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カール・マルクス 著『資本論 』    第一巻 第六篇 第十七章、第十八章、    第十九章、第二十章 読書メモ

カール・マルクス 著『資本論 』読書メモ(1)~(172)をすでに投稿済ですが、第一巻 第六篇 第十七章、第十八章、第十九章、第二十章に目次をつけたものを再掲載します。


第一巻 資本の生産過程

第六篇 労働賃金 

第十七章 労働力の価値または価格の労働賃金への転化

ブルジョア 社会 の 表面においては、労働者の賃金は、労働の価格として、一定量の労働にたいして支払われる一定量の貨幣として、現われる。

ここでは労働の価値ということが言われ、この価値の貨幣表現が、労働の必要価格、または自然価格と呼ばれる。他面では、労働の市場価格、すなわち、その必要価格を上下して変動する価格が論じられる。

しかし、商品の価値とは何であるか?

その生産において支出される社会的労働の対象的形態である。

また何のよって、われわれは商品の価値の大いさを測るか?

その中に含まれる労働の大いさによってである。

しからば、たとえば12時間労働日の価値は、何によって規定されるのだろうか?

12時間の一労働日に含まれている12労働時間によってである、これは馬鹿げた同義反復である。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.736). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
  
商品 市場 で 直接 に貨幣所有者に相対するものは、実際には、労働ではなく労働者である。労働者が売るものは、その労働力である。

彼の労働が現実に始まるや否や、それはすでに彼のものではなくなり、したがって、もはや彼によって売られることはできない。労働は価値に実体であり、価値の内在的尺度であるが、それ自体は何らの価値をもたない。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.793). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

経済学 が 労働 の 価値と呼ぶものは、実は労働力の価値なのであって、この労働力なるものは、労働者の一身のうちに存在するものであり、それがその機能である労働とは別ものであることは、機械がその作用と別ものであるのと同様である。

人々は、労働の市場価格と、そのいわゆる価値とのあいだの区別や、利潤率、労働によって生産される商品価値、等々にたいするこの価値の関係やにかかわっていて、分析の進行が、労働の市場価格から労働の価値と称するものに至らしめたのみではなく、この労働の価値そのものを再び労働力の価値に帰着させるに至らしめたことを、ついに発見しなかった。

それ自身の分析の成果についての意識の欠如、問題にされている価値関係の最終の適当な表現としての、「労働の価値」「労働の自然価格」等々という諸範疇の無批判的な採用は、後に見るように、古典派経済学を解きがたい混乱と矛盾とに巻きこんだのである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.842). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働 の 価値 という のは、労働力の価値を意味する不合理な表現にすぎないのであるから、おのずから労働の価値生産物よりも小でなければならない、ということになる。資本家はつねに労働力を、それ自身の価値の再生産に必要でありよりも、長く機能させるからである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.862). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

奴隷労働にあっては、奴隷が彼自身の生活手段の価値を補填するにすぎない労働日部分、したがって、彼が事実上自分自身のために労働する部分さえも、彼の主人のための労働として現われる。彼の不払い労働として現われる。

賃金労働にあっては、逆に剰余労働または不払労働さえも、支払労働として現われる。

奴隷の場合には、所有関係が奴隷の自分自身のための労働を隠蔽し、賃金労働者のばあいには、貨幣関係が賃金労働者の無償労働を隠蔽するのである。

【私見:給料を毎月、銀行口座に自動振込みされていると、この中から、剰余労働、つまり無償労働分が引かれていて、しかも税金まで天引きされているシステムにどっぷりつかっているために、すべて自分自身の稼ぎであると思い込み、引かれている部分は、隠蔽されているという自覚は、起こりにくい。

税額が増加されていても、消費税が上がるときほどには、反対運動で盛り上がることもなく、否応なく増税が実施されるということに帰着する。実に、賃金労働者は、資本家、支配者たちにとっては、都合の良い人々かということになってしまう。】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.880). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第十八章 時間と賃金

労働 賃金 は、 それ 自体 また きわめて 多様 な形態をとるものであるが、それは、素材にたいする貪欲な関心から形態の区別に留意しない経済学便覧からは、認識されえない事情である。

しかし、このような諸形態をことごとく叙述することは、賃金労働にかんする特殊研究に属し、したがって、本書の任務ではない。

とはいえ、二つの支配的な基本形態は、ここで簡単に説明する必要がある。

労働力の日価値、週価値等々が直接に表示される転化形態は、「時間賃金」の形態、すなわち日賃金等々である。

そこでまず注意されるべきはことは、労働力の価格と剰余価値との大いさの変動にかんする諸法則は、簡単な形態変更によって、労働賃金の諸法則に転化されるということである。

同様に、労働力の交換価値と、この価値が置換えられる生活手段の量とのあいだの区別は、いまでは名目的労働賃金との区別として現われる。

本質的形態においてすでに展開したことを、現象形態において繰返すことは無用であろう。われわれは、時間賃金を特徴づける少数の点を論ずるにと止めよう。エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.953). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働者 が 彼 の 日 労働、 週 労働 等 にたいして受取る貨幣額は、彼の名目労働賃金、すなわち価値によって評価された労働賃金の額をなす。

しかし、労働日の長さに如何により、つまり、日々の彼の供給する労働量の如何によって、同じ日賃金、週賃金等が、きわめて種々な労働の価格、すなわち同量の労働にたいするきわめて種々な貨幣額を表示しうることは明らかである。

したがって、時間賃金にあっても、日賃金、週賃金等という労働賃金の総額と労働の価格とは、区別されねばならない。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.965). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

ところで、 この 価格、すなわち与えられた量の労働貨幣価値は、いかにして見出されるか?

労働の平均価格は、労働力の平均日価値を平均労働日の時間数をもって除することによって得られる。たとえば、労働力に日価値が6労働時間の価値生産物なる3シリングで、労働日は12時間であるならば、1労働時間は3シリング/12=3ペンスである。

このようにして見出される1労働時間の価格は、労働の価格に単位尺度として役立つ。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.971). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

安売り 業者 に 使用 さ れ て いる 者の相当多数が、外国人、少年少女、その他、得られるだけのどんな労働賃金にも甘んじざるをえないような人々なのである。

【私見:資本家は、剰余価値を獲得し、かつ、他社との競争に勝抜かなければならないので、独占的に販売する商品がないかぎり、低賃金で雇える人々を求めている。

竹中平蔵は、2004年まで禁止されていた製造業での労働派遣を認める制度を推進し、低賃金で、しかも、いつでも解雇することのできる労働者、つまり非正規社員を大量に生み出すシステムを創出した。さらに、労働者派遣会社パソナを創業して稼ぎまくるという、あくどさを発揮した。

これを、あくどいと言うのは、竹中にとっては、意にそぐわないことでしょう。労働派遣法は、あくまで、資本主義の原理に則ってできた制度であると主張したいのだろうと推測する。どうだ、私は、資本主義を熟知していて、政権内で制度を立案し、推進し、そして私企業で、それを実行することができる賢い人間だろうというわけです。】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1166). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第十九章 出来高賃金

時間 賃金 が、 労働力 の 価値 または 価格 の転化形態であるように、出来高賃金は、時間賃金の転化形態にほかならない。

一見、出来高賃金にあっては、労働者によって売られる使用価値が、彼の労働力の機能である活きた労働ではなく、すでに生産物に対象化された労働であるかのように見え、またこの労働の価格が、時間賃金のばあいのように (労働力に日価値/与えられた時間数の労働日)という分数によってではなく、生産者の作業能力によって規定されるかのように見える。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1194). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

この 外観 を 信ずる 確信 は、まず第一に、労働賃金の両形態が、同じ産業部門に並存するという事実によっても、すでに激しい同様を感ぜざるをえないであろう。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1210). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

時間 賃金 に あっ ては、 労働 が その 直接時間的持続によって量られ、出来高賃金にあっては、労働は一定時間中に労働が擬古する生産物量によって量られる。

労働時間そのものの価格は、結局は、日労働の価値=労働力の日価値という方程式によって規定されている。ゆえに出来高賃金は時間賃金の一転化形態にすぎない。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1248). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

出来高 賃金 に ともなう 労働 の強度と長さの増大が、いかに農村プロレタリアートにとって益の少ないものだったかは、大地主と借地農業者の側に立つ一書から抜いた次の個所が示すとおりであろう。

農事作業にはるかに大きな部分は、日ぎめ、または出来高で雇われている人々によって行われる。彼らの週賃金は約12シリングである。

そして、出来高賃金のばあいには、労働にたいする刺激がより大きいので、週賃金のばあいよりも一人が1シリングか、または2シリングくらいは多く稼ぐものと予想されるのであるが、しかし彼の総収入を見積もってみれば、仕事のないときの減収が、一年のあいだにはこの増収に匹敵することを見出す。

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1403). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

出来高 賃金 の この 変動 は、それだけでは純粋に名目的なものであるが、資本家と労働者とのあいだに不断の闘争を呼び起こす。

なぜかといえば、資本家が、これを現実に労働の価格を引下げるための口実に利用するか、または、高められた労働の生産力に、高められた労働の強度が伴っているからである。

あるいは、労働者が、彼の生産物にたいして支払われるのであって、彼の労働力にたいして支払われるのではないかのような出来高賃金の外観を真に受けて、それに応じて、商品の販売価格の引下げが行われないような賃金引下げには反抗するからである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1440). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第二十章 労働賃金の国民的差異

労働力 の 価値 または 価格 を、 単に労働賃金という平俗な形態に翻訳するだけで、すべてのかの法則は、労働賃金の運動の諸法則に転化される。

この運動の内部において変動する組合せとして現れうるものは、異なる諸国については、国民的労働賃金の同時的差異として現れうる。

したがって、国民的労働賃金の比較に際しては、労働力の価値量における変動を規定するあらゆる要因が、考量されなければならない。

すなわち、自然的な歴史的に発達した第一次生活必需品の価格と範囲、労働者の育成費、婦人労働と児童労働の役割、労働の生産性、労働の外延的および内包的大いさが、これである。

もっとも外面的な比較でさえも、まず第一に異なる諸国における同じ産業について、平均日賃金を同じ大いさの労働日に還元することを必要とする。

このように日賃金を調整したならば、さらに時間賃金を出来高賃金に換算せねばならない。後者のみが、労働の生産性についても、その内包的大いさについても、測度器となるからである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1494). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

強度 のより 大きい 国民的 労働 は、強度のより小さいそれに比すれば、同じ時間により多くの価値を生産し、この価値はより多くの貨幣で表現される。

しかし、その国際的適用において、価値法則にさらにより以上の修正を加えるものは、より生産的な国民が、その商品の販売価格を、その価値まで引下げることを競争によって強制されないかぎり、世界市場ではより生産的な国民的労働が、同時により強度の大きい労働として計算される、ということである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.1512). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

【私見:現代でも、賃金として、日払い、月払い、出来高払い等があるが、小生が体験した設計業務での出来高払いについて記してみる。

設備内の配管工事をするにあたって、まず、配管図の作成を設計業者に委託するが、設計業者として、数人の作図者を抱えている設計業者A、一人親方の設計業者BとCが存在していた。

業者それぞれの特徴として、

  • 業者Aの親方は、スラスラと内容説明するが、作図者としての実力は、三社では中で、作図ミスが少なからずあった。

  • 業者Bは、内容説明は、曖昧で、ミスがかなり、多くて、実力は最低だった。ただし、近場にいたので、フットワークが良かったために、緊急の仕事が依頼できるメリットがあるというのが唯一の取り柄でした。

  • 業者Cは、寡黙で、説明は下手だったが、ミスが少ないので、最も信頼できた。3年間ほど、離れていた時期があったが、その間に、手書きではなく、CADによる作図操作を覚えていた。彼は、パソコンにまったく関心のない人だったので、驚きました。

A、Bは、ミスが多くて、検図に時間がかかった上、急ぎのときは、その訂正に小生自ら行うことがあったが、Cについては、その手間は、ほとんどなかった。

にもかかわらず、標準単価が決まっていたため、同じ規模の業務であれば、出来高賃金は、3社とも変わらないという不合理さを感じていた。】


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