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8252日記 おひとりハハ82歳と52歳のわたしのこと#4 遺産のつかいみち

父が亡くなり、田舎の母はおひとり様になった。             82歳にして生まれて初めてのひとり暮らし。              52歳の私は東京でひとり暮らし。                    私に同居してほしい母と、絶対回避したい私。母と娘の攻防戦の記録です。

80歳の自活に向けてリフォーム

母には死ぬまで自活してほしい、と願っている。 

同居して、介護、は、したくない。               

そのために、母がひとりで生活できるように、築40年の戸建てをハハ仕様にしようと説得した。田舎の古い一戸建ては、年寄りにとって全く優しくないのだ。家のなかは寒いし、段差も多い。

まずは、浴室のリフォームを提案したところ、母は気乗りしなかった。

周囲の人たちから、絶対やった方がいいと応援してくれたのもあって、前向きになってきた。

でも、父が残してくれた財産を使うことに、まだ躊躇いがあった。

お父さんが貯めたお金をつかってもいいのか?

母は、お父さんが節約して貯めてくれたお金を、自分ひとりのためにつかっていいのだろうか?と、言い続けた。

お父さんは我慢し続けたのに・・・本来なら、お父さんが好きなことに使ってくれればよかったのに。

母は専業主婦だったから、お父さんに養ってもらっていた、という感覚がどこかにあるのだろう。

それに、父は、亡くなるまでお金の心配をしていたらしい。税金のプロだったにもかかわらず、自分と母と私と兄が生きていくのに、これで十分と思えなかったようだった。

父の入院中、個室に入っていたのだけど、いつまで個室にいられるのかが不安だったそうだ。田舎の病院だから、都会の病院の個室のような豪華なものではなく、差額ベッド代もさほどの金額ではなかったのに。

いざとなれば、お兄ちゃんと私とで、援助するから。と、言ったら、母は安堵した。兄の本心は知らんが。

「わからない」ことは、人を不安にさせるんだな、と思う。

自分の寿命をどのタイミングで知るべきか、考えてしまった。


82歳の母を説得する

リフォームには200万くらいかかる。

銀行口座から200万円が減っちゃうのは、すごいストレスだ。

200万は適正価格であり、母が生きていくのに正しい使い道なのだ、と母が自分に落とし込ませないと、後悔させることになる。

毎晩、母に電話をして、お金の使い方について話をした。

まずは、私達兄妹にお金を残しておくことはない。ってことを知ってほしい。(兄は遺産をあてにしているらしいが・・)そこで、こう言った。                    

”お父さんとお母さんが働いたお金なんだから、お母さんが使い切って構わない。お兄ちゃんも私にもちゃんと教育を受けさせてくれたんだから、それで十分。”

お父さんが存分に働けたのは、お母さんが家を守ったからだ。両親が稼いだお金は、両親がちゃんと役割分担をしたからこそ、だろう。母は専業主婦だったが、自営だった父のアシストや父が快適に過ごせるように至れり尽くせりしてたから、ふたりで築いた財産だと認識してもらいたい。

私が考える、正しいお金の使い方とは、こういうことだと思う、と伝えた。

"お母さんが元気で笑っていられるなら、それにかかるお金は無駄じゃない”

万が一、他者から財産を狙われるかもしれない。お金を残しておくことがリスクにもなるだろう。

”詐欺師に目をつけられたら、だましとられてもしょうがない。誰かに盗られるんなら、その前に自分で使っちゃったほうがいい”

兄一家をダシにして言ってみたこと。

”お風呂を直したら、兄ちゃん家族も頻繁に来てくれるかもよ”

”お母さんが機嫌よく元気に過ごしていたら、兄ちゃん一家も気軽に来てくれるんじゃない?”

家の中で倒れられると、いちばん困る・・・。そこで、こう言ってみた。

”お風呂でお母さん死んだら、誰も気づいてくれんよ”

”人はいつ死ぬかわかんないんだから、事故で突然死んじゃうかもしれないし、だったら、我慢して過ごすより、日々を快適に過ごした方がいいんじゃない?”

”お金を貯める時期はもう終わり。これからは、使っていく時期や”

”お金を使うことに慣れないと、ヘンなものに使ってしまうよ”

母の住む町には、買い物するところが、スーパーとコンビニくらいしかない。お金を使おうにも、使うところがないため、自然と節約生活できる環境にある。

年寄りのひとり暮らしが普段使う生活費なんて、たかが知れているのだ。

年寄りが1人暮らしするためのインフラにお金を使うべきなのだ。

と、日々、電話で話し続けて1週間後、

母から「リフォームするわ」

と、朗らかに言ってきた。

家が快適になり、その生活にも慣れてきたら季節は秋になった。

夜が涼しくなると、母はセンチメンタルになっていった・・・





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