ファンはチームの「+1」

何度も言うが、以下に書くのは野球未経験の女子大生である私個人の意見である。その点を理解できる方のみ、この先を読んで欲しい。

以前の投稿で、今シーズンのファイターズを振り返る内容を長々と綴ったが、今回は我々ファンについて書いてみたいと思う。
その前に、そちらをまだ読んでいないという人は、先にそちらに目を通していただきたい。以下にリンクを貼っておく。

今シーズンは異例尽くしだった。
開幕が見送られ、シーズン開幕が決定してもしばらくは無観客での開催、その後観客を入れての試合となったが、上限5000人、シーズン終盤でも最大20000人と制限の中で試合が行われた。
選手たちも滞在先と球場の往復を主とし、外食や外出の制限をかけられた。さらにパ・リーグは、8月下旬まで同一カード6連戦を組むこととなり、選手は多くの負担を強いられることとなった。

ファイターズはシーズン開幕直前、練習が再開されたものの、拠点が鎌ヶ谷になったために、多くの選手が長期のホテル暮らしを余儀なくされた。最初は、久しぶりに野球に触れられることにファンも選手も喜びに浸ったが、次第に元気が失われていった。エースで勝てない、勝ちきれない、相手投手に完全にねじ伏せられる……シーズン序盤、黒星が先行した。

そんな中、チームの希望の光となったのが野村だ。これは以前詳しく書いたから今回は省略するが、彼の躍動は、実にファンを魅了した。あらゆる困難も、彼が来てくれたから乗り切れると、おそらく多くのファンがそう思ったはずだ。
しかし、それは夢のままに終わってしまう。骨折により、野村はチームを離脱。一軍への再合流は、シーズン終盤までお預けとなった。

開幕から1ヶ月が経過し、7月10日から有観客試合となったが、ファイターズは6連戦のうち、良くても星五分。中々勝ち星を重ねられずにいた。曇りがちな選手たちの表情を見て、やるせない気持ちになることもあった。
その突破口となったのは、上沢だった。昨年、左膝を骨折し、長期離脱をした彼の復活は、チームにもファンにも当然、明るいニュースだった。7月28日の本拠地でのオリックス戦に先発し、見事勝利投手となった上沢だが、彼の怪我は前例のないもの。一時は再びマウンドに立つ姿を見られるかも不透明な状況だったが、彼は戻ってきた。マウンドでの堂々たる姿は、昨シーズンの開幕戦を投げ抜いた貫禄を感じるものだった。この試合の勝利を機に、ファイターズは連勝の軌道に乗った。

だが終わってみれば、今季の結果は53勝62敗5分、最終順位は5位と2年連続のBクラスとなった。

何度も言うが、今年は異例の年だった。仕方がないとはいえ、その中でも結果を残した選手、チームがある以上、それを言い訳にすることは出来ない。弱かったから勝てなかった。それだけのことだ。

さて、ここで一つ問いたい。
それは、我々ファンにできることはなにかということである。

私は、チームは選手やコーチ、トレーナーなどのかけ算だと思っているが、ファンの存在は、勝利に必要な「+1」だと思っている。たとえ劣勢でも、それをひっくり返すために、監督をはじめ首脳陣は持てる頭脳をフル回転し、選手は自身の力を遺憾なく発揮する。しかし、それでも足りないもう一押しが欲しい時、ファンの声援がそれを後押しする。だから「+1」なのである。
例えば、2019シーズンの開幕戦。劇的な勝利を収めたことは、皆の記憶に焼き付いていることと思うが、あの場面を思い出してもらいたい。
3-3で迎えた10回裏、先頭の中島卓也がセンターへの二塁打で出ると、続く淺間は犠打を決め、一死三塁の場面を作る。すると、オリックスベンチが動く。西川と近藤を連続で敬遠。この日、無安打の四番中田との勝負を選んだのである。
併殺の確率が高いから、自分との勝負を選ぶに違いないと想定していたとはいえ、2人連続での申告敬遠に、燃えない四番は存在しない。チームバッティングに徹することの多い中田でも、あの場面は一発を狙いに行った。だが、この日の中田は4打数無安打。前を打つ近藤の3打点でチームは同点に追いついたが、あと一点ほしい場面で役割を果たせずにいた。
本人の闘志をさらに燃え上がらせたのは、あの時の球場のボルテージだ。不動の四番、不調でも彼のバットは何度だってチームを救ってきた。誰もが彼を信じ、願った。塁が全て埋まり、球場に鳴り響く「NA・KA・TA!」のコール。その声援の後押しも受けて、打球は左中間スタンドに一直線。ファイターズを愛する全ての人が歓喜に湧いた瞬間だった。

さらに、ファイターズファンには伝統の応援がある。投手陣がカウント3ボールになると、誰かが合図するわけでもなく、ファンは「頑張れ」を込めて拍手をする。そのエールは、応援歌ほど強くないのかもしれないが、確実に選手を鼓舞している。これこそ、ファンもチームの一員「+1」であることの証明ではないか。

我々ファンのエールがチームに好機をもたらすように、ファンの厳しい目もまた、チームを強くすると感じている。失策ばかりをする選手を、大事な場面で三振しかできない選手を、「仕方がない」「次があるよ」と言うのは、甘えではないかと私は思う。「そういうミスをするからファンが離れていくんだぞ」くらい、厳しい目を持ったっていいじゃないか。我々はお金を払って試合を見に行く。そのお金は無限じゃないから、当然その価格に見合った、価値ある試合を観たい思うのは当然の権利ではないか。お粗末なプレー、早すぎる攻撃の終わりを見せられて喜ぶファンはいないだろう。良くないプレーには喝を、その分、最高に感動させられた場面では大喝采を。これが、ファンによる選手への激励であり、愛情であると思う。ファンがチームの「+1」だからこそ、私たちの厳しい目も、チーム強化に必須ではないだろうか。

応援をすること。
チームや選手を信じること。
時には厳しい目で、現実と向き合うこと。

一度、自分に問いかけて欲しい。なぜ、ファイターズを好きになったのか。推しの選手ができたからだろうか。堅実なプレーに惚れたからだろうか。奇策とも言える、ワクワクする試合に興奮したからだろうか。
では、今あなたの好きなファイターズは、そこにあるだろうか。あると答えられるなら、変わらずずっとファイターズを愛して欲しい。違うと思うのならば、何が違うのか。何が変わってしまったのか。それを考えて欲しい。その変化は、ファイターズを愛さない理由になるだろうか。違うなら、ファイターズが常勝チームへ蘇るために、力の限りその声を、言葉を届けて欲しい。
だって我々は、チームの「+1」なのだから。我々ファンも、チームを作る大事な存在だからこそ、愛ある鞭も時には必要だと思う。

今オフのうちに、ファンも野球の目を肥やし、来シーズンへ備えるのもアリなのではないだろうか。

だが、忘れてはいけないのは、選手もチームも、同じ人間だということ。誹謗中傷をすることと、愛ある鞭の言葉をかけることは別である。言葉は刃となり、簡単に人を傷つける。その傷は見えないからこそ、言葉を選ぶ必要がある。

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