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カール・マルクス 著『資本論 』(91)  読書メモ

第二巻 資本の流通過程
 第二篇 資本の回転
  第十一章 固定資本と流動資本にかんする諸理論。
       リカード
リカード は、 価値法則の例外を説明するために、すなわち労働賃金の率が物価に影響を及ぼすばあいを説明するために、固定資産と流動資本との区別を持ち出しているにすぎない。このことについては第三巻に入ってから述べることにしよう〔第三巻第十一章〕

しかし元来の不明瞭さは、次のような無造作な併置に初めから現われている。

固定資本の耐久度におけるこの差異、および二種の資本が結合されうる比率におけるこの変化

リカード『経済学原理』25ページ

そこで、二種の資本とは何かという答えを聞くと下記の通りだ。

労働を維持すべき資本と、道具、機械装置、建物に投ぜられている資本とが、種々に組合わされうる比率も

同上

すなわち、固定資本は労働手段であり、流動資本は、労働に投ぜられている資本である。すでに、労働を維持すべき資本というのが、アダム・スミスから受継がれた愚劣な表現である。

一方では、流動資本が可変資本と、すなわち労働に投ぜられた生産資本部分と、混同されている。

また他方では、対比が価値増殖過程からーーー不変資本と可変資本ーーーではなく、流動過程から取られている(前からのスミス的混乱)ので、二重に誤った規定が出てくる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5769). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

ここ で 注意 さ れる べき は、 資本家 は 労働 賃金に投ぜられた資本を、種々の期間について、たとえば、彼がこの賃金を毎週支払うか、毎月支払うか、毎三ヶ月支払うかにしたがって、経済学の用語で言えば、前貸しするということである。実際には事柄は逆である。

労働者が支払いを受けるのが毎週であるか、毎月であるか、毎三ヶ月であるかにしたがって、彼が資本家に自分の労働を一週、一ヶ月、または三ヶ月のあいだ前貸しするのである。

資本家が労働力に賃払いするかわりにそれを買うのであれば、すなわち一日分、一週間分、三ヶ月の労働賃金を労働者に前払いするのであれば、これらの期間についての前貸しと言ってもよいであろう。

しかし資本家は、労働を買ってそれが継続すべき期間について支払うのではなく、労働が数日、数週、数カ月続行された後に支払うのであるから、すべては資本家的な取違えであって、労働者が資本家に労働をもって与える前貸しが、資本家が貨幣をもって労働者に与える前貸しに変えられているのである。

【リカードともあろう経済学者が、子供でも分かることを、間違えるとは、にわかには、信じられない。労働者は、自らの肉体を資本家に一定の期間に、労働力という名の商品を、無料で貸出しているという事実を、ねじまけるとは!

少し、脱線する。当方は、何回か、会社を移動したが、一度だけ、賃金前払いの会社に就職したことがあった。その時は、助かったという気持ちはあったが、辞めた後に、賃金後払いの会社に転職すると、1ヶ月以上収入無しという苦い思いをした記憶がある。】

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5814). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

商品 の 生産過程 で 支出 さ れる 所与 の 価値 は、労働賃金として支出されるにせよ、原料の価格または労働手段の価格として支出されるにせよ、いかにして生産物に移されるか、したがって、生産物によって流通させられ、生産物の販売によってその出発点に復帰させられるか、すなわち補填されるか、である。

ここでは、「いかにして」という点に、この価値の移転と、したがってまた流通の特殊な仕方に、唯一の区別がある。


あらゆる ば あい に、 契約 によって あらかじめ定められた労働力に価格が、貨幣で支払われるか、生活手段で支払われるかは、一定の与えられた価格であるというその性格を、少しも変えるものではない。

しかし、貨幣で支払われる労働賃金のばあいには、生活手段の価値のみではなくその素材もまた生産過程に入るのとは異なり、貨幣そのものが、生産過程に入るのでないことは明らかである。

しかし、労働者がその賃金で買う生活手段が、直接に流動資本の素材的態容として原料その他といっしょに一つの部類に入れられて、労働手段に対置されるならば、それは事柄に別の外観を与える。

これらの物、すなわち生産手段の価値が、労働過程で生産物に移されるとすれば、他方の物、すなわち生活手段の価値は、それを消費する労働力に再現し、労働力の活動によって、同様に生産物に移される。

すべてこれらのばあいに等しく問題とされているのは、生産中に前貸しされた価値の、生産物における単なる再現である。(中略)

生産手段と生活手段の態容で生産に前貸しされた資本価値は、ここでは等しく生産物の価値において再現する。かくして、資本主義的生産過程の完全な神秘化が無事に成就され、生産物中に存在する剰余価値の起源は、全く隠蔽されるのである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5999). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

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