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ユズキカズ / ヤナギホールで会おう(2022)

・ユズキカズ / ヤナギホールで会おう (青林工藝舎 2022)

yahooショッピングの超paypay祭という俗っぽいキャンペーンに乗じて購入。還元率約28%。

ユズキカズは80年代前半から90年代にかけてガロやCOMICばくなどに作品を発表していた漫画家。自分がその存在を知ったのはハレルヤズのLP再発やテニスコーツのリリース、Television Personalitiesの有識者として知られるRover Recordsの主宰者の方がクッキーシーンという音楽誌に傑作「枇杷の樹の下で」を紹介していたことがきっかけだったような気がする。バブル期という時代には相容れない作風なので発表した作品数はそれほど多くなく漫画家としての活動期間も短いが、他に類を見ない作風は現在でも古びない強靭さとしなやかさを感じることができる。奈良・大阪・仙台・インターネットを股にかけて「水街」orig以外の単行本をすべて買い揃えたので個人的な思い入れも深い。

この「ヤナギホールで会おう」は80年から90年代にかけてパチンコ雑誌やみこすり半劇場・アリスクラブといったエロい本に掲載されていた連作と短編作品を集めたもの。よってギャンブルやエロやグロやセクハラなどの描写も多いが、古い商店街や庭に無造作に生えた植物、鳥、水などへの偏愛は健在。日本を舞台にしていながら異国情緒があり突如物語に立ち上る妖しく淫らな夢のような非日常的光景と時間軸のずれ、奇想の飛躍が単なる昭和のノスタルジーには埋没しない特異性を生んでいる。

後半の作品群の会話の中にまだ新進気鋭の若手だったころの若花田、貴花田という固有名詞が登場しているが、いかに彼らが老若男女に期待され希望となっていたかがよくわかる描写だ。自分の祖母も毎日楽しそうに相撲を見ていたことを思い出した。まさか後年あんなに仲が悪くなってあんな風になるとは思わなかったが、まさか2022年にユズキカズの新刊の単行本が読めるとも想像もしていなかったので世界にはこの先何が起こるのかますますわからない。


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