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ジル・ドゥルーズ& フェリックス・ガタリ『千のプラトー 資本主義と分裂症』 読書メモ(23)

12 1227年ーー遊牧論あるいは戦争機械④

・遊牧民 の 行程 は 逆 に、 人間 たち( あるいは 獣 たち) を 開か れ た 空間 に 配分 する ので あり、 開か れ た 空間 は 無 限定 で あり、 部分 間 の 交通 も 存在 し ない。

ノモス は 現在では 法 を 意味 する よう に なっ て しまっ た が、 本来 それ は 配分 で あり、 配分 の 様態 を 示す もの だっ た。 しかし それ は 境界線 も 囲い も ない 空間 における 分割 なき 配分 という きわめて 特殊 な 配分 なので ある。


・遊牧民 は 待つ すべ を 知っ て いる。 彼 は 無限 の 忍耐 力 を 持っ て いる。 動か ない こと と 速度、 緊張 症 と 迅速 さ、「 停滞 の 過程」、 過程 として の 停滞、 こうした クライスト に 見 られる 諸 特徴 は すぐれ て 遊牧民 の もの で ある。

それ ゆえ 速度 と 運動 を 区別 する 必要 が ある。 運動 は いくら 速く ても それ だけでは 速度 では ない し、 速度 は いくら 遅く ても、 たとえまったく 動か ない として も 速度 なの だ。 つまり 運動 は 外延 的 で あり、 速度 は 内包( 強度) 的 なので ある。


・遊牧民がすぐれて〈脱領土化した もの〉 と 呼ば れ うる のは、 まさしく 遊牧民 において は 再 領土 化 は、 移民 の 場合 の よう に 脱 領土 化 の 後 で 行なわ れる のでは なく、 また、 定 住民 の 場合 の よう に 他 の もの の 上 に 行なわ れる のでも ない からで ある( 定 住民 は 所有 制度 や 国家 装置 といった他のものに媒介された大地に関係する・・・・)。

逆 に、 遊牧民 にとって は 脱 領土 化 が 大地 への 関係 そのもの を 構成 する ので、 遊牧民 は 脱 領土 化 そのもの において 再 領土 化 する ので ある。 つまり、 大地 そのもの が 脱 領土 化 する 結果、 遊牧民 はそこにこそ領土を見出すのである。


・預言者 たち は 遊牧 生活 を 非難 しよ う と し た し、 宗教 的 戦争 機械 は 移住 の 運動 と 定住 の 理想 を 特権 化 しよ う と し た。

一般 に 宗教 は 世界 の 中心 として の 聖地 を 聖戦 によって 征服 する という 形 で、 脱 領土 化 を 再 領土 化 によって 補償 しよ う と し た。

にも かかわら ず 戦争 機械 として 構成 さ れ た 宗教 は、 恐るべき 規模 の 遊牧 性 すなわち 絶対的 脱 領土 化 を 動員 し、 かつ 解放解放 する ので ある。

そして 戦争 機械化 し た 宗教 は、 移民 を、 彼 に 影 の よう に したがう 遊牧民 によって、 あるいは 彼 が 今 まさに なり つつ ある 遊牧民 によって 裏打ち し、 国家 形式 に対して みずから の 絶対的 国家 の 夢 を 対立 さ せる の だ。

このような反転 は この 夢 と 同様 に 宗教 の「 本質」 に 属し て いる。 十字軍 の 歴史 は 驚く べき 一連 の 方向 変化 によって 貫か れ て いる。 つまり 到達 す べき 中心 として の 聖地 への 方向づけ は もはや 口実 に すぎ ない よう に 思わ れる。

しかし、 私利 私欲 や 経済的・商業的・政治的 要因 を 引き合い に 出し て、 十字軍 は 本来 の 道筋 から 逸脱 し た の だ と 主張 する のは 誤り で あろ う。

なぜなら、 ほか なら ぬ 十字軍 という 観念 の なか には 変わり やすく 非 連続 的 な 方向 の 変化 性 が 含ま れ て いる からで あり、 十字軍 が 宗教 を戦争 機械 と 化し、 これ に 対応 する 遊牧 性 を 誘発 し かつ 利用 する と、 たちまち そうした すべて の 要因 ないし 変数 が 十字軍 という 観念 に 内在 的 に 所属 する こと に なる からで ある。


・つまり、 東洋 の 国家 は 遊牧 的 戦争 機械 と 直接 に 対峙 して いる ので ある。 この 戦争 機械 は 帝国 への 統合 化 の 道 を 進ん で ただ 反乱 と 王朝 の 交替 を 引き起こす だけに なっ て しまう に し ても、 遊牧民 として 国家 廃絶 の 夢 と 現実 を 創り出す のは やはり 戦争 機械 なの だ。

それ に対し 西洋 の 国家 は、 みずからの 条里 空間 の なか で はるか に よく 戦争 機械 から 保護 さ れ て いる ため に、 国家 を 組成 する 諸 成分 を しっかり と 保持 する 余裕 が あり、 遊牧民 が 引き起こし た 移民 あるいは 移民 化 し た 遊牧民 を 介し て ただ 間接的 にしか 遊牧民 に かかわる こと は ない のである。


・こうした現代的戦略 は、 海 から 新しい 平滑 空間 として の 空 へ、 そして また 砂漠 あるいは 海 と 見なさ れ た 地球 全体 へと 及ぼさ れる。

方向転換 器 に し て 捕獲 器 で ある 国家 は 運動 を 相対 化 する だけで なく、 再び 絶対 運動 を 与える ので ある。 国家 は 平滑 から 条里 に いたるだけで なく、 平滑 空間 を 再 構成 し、 条里 空間 の 果て に 平滑 空間 を 再び 与える。

まさに この 新しい 遊牧 性 は、 世界的 規模 の 戦争 機械 を ともなう ので ある。 それ は 国家 装置 を 越える 組織 を もち、 多 国籍 的、 エネルギー 的、 軍事・産業 的 複合体 に 取り込まれる。

この よう な 事実 は 次 の こと を 示し て いる。 すなわち、 平滑 空間 と 外部 性 形式 は 必ず 革命的 使命 を もつ という わけ では なく、 どんな 相互作用 の 場 に 取り込ま れる か、 どんな 具体的 条件 の 下 で 実行 さ れ 成立 する か によって、 極端 に 意味を 変え て しまう という こと で ある( たとえば 総力戦 や 人民 戦争 あるいは ゲリラ でさえも、 おたがいに 戦争 の 仕方 を 学び 合っ て いる という 事実 が ある)。


・ 戦争 機械 は、 可動 的、 自立 的、 方向 的、 リズム 的、 暗号 的 な〈 数える 数〉 として 規定 さ れる 遊牧 民 的 組織 の 必然的 な 帰結 で ある と 言えよ う( モーゼ は それ を みずから 経験 し、 遊牧 民 的 組織 からすべての帰結を引き出すことになる)。


・兵站 術 とは、 こうした 外的 関係 を 扱う 技術 で ある。 外的 関係 は、 戦略 の 扱う 内的 関係 すなわち戦闘 に かかわる 諸 単位 相互 の 組成 と 同じく 戦争 機械 に 属し て いる ので あり、 この 両者 が 戦争 における 数 の 分節 を 扱う 科学を 構成 する ので ある。 すべて の アレンジメント は この よう な 戦略 的 側面 と 兵站 術 的 側面 を 含ん で いる。


・したがって出来事と 情動 の 移動 する 結合 が 存在 し、 漠然と し た 物体 的 本質 を 構成 し、「 固定 し た 本質 と その 本質 から 帰結 する 事物 の 諸 特性」、「 形式的 本質 と 形成 さ れ た 事物」 という 定 住民 的 結合 に 対立 する ので ある。

おそらく フッサール には この「 漠然と し た 本質」を、 本質 と 感性 的 な もの との あいだ、 事物 と 概念 との あいだ の 中間 的 形態、 いわば カント の 図式 の よう な もの に しよ う と する 傾向 が あっ た。


・冶金 術 の 場合 ほど 形相 と 物質 が 硬く 固定 し た もの に みえる こと は ない。 しかしながら そこ では さまざま な 形相 の 継起 に、 連続 展開 する 形相 が、 さまざま な 物質 の 変化 に、 連続 変化する 物質 が とっ て 代わろ う と する。

冶金 術 が 音楽 と 本質的 な 関係 に ある のは、 ただ 単に 鍛冶屋 の たてる 騒音 の ため では なく、 両者 を 貫く 傾向、 つまり た がい に 分離 さ れ た 形相 を 超え て 形相 の 連続 展開 を 際立た せ、 変化 する さまざま な 物質 を 超えて 物質 の 連続 変化 を 優先 さ せる という 傾向 の ため で ある。

拡大 さ れ た 半音階 法 が 音楽 と 冶金 術 を 同時に 突き 動かし て いる。 音楽家 として の 鍛冶屋 は 最初 の「 変形 者」 で ある。


・鍛冶 師 は 遊牧民 でも 定住 民 でも なく、 巡行 する 者、 移動 する 者 で ある。 この 点で とりわけ 重要 なのは 鍛冶 師 の 住み 方 で あっ て、 彼 の 住む 空間 は 定 住民 の 条里 空間 では なく、 遊牧民 の 平滑 空間 でも ない。

彼 は テント や 家 を 所有 し て いる かも しれ ない が、 あたかも それら が 金属 の「 鉱床」 で ある かの よう に、 つまり 洞窟 や 洞穴で ある かの よう に、 半ば あるいは 完全 に 地下 に 埋まっ た 小屋 として そこ に 住む ので ある。 鍛冶 師 たち は 生まれつき では なく、 必要 と 技術 に 迫ら れ て 穴居 生活 を し て いる 者 で ある。


・ゲリラ や 少数 者 の 戦争 や 民衆 の 革命 戦争が 戦争 機械 の 本質 に 合致 する のは、 これら の 戦争 が、 代 補 的 で ある が ゆえに いっそう 必然的 な 目標 として 戦争 を とらえ て いる からで あり、 同時に 他 の 何 かを、 たとえ それ が 新しい 非 組織的〔 非 有機 的〕 な 社会的 関係 でしか ない として も、 同時に他 の 何 かを 創造 する という 条件 で のみ 戦争 を 行なう からで ある。

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