College Conversation #1 篠田真貴子さん 人の話を「聴く」とは

College Conversation とは
ゲストをお招きし、アカデミックからアート、ライフスタイルなど各回ごとにテーマを設定してゆっくりと話を深める、カレッジ生によるカレッジ生のための学びの場です。

2021年4月11日(日)に、篠田真貴子さんをお呼びし、記念すべき第1回目のCollege Conversationを行いました。より良い対話の場が生まれる文化づくりのヒントを得るために、"人の話を「聴く」とは"というテーマで開催しました。

篠田真貴子さんプロフィール
慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社日本長期信用銀行(現・株式会社新生銀行)入社。退職後、米国に留学し、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大学国際関係論修士を取得。帰国と同時に、経営コンサルタントとしてマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。スイスの製薬会社ノバルティスファーマ(所属部門の売却によりネスレ日本株式会社に移籍)を経て、株式会社東京糸井重里事務所(現・株式会社ほぼ日)に入社。2008 年 12 月より 2018 年 11 月まで同社取締役CFO。2020年3月よりオンライン 1on 1 を提供するエール株式会社の取締役に就任。学校法人インターナショナル・スクール・オブ・アジア軽井沢(UWC ISAK Japan)評議員も務めている。『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(2021年発行)ならびに『ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』(2015年発行)監訳者。

コミュニケーションは聞き手がポイント

篠田さんによれば、コミュニケーションでは聞き手が重要な役割を果たしているといいます。

本来、コミュニケーションとは「相手の話をよく聴き、相手が言いたいことをそのまま理解すること」で完了します。コミュニケーションを完了させるのは聞き手であり、「聴く」ことの重要性を親子のキャッチボールに例えて、篠田さんは話します。

キャッチボールが続くのは、キャッチする側がしっかりしているからです。例えば、親子のキャッチボールで子どもが変な方向に投げたり弱く投げたりしても、親がちゃんとキャッチすれば続きますよね。コミュニケーションも同じで、聞き手が相手の話をよく聴き、相手が言いたいことをそのまま理解すれば、コミュニケーションのキャッチボールはうまくいきます。

また、コミュニケーションでは聞き手の受け取り方によって話し手が話す内容を無意識に変える、と篠田さんは話します。聞き手がどのようにきくかは話す内容にも影響します。一対一で話す時と大勢の前で話す時によって話し方を変えるように、実は「きき方」も状況場面によって変えることができます。「きき方」の種類を知ることがコミュニケーションの取りやすさにつながると言います。

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「聞く」と「聴く」の違い

「きく」という行為は「聞く」と「聴く」に分けられます。「聞く」と「聴く」の違いについて教えていただきました。

「聞く」とは、事実関係に着目して自分目線で話を聞くこと(=with judgement)です。批判的に話を聞くときは、「聞く」にあたります。

一方、「聴く」とは、相手目線で共感すること(=without judgement)です。共感=同じ意見という考え方ではなく、自分とは考え方が違う人であっても、相手が見ている景色を感じられることを指します。つまり、相手と同じように場面を想像することを「聴く」といいます。

「聴く」が有効な場面

「聴く」は、自分とは背景や価値観が異なる人とコミュニケーションする時に有効だと篠田さんは話します。自分とは違う価値観を持つ人が何を感じているのかに意識を向けやすくなるからです。

価値観の共有を前提としていない時、お互いの価値観を認める必要があります。そのために、まずお互いの価値観や考え方が違うということを理解しなければなりません。インクルージョンを実現するにも、「聴く」ということなしにはできません。「聴く」ことで、お互いの違いが何であるかが分かります。共通点がある共感ではなくて、違う部分を感じられるという共感が重要である場合に、「聴く」は欠かせないと思っています。

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日常生活での「聴く」の取り入れ方

とはいえ、ずっと「聴く」というきき方をするのは難しいと感じます。普段どのように取り入れたらよいのかについて伺いました。

ずっと「聴く」は不自然だし無理です。大切なのは、話をきいている際に、時々自分の今のきき方が「聞く」なのか「聴く」なのか意識することです。話題によって、事実と相手の感情のどちらに意識を向けるべき場面であるのか判断して、「聴く」方がいい場面だと思ったら、1分間は「聴く」ことを実践しようと意識してみましょう。

また、相手が見ていた景色を想像できる箇所を拾って聞くことや、whyではなくwhatの質問をすることも大切だと話します。

当時の周りの様子や表情を知ることができると、相手が見ていた景色を想像しやすくなります。また、「そのとき何が見えてたの?」「なにがあなたをそういう気持ちにさせたの?」という質問は、話し手に場面が再現させる質問です。そうすると、聞き手も場面を再現しやすくなるため、賛成はできなくとも、共感に一歩近づけます。

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※撮影時のみマスクを外しています。

4月から、1期生40名がSHIMOKITA COLLEGEに入学しました。今回のCollege Conversationの企画の背景には、入学したタイミングで「お互いがありのままを受け止め、学び合う文化」を作りたいという0期生の思いがありました。「聴く」というきき方を学んだカレッジ生。相手目線で話を「聴く」ことを日常生活の中で取り入れ、「お互いがありのままを受け止め、学び合う文化」をみんなで作ってほしいと思います。

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