運動会の中継でBGMの著作権まで議論したくない

この時期に運動会的な事をやろうと思うと、「どうやって人を減らして感染対策をするか」に頭を悩ませることになります。この流れで運動会を中継して参加を減らす事も必ず必要になるのですが、意外と色々ありました。。

運動会はライブ中継をしてみたい

近隣校でも運動会の中継などはやっていたのと、PTAが出来る活動はほとんどなかったので、PTAでライブ中継をする、と言うのは自分の中ではごく自然な発想で考えていました。

ライブ中継をする場合には大きく3つのパターンがあると思います。

1)業者にお願いする
2)Zoom WebinarなどWebinarプラットフォームを使ったり、人数制限を行いながらWeb会議で中継する
3)学校のGoogle Meet などの基盤で中継する (子供の端末またはアカウントで保護者は閲覧)

1)の場合確実に出来ると思いますが、ここで3−40万円かけてしまうと、卒業式や入学式も中継したい、と言う話になったときに金銭的な理由で出来なくなるのであまりやりたくないと思いました。それとコロナ2年目であるにもかかわらずこれだけ大きな出費を予算化していない中で予備費などでこれだけ大きな額を使うのも個人的には少し抵抗がありました。
3)は子供の端末で中継するの?とか環境面での制約が大きそうな気がしたのと、保護者の資材とかを持ち込んで補ったりすることが出来なかったのでやりにくそうな気がしました。

なので、何とか2)の案で出来そうだな、と思ったのです。
多少回線や音声の問題などが出るかもしれませんが、Zoomのアカウントをどうにかして、カメラはiPhoneでもいいから3人くらい用意してスピーカービューにして音声を切り替えながらやれば・・・と。学校側に負担を掛けるわけでもないし、当日手伝ってくれる人などは3−4人もいればいいのでボランティアでも集められるかな、、と。

運動会のライブ中継は自前でやっているところは近隣校でも色々とトラブルに遭った話は聞いているのですが、それも含めて経験しておかないとどのくらいの期待値でどのくらいの大変さなのかも分からないので一歩も前に進めない、という危機感もありました。

意外と乗ってこない

委員の中で話してみたところ案外反応が鈍く、こんな感じのリアクションでした。

1) 今年は会長がやっているからよいが引き継ぎ先なども曖昧で次年度に続けられない
2) 保護者の訪問を減らすためにやるのであれば学校が主導してやるべき
3) 音声などもちゃんと聞こえないかもしれなくて、自分の子が映るかも分からないのであれば見る人がいなそう
4) 業者に録画してもらったやつを見たい

正直こう言うのが苦手な委員もいたので、何かお願いするつもりもなかったのですが、ちょっと自分の見通しが甘くて調整不足な雰囲気になってしまいました。学校に頻繁に行けていれば一人一人の感触なども先に聞いて回れたのですが。。。

もう一つの意外なリアクション ー 著作権

実はこの件よりもちょっと前に先生方とICT活用の話をしているときに軽く積極的に活用している教員(要は細かい話も通じる)なども交えて話したことがありました。

そのときには保護者がやってくれる分にはいいのではないか?みたいな見解だったものの、懸念点として挙げられてびっくりしたのが、「運動会の中継とか録画って著作権料払わないといけなくなるのでややこしいのですよね」と言う話でした。

元々運動会のBGMは教育目的としての利用であれば大丈夫で、運動会のスピーカーのように物理的に範囲が制限されている場合には問題がないようですが、インターネットに載せたり録画して配布したりすると「公衆送信」になるので著作権料が発生する、と言うような話でした。

多数の学校で同様の試みがすでに行われている以上これで中止にするような大きな問題では無いことは間違い無いのですが、本当だったら厄介だな・・・と思って調べていたのですが、結構ホットトピックだったようで、文科省のホームページに回答が載っていました。

以下、抜粋します。

運動会のBGMについて(文部科学省 ホームページより)

問6 運動会の様子をオンラインで配信する際にBGMとなる音楽の著作権の取扱いについて
(音楽の演奏をインターネットで配信する場合)
○  著作権法上、楽曲をインターネットで配信するには、原則として著作権者の許諾を得る必要がありますが、学校等の非営利の教育機関において、授業の過程において他人の著作物をインターネットで配信する場合は、教育機関の設置者が文化庁の指定管理団体「一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)」に一括して補償金を支払うことにより、一定の条件の下、著作権者の許諾なく利用できます(著作権法第35条)。
 ただし、これは「必要と認められる限度」において行うことが求められ、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は別途著作権者の許諾が必要となります。

○  したがって、楽曲等の著作物を含む運動会の様子の配信は、教員、児童生徒、保護者といった必要な範囲に限定することが必要であり、受信者がダウンロードし拡散する懸念が生じないよう、リアルタイムでのストリーミング配信などの手法により行うことが求められます。

ついでに一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS) のWebサイトも引用します。

改正著作権法第35条運用指針

②「公衆送信」
該当する例:
・学外に設置されているサーバに保存された著作物の、履修者等からの求めに応じ
 た送信
・多数の履修者等(公衆)への著作物のメール送信
・学校のホームページへの著作物の掲載
・テレビ放送
・ラジオ放送

④授業
該当する例(抜粋)
・初等中等教育の特別活動(学級活動・ホームルーム活動、クラブ活動、児童・生徒会活動、学校行事、その他)や部活動、課外補習授業等 ・教育センター、教職員研修センターが行う教員に対する教育活動 ・教員の免許状更新講習 ・通信教育での面接授業1、通信授業2、メディア授業3等 ・学校その他の教育機関が主催する公開講座(自らの事業として行うもの。収支予算の状況などに照らし、事業の規模等が相当程度になるものについては別途検討する)

キーとなる解釈は「運動会を含む学校行事は授業目的として認められる」と言う点と「ストリーミング配信で保護者と教員と児童だけが入れるような仕組みであれば公衆送信とは見なされず必要と認められる限度と考えられる」と言う点なのかな、と思います。録画したDVDの販売はNGなのか?とかPTA行事ではダメっぽい、とか気になる点は他にもありますが・・・
発言した教員も自分が個人的に冠婚葬祭の録画DVDを作ったときに著作権料の支払いを求められた経験からの話だったので学校利用での解釈までは踏まえていなかったのだと思います。私もピアノ教室の著作権料支払いの裁判などはニュースでも知っていたので言われた時はダメだろうなあ、、と思っていましたし。。

この辺は法律なので文句を言ってもしょうがないのですが、運動会で楽曲を使うこと自体がNGだったら諦めが付くのですが、保護者向けに録画したり、中継したりしただけで突然著作権料が発生してしまうのは少し法律が現状に追いついていない気がしますよね。

もう少し前向きな議論がしたかった

実はまだどうするか決まっていないのですが、個人的には考えたいのはこう言うことではなかったのにな、、という気持ちがどうしても残ります。

そもそも今運動会を中継する意味はICTの活用とかそう言う大義だけでなくて、感染症対策としての意義がもっとも重要です。
 この点では中継をたくさんの保護者に見てもらう必要もなくて、1学年で10人でもリモートから見てもらえれば十分意義があったと言えるので、「私は観ないなあ・・・」とかそう言う話では無いのです。

著作権の話は個人的には興味深いトピックでしたが、他校がやっているならたぶん大丈夫では?くらいのノリで考えてくれてもよかったのに、と思うのです。自分も教育委員会などに問い合わせたらやぶへびだな・・・と思ってためらっていたのも事実ですし、公務員の先生にこう言う考え方を求めるのは無理でしょう、とは思うのでこれはやむを得ないと思っていますが。。

引き継ぎの話にしてもこんなにノウハウが無い状態で引継ぎ先なんて議論出来るわけないのです。一度やって「こんな大変なことを資材も十分に揃えずにPTAで気軽にやるのは二度とやめよう」と言う結論になればよい勉強になると思うのです。「うちの学校もこんな時期なんだから運動会の中継くらいやればいいのに・・」みたいな意見の保護者にもなぜ出来ないのかもっと誠意のある説明が出来るようになると思います。

PTAで新しい活動を始めるとこの引継ぎ方の議論が呪いのように足枷になって議論が進まなくなることはよくあるのですが、「〜と言う新しい活動を始めますがこれは引き継ぎません」と言う考え方でもっと進めてよい気がします。それが保護者にとって本当に有益な活動で評判がよいものであれば何らかの形で続ける方法を考えたい、という話が自然に出来るくらいの熱意を持っている人はいると思っているのですが、まずやってみないとこういう気持ちには決してなりません。

ちょっとリモートであまり腹を割って話せなかったところもあるのですが、意識の部分を揃えることが出来ていないまま話を急いで持ってきてしまったな、と反省しています。

と言うわけでもう少し時間をかけてみます。

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