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カール・マルクス 著『資本論 』第一巻 第五篇 第十四章、第十五章 読書メモ

カール・マルクス 著『資本論 』読書メモ(1)~(172)をすでに投稿済ですが、第一巻 第五篇 第十四章、第十五章に目次をつけたものを再掲載します。


第一巻 資本の生産過程

第五篇 絶対的剰余価値と相対的剰余価値の生産

第十四章 絶対的剰余価値と相対的剰余価値 

労働 過程 そのもの の協業的性格とともに、生産的労働およびその担い手なる生産的労働者の概念は、必然的に拡大される。

生産的に労働するためには、もはや自分で手を下すことは必要でない。全体労働者の器官として、その部分機能の一つを行うだけで充分である。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.79). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

資本主義 的 生産 は、 単に 商品の生産であるのみではなく、それは本質的には剰余価値の生産である。労働者は、自分のためではなく、資本のために生産する。

したがって、彼がただ生産するというだけでは、もはや充分ではない。彼は剰余価値の生産せねばならない。資本家のために剰余を生産する労働者、すなわち資本の自己増殖に役立つ労働者のみが、生産的である。

物質的生産の圏外から一例を挙げることが許されるならば、学校教師なるものは、児童の頭脳に加工するのみではなく企業家の致富のために自らを労するばあいに、生産的労働者となる。

【私見:資本主義社会においては、教師にかぎらず、宗教家、芸術家、哲学者等も、労働者の生活空間において、労働者に何らかの安らぎを付与し、再生産への意気込みをもたらすならば、結果的には、資本家の致富のために労しているのであるから、生産的労働者と名づけることができる。】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.85). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

生産的 労働者 の 概念 は、単に活動と効果との関係、労働者と労働者を資本の直接的価値増殖手段となす一つの特殊社会的な、歴史的に成立した生産関係をも、包含するのである。したがって生産的労働者であることは、幸運ではなく、不運なのである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.91). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働者 が その 労働力の価値にたいする等価を生産するに止まるという点を超えて、労働日を延長するということ、そして資本によるこの剰余労働の領有ーーーこれが絶対的剰余価値の生産である。

それは資本主義体制の一般的基礎をなし、また相対的剰余価値生産の出発点となす。相対的剰余価値の生産にあっては、労働は初めから、二つの部分に、必要労働と剰余労働に分かれている。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.99). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.    

絶対的剰余価値の生産は、労働日の長さのみを軸として回転する。相対的剰余価値の生産は、労働の技術的過程と社会的人員配列を徹底的に変革する。

したがって、相対的剰余価値の生産は、特殊資本主義的生産様式を前提とし、この生産様式は、その方法、手段、条件そのものとともに、最初は資本のもとへの労働の形式的包摂の基礎の上に、自然発生的に発生して、次第に育成される。

資本のもとへの労働の形式的包摂に代わって、実質的包摂が現われる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.104). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

一般 に 特殊 資本主義 的 生産様式は、それが一生産部門全体を征服するや否や、ましてすべての決定的な生産部門を征服するや否や、もはや単なる相対的剰余価値生産のための手段ではなくなる。

それはいまや、生産過程の一般的な、社会的に支配的な形態となる。相対的剰余価値生産の特殊方法としてそれが作用するのは、第一には、従来はただ形式的にのみ資本に従属していた諸産業を、それが捉えるばあいのみである。すなわち、その普及活動においてのみである。

第二には、すでにそれによって捉えられた産業が、生産方法の転換によって、継続的に変革されるかぎりにおいてのみである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.121). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第十五章 労働力の価値と剰余価値との量的変動


労働力 の 価値 は、 平均的労働者の習慣的に必要とする生活手段の価値によって規定されている。

これらの生活手段は形態は変動することがあっても、その量は、一定社会の一定時代にあっては与えられたものであり、したがって不変の大いさとして取扱われうる。

変動するものは、この量の価値である。このほかに二つの要因が、労働力の価値規定に関与する。

一方には、生産様式とともに変化する労働力発達の費用があり、他方には、男か女か、成熟か未成熟かという労働力の自然的差異がある。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.334). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第一節 労働日の大いさと労働の強度とが不変で(与えられていて)、労働の生産力が可変であるばあい

この 前提 の もと では、労働力の価値と剰余価値とは、三つの法則によって規定されている。

①労働の生産性が、それとともに生産物量が、またしたがって個々の商品の価格がいかに変動しても、与えられた大いさんの労働日はつねに同じ価値生産物において表示される。

②労働量の価値と剰余価値とは、互いに反対の方向に変動する。労働の生産力における変動、その増加または減少は、労働力の価値には逆の方向に作用し、剰余価値には同じ方向に作用する。

③12時間労働日の価値生産物は、一つの与えられた大いさ、たとえば6シリングである。この不変の大いさは、労働者が一つの等価をもって置換える労働力の価値に剰余価値を加えた額に等しい。

一つの不変量の二つの部分のうち、他方が減少しなければ一方が増加しえないことは自明である。剰余価値が3シリングから2シリングに減少することなくしては、労働力の価値は3シリングから4シリングに増加しえず、また労働力の価値が3シリングから2シリングに減少することなくしては、剰余価値は3シリングから4シリングに増加しえない。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.361). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働 の 生産性 における 増大 は、労働力の価値を低下させ、したがって剰余価値を増大させるが、逆に、生産性の減少は、労働力の価値を増大させて、剰余価値を低下させることである。

【私見:優秀な社員が、工夫して能率をあげることによって、8時間かかる仕事を6時間で仕上げても、労働力の価値は減少させるが、剰余価値は上昇させるので、資本家にとっては都合がよい。

逆に、能率が悪い社員の場合は、同じ仕事でも10時間と2時間も残業しなければならなくなり、余分な残業代を払うハメとなるため、資本家にとっては、極めて、都合が悪くなる、という資本主義の原理をマルクスは説明している。

とはいっても、日本の問題点は、優秀な社員は、早く仕事をかたずけたからといっても、早く帰れるわけでもなく、ずるずると、無報酬で残業している、もしくは、させられているというところにある。

残業代込みで部下なしの管理職という見かけの役職があり、会社はこれを利用して、ただ働きを強要している。コンビニの店長もこの類だろう。

小生も、次長という役職についたが、部下はなしで、平職と同様に、実務を行っていて、実体は、単に名前のみの管理職だった。この会社では、部下を有していたのは、部長のみだった。

会社としては、残業代を払わないための苦肉の策だったのだろう。かといって、平職の人々の残業代は、微々たるものだったから、せこいことをしていた会社だった。

とはいえ、鉄鋼系の会社だったので、モロに不況の波をかぶっていたから、仕方のないことではあった、と今になっては、同情する面もあった。

毎月の定額給料は、減ることはなかったが、ボーナスの額が大幅に減っていった。減らす度に、部長が各個人に面談して、説明して回っていたから、部長も大変だったと思われる。

この会社を定年前に辞めて、介護の世界に入った。この世界は、不況ではななくて、仕事はあったが、低賃金の上に、弱小な施設だったため、ボーナスもなかった。その点では、前会社の方は、ボーナスがあった分だけ、マシだったということになる。】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.382). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

しかし 相対的 には、 すなわち剰余価値と比較すれば、労働力の価値はたえず低落し、したがって、労働者の生活状態と資本家のそれとのあいだの懸隔は、拡大されるであろう。

【私見:つまり、資本主義であるかぎり、資本家と労働者の格差は、拡大されるのである、とマルクスは、150年前に、警鐘を鳴らしていた。】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.434). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第二節 労働日と労働の生産力とが不変で、労働との強度が可変であるばあい

労働 の 強度 の 増大 は、同じ時間内で、労働支出が増大することを意味する。したがって、強度の高い労働日は、同じ時間数の強度の低い労働日よりも、より多くの生産物に物体化される。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.463). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第三節 労働の生産力と強度が不変で、労働日が可変であるばあい

労働日 は 二つ の 方向に向かって変化しうる。それは短縮または延長されうる。

(1)与えられた諸条件の下における、すなわち労働の生産力と強度を不変としたばあいにおける労働日に短縮は、労働力の価値を、したがって必要労働時間を変化させない。それは剰余労働と剰余価値を縮小させる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.501). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働 の 生産性と強度の変動が、労働日の短縮に先行か、または直ちにこれに続いて起きるのである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.509). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

(2)労働日の延長
労働日 が 表示 さ れる価値生産物は、労働日自体の延長とともに増大するのであるから、労働力の価格と剰余価値とは、増加分が等しいか等しくないかは別として、同時に増大しうる。

したがって、この同時的増大は、二つのばあいに可能である。労働日に絶対的延長のばあいと、かかる延長がなくても労働の強度が増大するばあいと。

労働日が延長されるとともに、労働力の価格は、たとえ名目的には不変であるか、または騰貴さえしても、その価値以下に下落しうる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.523). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第四節 労働の持続、生産力、強度が、同時に変動するばあい

この ば あい には 言うまでもなく、多数の組合せが可能である。いずれか二つの要因が変化して、他の一つが不変であるか、または三つすべて同時に変化することがありうる。

それらは等しい程度にも等しくない程度にも、同じ方向にも反対の方向にも、変化しうるのであって、したがって、それらの変化は部分的または全部的に相殺されうる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.538). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

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