Vol. 23 ラジオを聴く

Aug. 2011

 今さらなのだがiPodナノ6Gを買った。
理由は、クロスバイクというカテゴリの自転車を買ったから。

 なぜ自転車を買ったのかといえば、MacBookエア11インチを買おうか、さんざん悩んだ挙句、ある結論に達したからである。

MacBookエアは太る。

 最近少し体調が悪く、さまざまな角度から原因究明をしてみたところ、単に運動不足であることがわかった。
MacBookエアは小さくて軽くて高性能と、非の打ちどころのない代物なのは間違いないものの、その優秀さがゆえにどこでも鞄からスッと出して仕事ができてしまう。

バッテリ性能もいいので、気がつけばスタバで4時間も経っていた、なんて話はよく耳にするだろう。
ということは、MacBookエアを持って外出したら、ほぼ座っている日常がそこには待ち受けているということになる。
つまり、これはもう運動不足の解消どころか助長行為に等しい。
ということで、私の選択はMacBookエアではなく、より健康的で有酸素運動的な自転車に結実した。

自転車は素晴らしい。

なにしろ遠くまで行ける。
ペダルさえ踏み続ければ日本一周だって夢ではない。
しかも燃費は自分のメシ代程度。
早速iPhone 4にイヤフォンをつなぎ、走る準備を始めた。
気分よく走るには音楽が必須だしね。
でも、iPhone 4は自転車で走る際にポケットに入れておくと重くて邪魔くさいし、いちいち操作するのが面倒だ。
ハンドルに取り付けるキットは多々あるけれども、どれもなんだかしっくりこない。ここで急浮上したのがiPodナノの腕時計化キット。iPod 6Gと一緒に買うほかあるまい。即購入。

 時計バンドの台座キットにiPodナノをはめ込むだけで、そこそこ見た目がカッコイイ腕時計になり、万歩計になり、さらに音楽まで聞けてしまう。
そもそもiPodなんだから音楽が聴けて当たり前なのだが、それが腕に付いているというだけで昭和世代にはフューチャー感たっぷりでいい感じなのである。

これで走る準備は整った、はずだった。

 あろうことか、イヤフォンを付けての自転車走行は道交法違反だという事実をすっかり忘れていた。
渋々断念して、こうなってくるとつい今しがたまで絶賛していたiPodナノへの期待が急激に萎んでいくのはいつもの展開だが、意外やiPod 6Gは私をシビレさせてくれた。
なんと、FMラジオチューナ付きだったのだ。
イヤフォンケーブルをアンテナ代わりに使い、受信感度も非常によい。
おまけにライブポーズという機能も搭載しているから、要するに15分ぐらいは録音できるらしい。

こんなに小っちゃいのに凄いじゃないかiPodナノ♡。
iPhoneばかりに気を取られていたけど見直したぞ。
オールナイトニッポンを聴きながら育った私にとって、この機能は嬉しいしトクした気分だ。

 ずいぶん前振りが長くなったけど、久々に身近にラジオがやってきた。
でもちょっと待てよ。この「久々に」というのがラジオのマズい部分じゃないのか? 

 近年のラジオを取り巻く状況でよく議論になる「ラジオ離れ」という問題がある。ちょうど先日あるアンケートで老若男女千人規模で取った統計によると、情報入手の手段として予想どおり恐るべき伸び率を示したネットに対し、この十年でラジオを聞く機会は8割減という結果が出た。
特に若年層では顕著。直近に絞って数字を見るとテレビも急下降しており、ラジオと同様の道をたどることが予測されている。

 このネット時代、ツイッターやフェイスブックといった、よりストリーム感のあるコンテンツが好まれる傾向にあるというのに、なぜラジオは聞かれないのだろうか。
いってみれば、iPodに転送してある予定された自分のライブラリを聞くよりも、ラジオのほうがソーシャルストリームに近いコンテンツだと思うのだが、とにかく聞かれないらしい。

「ラジオは持ってない」

という意見が理由のようだが、そんなことはないだろう。
iPodのようにラジオチューナを搭載している音楽プレーヤなどいくらでもあるし、スマホでもチューナ搭載ものはゴマンとある。
iPhoneでもアンドロイドでもラジオチューナアプリはあるから、ラジオを聴く機会は実はいくらでもあるはずなのだ。
でも、この惨憺たる結果である。

 こうなると放送している番組に問題があるか、ラジオには誰も期待をしていないとしか思えなくなってきた。
しかし、久々に私の身近にきたラジオ放送を聴いていると、番組自体はそれほど悪くない。普段聴かないような音楽が楽しめたり、DJのトークを聴いたりするのは楽しい。
滅多に聴かないからなおさらそう感じるのか。
毎日聴いていたら、いつも同じようなコンテンツがそこには溢れているのかもしれない。
だとすると、ラジオの特性そのものが時代に合っていないことになる。
現代人が好むのは、インタラクティブ性のあるストリームコンテンツなのだと思う。業界の人はよく「ラジオ(テレビ)とツイッターは相性がいいよね」というような話をするが、その相性のよさを体現した番組とは何だろうか? 

残念ながら私はまだ体感していない。

 ラジオをどうにかしようと本気で考えているわけでもないのでその答えを持ち合わせてはいないが、少なくともそれが通販であったり投書ハガキの代わりのようなものではないと思っている。
いつかきっと誰かが素晴らしいアイデアを考えついた日には、リスナーのために面白いコンテンツサービスを提供してほしい。

認可された放送事業者以外のメディアが、これほどまでにフォロワーとパワーを持った現在、放送事業者は人々をどうやって巻き込み、楽しんでもらえるかを本気で考えるべきだと思うのだ。

私は運動不足の解消を本気で考えるから。


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