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輪廻する宇宙(1)

タイトルだけから見れば、「前世療法」とか「憑依」とかのトンデモ系の本と思われてしまいそうだが、宇宙論と重力波を専門とする物理学者横山順一氏が刊行した『輪廻する宇宙』という科学の本なのです。この本の構成は下記のようになっています。

  • 序章 輪廻転生とは何か 転生者の捜索と科学の方法

  • 第一章 宇宙の中味をさぐる

  • 第二章 宇宙観の変遷 偏見からの解放

  • 第三章 加速膨張宇宙の謎

  • 第四章 ダークエネルギーの正体

  • 第五章 宇宙のはじまり

  • 第六章 宇宙の将来

  • 終章 ダライ・ラマとの邂逅

それぞれの章をかいつまんでみます。

序章 輪廻転生とは何か 転生者の捜索と科学の方法
輪廻転生
輪廻転生とは、文字通り車輪が回り続けるように、
生きとし生けるものが三界六道を迷い、生死を繰返すことだという。

仏教用語である三界六道とは、各種生命の住む世界は六つに分類されていて、マシな世界(三善道)三つとマシでない世界(三悪道)三つである。

そして三善道は、天、人間界、修羅のことである。天は一番住みやすい世界、人間界は生老病死の四苦八苦のある世界、人間界以下の修羅の世界である。

三悪道は、弱肉強食の畜生の世界、欲望の塊からなる餓鬼の世界、もっとも苦しみの多い地獄となる。

人間と他の生物(動物、虫、鳥など)は、死ぬと、この六道のいずれかの世界で生まれ変わるという生死の繰返しを永遠に続けるのが、輪廻転生である。

余談であるが、ブッダのように悟る、つまり涅槃に入ると、この輪廻転生の輪から逃れることができ、死んでも決して生まれ変わることはないといわれている。

生きていた世界に満足していたからといって、必ずしも同じ世界に生まれ変わるわけでもなく、最悪の地獄の世界に入ることもありえる。悪行を重ねて大資産家となり、世界を支配していた人物が死ぬと地獄に落ちるということであれば良いのにと思う。こんなことを望むと、地獄落ちになるのかな。

さらに、現在人間であっても、次に生まれるときは、虫や動物や鳥になるかも知れないのです。ならば、悟りたいとなるが、私を含めた俗人には、悟ることは土台無理なんですね。

ダライ・ラマの転生者探し
ダライ・ラマ法王は現在14世であるが、前任者のダライ・ラマ13世の遷化(僧が亡くなること)した後、輪廻r転生によるその生まれ変わりである転生者を捜索し、次のダライ・ラマに選定する過程が、科学者が新しい物理法則を探すために行う試行錯誤と似通った点と正反対の点にあり、興味深い、というのである。

似かよった点は、自然現象を一生懸命観察し、その背後に潜んでいることを探ろうとしているところである。

一方、大きな違いは、物理学が現象に共通した法則を探そうとするのに対し、チベット仏教は、ダライ・ラマという唯一至高の存在を見つけなければならないのだから、最も特殊で人智を超えたところに目を向けたところである。

ブッダのように涅槃に入ると、生まれ変わることはないのですが、悟りを開いた一部の菩薩は、次も自分の意志をもって人間として生まれ変わることができる。その一人であるダライ・ラマは観世菩薩の化身であると考えられている。

【仏教学者の佐々木閑氏が解説している阿含経では、自分の意志で人間に生まれ変われないとされていたように記憶しているが、チベット仏教では、違うようだ。小乗仏教(上座部仏教)と大乗仏教では教義内容が違うことと同様なのでしょう。】

(続き)

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