年に4回、四半期ごとに会計監査を実施しています。また、年に2回の定例の理事会や臨時の理事会、社会福祉法人として設置している評議員会にも出席しています。

◆公平公正な第三者としての視点
I:会計監査の具体的な方法について教えてください。
K:事務所に伺って、大体1回あたり2時間程度、財務帳簿類や帳票類を確認します。基本的な財務帳簿のチェックは会計事務所が行っていますので、私は貸借対照表や損益計算書、試算表に基づいて法人の財務状況について事務局長や経理担当者の方から説明してもらいながら監査を進めています
監事の監査チェックシートというものを共有してもらい、初回は事務局からそのシートについての説明してもらいました。会計監査のチェックシートとしては、相当の項目にわかれていて、それぞれチェックポイントが書かれています。監査も慣れてくると、「ここはもういいかな?」と考えてなおざりな監査になってしまわないよう気を付けなければならないと考えています。また、法人の内部からは気付きづらかったりする問題について、監事が第三者として指摘することができる場合もあると思います。

I:会計監査にはどのような難しさがありますか?
K:会計監査は専門的な知識が要求されます。私は弁護士ですが、会計に関しては専門外です。会計に関する基礎的な知識は持っていますが、日々勉強しなければならないと感じています。

I:監査の際に特に注意している点はありますか?
K:社会福祉法人はいろんな意味で法令の定めに従って運営することが求められているので、コンプライアンスの点などについて、第三者として、公平公正な視点を期待されていると思っています。

◆法人の成長と信頼性向上に繋がる監事の職務
I:今後、監査を通じてどのようなことを目指していますか?
K:社会福祉法人としての適正な運営をサポートすることが第一です。また、監査を通じて法人の透明性を高め、信頼される運営を目指していきたいと考えています。公正な監査を行うことで、法人全体の健全な発展に寄与できればと思っています。

I:最後に、読者へのメッセージをお願いします。
K:第三者が公平公正な視点を持って関わるということは、やはり法人自体の成長につながることだと思っています。また、法人の信用性、信頼性を高めることにもつながると思います。監事の役割を形式的なものにせず、運営に活かすという観点でぜひやっていただければと思っています。


 札幌弁護士会との会合では、監事のなり手がいない、というNPO法人の悩みについて、NPO法人の理事が他の団体の監事になるなどの仕組みをつくれれば、NPO同士のつながりや人材育成につながるのではないか、という話をしています。今後も、非営利ソーシャルセクターの監事の役割と職務について、検討していきたいと思います。
 「監事になってしまったけれど何をすればよいかわからない」「監事を紹介してほしい!」「ウチのはオススメ!」などございましたら、当センターまでぜひ教えてください。
 

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