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カスタマーサクセスがもっとスケールする、セルフサクセスのはじめかた

こんにちは。freee Success Advent Calendar 2021 22日目担当のhinakoです。

2020年5月から、ユーザーがセルフサクセスできる仕組みを考えています。

そもそもセルフサクセスとは

コンテンツやプロダクトUIを使い、セルフでプロダクト活用をできるユーザーさんを増やす活動です。人を介しての導入支援には限界があります。人的なサポートがなしで、ユーザーがプロダクトを使いこなせる状態を作るのがセルフサクセスの役割です。

セルフサクセスチームでは、①PMと協業したプロダクト改善 ②コンテンツ改善を組み合わせ、全てのユーザーが使いこなせる世界を目指しています。

セルフサクセスに取り組むまで

2020年5月、マーケティングを担当していた私に「churn(解約)を減らしたい」というお題が降ってきました。

ユーザー数を考えると、全ユーザーに人を介した導入支援を行うことは不可能だったため、セルフでユーザーがサクセスできる仕組みを作ることは必須でした。しかし、世の中で語られるカスタマーサクセスは、ハイタッチの取り組みが多く、セルフサクセスの文脈では参考にできるものが少なかったので、苦労しました。

ということで、今回は、着任から1年弱の取り組みのプロセスを書いています。迷えるセルフサクセス担当者の役にたてれば嬉しいです。

1.解約理由を分解する

サクセス施策のターゲットを明確にするため、最初に解約理由の分析を行いました。解約理由によっては、サクセス施策では解決できないものもあります。誰のどんな課題を解決するのか?を明らかにします。

定量分析では、解約の発生時期・解約しやすいユーザー属性・解約理由の3つを見ていきました。

解約理由の分析には、退会アンケートのデータを使いました。アンケートの設計にもよりますが、退会アンケートを見ると、防げたchurnと防げなかったchurnの割合を知ることができました。もしこの段階で、プロダクトの活用も十分で、満足もしていたがchurnしたケースが多い場合は、セルフサクセス施策の改善が難しいです。予め、この割合を明らかにしておくと、セルフサクセス施策のインパクトと影響範囲がざっくりわかります。

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定量分析で、サクセス活動で救えそうなchurn・救えなそうなchurnの傾向を把握したら、定性インタビューで検証すると安心です。

2.サクセスまでの理想のジャーニーマップをつくる

サクセスすれば救えた層の割合が見えてきたら、この層が「契約→正しく使えるようになる」までの理想の流れをジャーニーとして整理します。

細かいユーザーのつまづきを調査する前に、理想的なジャーニーを整理しておくのが個人的にオススメです。ジャーニーをつくる時は、個別の操作だけを順番に並べるのではなく、操作を行うために必要な周辺の「理解・判断・準備」が一緒に整理しておくと、後に実施する定性調査の理解が深まります。

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なぜかというと、Aを理解しないととBができない、など操作の成功可否に大きく影響をあたえる周辺要素があるからです。例えば「2000km離れた場所に24時間以内に移動する」というお題をクリアするには「飛行機という交通手段を知っている」という前提理解がないと成功確度は下がると思います。

Bという操作ができない、というつまづきがあった時に、Bができていないのではなく、Aが理解できていないから結果としてBが理解できてない、という因果関係を見つけるためにも、先にジャーニーを整理した上で、つまづきの深堀りをするのがオススメです。

例えばfreeeの場合、「口座振替」というA銀行からB銀行にお金を移動する時の操作があるのですが、「口座振替」を正しく行うには「口座」というfreee独特の概念を理解が重要です。ジャーニーでは、操作を点で繋げるのではなく「口座の概念の理解」という理解する項目も一緒に整理していきました。

ジャーニーをつくる時は、導入支援チームやサポートのメンバーへのヒアリングと、導入支援の同席が役に立ちました。特に、導入支援の同席は、強くおすすめします。導入支援の全体の流れや、ユーザーさんの質問などの情報は、施策を考える時に役立ちます。実際に自分が導入支援をやってしまう、というのも良いです。


3.つまづきの全体像を把握する

理想のジャーニーが整理できたら、ユーザーがつまづいているポイントを把握します。

これは、定性インタビューを中心に洗い出しをしていきました。問い合わせを見れば定量で傾向を見ることもできますが、どんな業種で経理経験がどれくらいのユーザーさんなのか?どんな時にそのつまづきに至ったのか?解決しようとして他にどんな努力をしたか?など細かい背景情報にかけます。定性インタビューを実施するのがおすすめです。定性インタビューで抽出したつまづきを補強するデータとして問い合わせ分析は使いました。

つまづきを把握すると書きましたが、つまづいたユーザーと・つまづかずに順調にジャーニーを辿れたユーザーの両方にインタビューを行うと理解が深まります。つまづかないパターンの解像度があがると、つまづくパターンの解像度が一層あがるからです。

例えば「Aという操作に対して、BさんはできているがCさんはできてない」という時、BさんとCさんの違いとして、"簿記の基礎知識"があったします。この場合「Aという操作をするには、簿記の基礎知識が重要だ」という仮説を立てることができます。複数のインタビューの中で「簿記の基礎知識の有無で操作の成功率が変わる」ということが見えてくれば、簿記の基礎知識はAの操作の成功率を高める上でとても重要といます。

実際、定性インタビューを通して、ITツールを使う頻度や会計の知識度合いなど、プロダクト上の行動データからはわからないけれど、サクセスの可否を分ける要素が見えてきて、とても学びになりました。

4.セルフサクセスで救うターゲットを決める

ここまで、①理想のジャーニー②づまづきの全体像③つまづきやすいユーザー属性とその理由、がなんどなく見えてきているはずです。全ユーザー属性の全てのつまづきを救うことはできないので、次に、ペルソナとセルフサクセス施策で救う範囲を決めます。逆に言えば、セルフサクセスでは解決をめざさないペルソナやつまづき明らかにする、ということです。

解決しない範囲を明らかにすることで、施策を行う上でのサービス設計の方針や、コンテンツ制作の範囲が自然と決まります。ユーザー属性 X つまづきの2軸で、ここはプロダクト、コンテンツ、ここはサポートというように、おおまかに範囲を決めていくイメージです。

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この作業で、ある程度セルフサクセス施策で課題解決をめざすスコープと全体方針決まります。freeeの場合、会計処理が複雑な業種はハイタッチ、ある程度操作理解が進んだ後のつまづきはヘルプページとサポート、という切り分けをしました。

結果、セルフサクセス施策として行ったガイドサイトの制作では「詳細説明はなるべく減らし、操作の全体像の理解を最も重要なゴールとしよう」という方針がサクッときまりました。

もし、このあたりで具体的な施策案がでて来ていれば、ミニマムで制作して、ターゲットとするペルソナがサクセスできそうか?を検証してみても良いかもしれません。

5.サクセスを可視化する指標をつくる

最後に指標づくりです。最後であり、最難関でした。churn rateを直接指標とすることもありますが、効果測定まで時間がかかるケースが多いです。また、サクセスしてもchurnしてしまう層が一定存在するプロダクトの場合は、セルフサクセスの"施策"の指標としてはchurn rateがそぐわないこともあります。(=施策は成功しているのに、churn rateには直接現れない事がある)

効果計測まで時間がかからず、churn rateと相関が高いちょうどよい指標が見つられると素敵です。freee会計の場合は、プロダクトの活用を7段階にわけ「X日時点でStage5に到達した率」を見ています。追いやすい期間かつ、churn rateへの改善インパクトが最も大きかったからです。この分析には、Analyticsに協力してもらいました。

ちなみに、この7段階の活用Stageは"この操作を行わないと正しくプロダクトを使えない"という必須項目のみに絞って設計しました。機能が多いプロダクトでは、これもやってほしい、あれも活用してほしいとなりがちですが、オプショナルな機能(=最悪使わなくても正しくプロダクトを使える機能)をStageに含めてしまうと、計測が複雑になります。絶対これをしないとchurnしてしまう、という要素に絞って、初期は設計すると良いのでは、と思っています。

サクセスは総合格闘技だ

ここまで長いことお付き合いいただきありがとうございました。1年の軌跡をつめこんだら、なんともボリューミーになりました。サクセスを意識できていません。

最速でカスタマーサクセスを伸ばすためには、プロダクト改善だけでも、コンテンツ改善だけでも、導入支援改善だけでも不可能です。すべての掛け合わせでしか実現しないと思っています。

最後に指標のことを書きましたが、組織横断で同じ指標を追えるよう、設計段階から色んな人を巻き込んで進めていくと良いのでは、と思います。組織構造にもよりますが、サクセスのためのプロダクト改善は「1つの機能」にとどまることは少なく、複数の画面や機能にわたる事が多いです。複数の開発チームと一緒に改善を頑張ることになります。密に関わりそうなチームは設計段階から巻き込んで、なるべく共通の指標を一緒に追えるにすると、スムーズに取り組みが進むのではと思います。

セールス・マーケティング・Growth Hackなどのチームを経験しましたが、セルフサクセスは最も味わい深い世界です。まだまだ、やれていないことは沢山あるし、もっと面白い世界も見えかけています。

メンバーも募集しているので、少しでもご興味持った方は、是非お話ししましょう!




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