見出し画像

『南瓜とマヨネーズ』(2017/日本)

「バンドマンとは付き合うな」というテンプレのような文句があります。「クズ男と付き合うお前が悪い」の文脈で切り捨ててしまうような人にとって、『南瓜とマヨネーズ』は観たらいいんじゃないかなと思う映画です。

パッと見のクズ男がたくさん出てきます。私もパッと見なら「このクズ男!」で切り捨てて、その人の人生に関係のない他者になるでしょう。ただ映画を観ることで傍観者になれます。ここがポイントですね。

登場するクズ男の紹介

そのクズ男に肩入れするツチダという女性が主人公なわけですが、たいへん不器用な生き方をされています。もっと上手くやれるでしょう、なんて思いますが、そういう生き方しかできないんだと思います。

ここから登場するクズ男を紹介します。
ファーストクズ男の"せいちゃん"っていう彼氏がいます。こいつが元バンドマンなんですけども、映画冒頭のニヤニヤ顔がクズそのものでした。素晴らしいクズ顔演技に拍手を送りたい。
このせいちゃんはですね、「音楽で食っていきたいけど音楽作らない」「生活費は彼女に稼いでもらう」というジャンルのクズ男なんですね。それだけ聞いたらムカつきますよね。
だがしかし物語が進むにつれ、せいちゃんは真面目すぎてクズ(にしか見えない)男になったんだと分かります。

そのあとファイナルクズ男の"ハギオ"っていう元彼みたいのが出てくるんですけど、これは真正のクズ男なので擁護はできぬ。こういう男に捕まってはいけない。いけないのだが、彼も彼のなかのロジックで生きていて、そのニーズにマッチしてしまうと逃れられぬ沼にはまってしまいます。
そんな男たちとの関係のなかでツチダの言動は彼らに影響を与え、ツチダもまた変わっていくのです。

理解できない事象の背景を知って、少しでも理解する

このように!
本作を観ることで「クズ男と付き合うのが悪いんでしょ」という紋切り型の切り捨て問答を超越することができます。擬似体験といえど、背景や物語を知ると考え方の幅が広がって、「クズにしか見えない男もそんなこと考えていたのね」っていうのが分かります。

ミスチルの曲に「白と黒の間に無限の色が広がって〜」的な歌詞があった記憶がありますが、それですね。
映画、漫画、文芸作品はそういうことを表現するのが役目だと思いますので、そういう意味で『南瓜とマヨネーズ』は視野や思考の幅を広げてくれる良作の部類だと思います。(でも共感するところは少ないので、絶賛はしませんが)

(面白さ:★★★★★★☆☆☆☆)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?