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さよなら、まるくんⅱ

2ヶ月ぶりのデート、しかも別れ話、しかも自分から振る。そんな大事な日にも集合時間に起きたまるくん。

まるくんとの待ち合わせは、女神がトレードマークのコーヒーショップ。わたしの大好きな店で、3時間待つ間に利用させてもらった。
一番大きなサイズのアイスティーはすっかり氷が溶けていた。それくらい、暑い日だった。

そんな暑さの中、彼はなにの悪気もなく大物有名人のようなゆったりした足取りでやってきた。
いつものコーヒー片手にやってきた彼。席についておはよう、というまた瞬間にはもう泣いていた。
別れ話をされるんやな、と思ったわたしは随分性格が悪い。

「大事な話がある。嫌いになった訳じゃない。好きやけど、別れてほしい。」

嗚咽の混じったその決意の固い声色。素直に恥ずかしかった。
182cmの巨大が泣いているのは良くも悪くも目立つ。なんとも言えない、異様な雰囲気を醸し出していた。
左隣の高校生カップルも、右隣の大学生アベックも、知らないふりをしながらこちらに聞き耳を立てていた。

「好きな人ができたの?」「違う、そうじゃない」
一言話すと10分は号泣する。そんな時間が過ぎて行った。気がつけば、2時間近く会話をしていた。
アイスティーはもうなくなっていた。

「元気でね」、そう言ってコーヒーショップの前で別れた。スキップするかのような軽い足取りで帰って行った彼の背中を、わたしは見届けるしかなかった。

後日談になるが、彼はその日のうちに新しい職場で捕まえたかわいい女の子と付き合った。
付き合う前から同棲していたので、そのうち結婚すると思う。

そんなことをいちいちSNSでわたしに自慢するな、と思うよ。新しい彼女さん。

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