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加齢と試験は相性が悪い

とうとう試験まで1ヶ月を切ってしまったので、さすがに真面目に勉強をしている。
試験の代表的存在といえば大学受験だと思うのだが、現在私が勉強をしているのは大学受験とはだいぶ質が異なるものだ。
具体的には専門医試験と呼ばれるもので、無事合格すると専門医資格が授与される。専門医と一言で言っても色んな種類があり、私は既に1種類取得済みで、今回の試験に合格すれば専門医資格を2つ持つことになる。

専門医に合格すると何が起きるかというと、驚くべきことだが特に何も起きない。持っていても持っていなくても、私のような勤務医の業務には特に支障がない。治療を受ける患者側からしても、専門医の有無は原則診療内容に制限を与えないので、担当医が専門医を1つも持っていなくても、特にデメリットはない(ごく稀に処方に専門医資格を要する薬もあるが、本当にごく稀だ)。

大学受験は合不合がその後の人生を大きく左右する試験だった。医学部に入れなければ医者には絶対になれない。私は実家が飛び抜けて裕福というわけではなかったので、私大医学部などもってのほかで、つまり国立大学医学部の前期・後期試験に落ちれば即医学部への道は断たれることが決まっていた。
下に兄弟がいるので、長女である私はお金のかかる浪人は禁止。一人暮らしをさせるお金はないので実家から通える範囲の大学じゃないとダメ。私の医学部受験は、そういう条件付きだった。多分私だけでなく、同レベルの経済状況の家の子どもは大抵そんな感じだと思う。
条件付きの受験だったので、候補となる大学は自動的に2つに絞られた。そのうちの1つに運よく合格したので何とか医者になる権利を得ることができた。
今振り返ると、自分の人生を左右するほどの大きな試験をたったの17歳の子どもがよく平常心で受けられたもんだなと思う。今の私だったらビビり散らかしてミスを連発し、普通に落ちる気がする。

実際、目下勉強中の専門医試験の勉強は全く捗っていない。受かろうが落ちようが大して自分の人生を左右しないからというのもそうだし、18歳の私と比べて、集中力も記憶力も全てが劣っている。

15分くらい勉強するともう指先がうずうずしてスマホをいじりたくなる。とにかく集中力に欠けており、長時間勉強するということがそもそも全くできない。視界にスマホがあるとつい手を伸ばしてしまうので、勉強中は目の届かない隣の部屋にスマホを置くことにした。それくらいしないと延々Twitterを眺めて大量の時間を溶かしてしまう。

記憶力も明らかに低下している。これは私だけではないと思うのだが、出産を境に明らかに記憶力が低下した。Googleで検索してみると、マミーブレインという言葉が引っかかる。出産を機に記憶力や集中力が低下することがあるそうで、睡眠不足などが原因だそうだ。1年くらいで治りますよ♩などと書いてあるのだが、私の娘はもうすでに3歳だ。3年経っても明らかに記憶力が低下しているのだが、一体どうすれば…と思いつつページをスクロールすると、治らない場合はお医者さんに診てもらいましょう♩と書いてある。

私も一応お医者さんだが、診てもらっても何も原因が見つかる気がしない(これを読んでいる皆さんは自分勝手な思い込みはよして、ちゃんとお医者さんに診てもらいましょう)。出産以外に考えられるのは、考えたくはないが、シンプルに加齢である。こればっかりはどうしようもない。

集中力も記憶力も落ちている上に、加齢で面の皮も厚くなっている。やる気がないなら”専門医試験に落ちたら恥ずかしい”という恥の感情で何とか勉強をしなければならないのだが、30も半ばになるとかかなくても良い恥を既に大量にかいており、多少の恥では全く動じないのだった。

加齢と試験は相性が悪すぎる。かつての上司に”専門医試験は早めに受けといたほうがいいよ”とアドバイスされたことがあるのだが、こういうことだったのかと思う。若くて血気盛んだった頃は試験という戦いのためにいくらでも準備ができたものだが、歳を重ねて丸くなったというか、単に腑抜けてしまっただけのような気もする。しかし、腑抜けにも平等に試験の日は訪れる。あと1ヶ月、なんとか頑張ろうと思います。

Big Love…