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一つ一つの差の積み重ね:ラグビーリーグワン シャイニングアークス対ワイルドナイツ(2022年2月5日)

 今日は秩父宮でラグビーリーグワン シャイニングアークス対ワイルドナイツを観戦。

 ただ、今週、カメラ機材をD500からZ9に入れ替えた。しかしZ9が届いたのが今日の12時だったので、それからいろいろ準備していたら出発がギリギリになってしまった(キックオフは14時30分)。しかも、いつも行きがけにコンビニによって発券するのだけれど、そこでスマホを忘れたことに気づき、自宅に取りに戻るという失態(泣)。というわけで会場に着いたのはキックオフ10分後、既に0-14でワイルドナイツがリードしていた。


予想外の大差:5-48

 最終スコアは5-48(前半0-29)でワイルドナイツの圧勝。シャイニングアークスも22mラインまではボールを運べるものの、ワイルドナイツのディフェンスを決定的に突破するには至らず、ペナルティでボールをロストし、後退を余儀なくされ、失点するパターンを繰り返した。

 両軍とも攻撃はシンプル。この試合についてはキックもそれほど使わず、地上戦が主体の戦い。9シェイプ、あるいは10シェイプのフォワードをクラッシュさせ、フェイズを積み重ねていく攻撃。

 ブレイクダウンからお互いに素早くディフェンスのノミネートをやり直して、辛抱強くディフェンスをしていく。

 そんな中で、ワイルドナイツは、一度パスを出した後の内側にランナーを全速力で走りこませてゲインを稼ぐ。これはイーグルス戦の前半と同じパターンの攻撃。
 あるいは内側ではなくスタンドオフのすぐ外くらいに走りこませることもあった。

 シャイニングアークスは、ワイルドナイツがこうやって縦にランナーを走らせてゲインした後のディフェンスのノミネートがずれがちで、そこからループやダブルライン攻撃をされたときに大きく突破されていた。
 一方シャイニングアークスは、ブレイクダウンで劣勢に立たされて、自分たちの攻撃を思うように継続することができなかった。

 この試合、点差は開いたが、シャイニングアークスもワイルドナイツも接戦の末スティーラーズに勝利。と言うことで好ゲームが期待された試合だった。特に、シャイニングアークスは去年からの進歩が著しい。王者ワイルドナイツとの戦いでその真価を問う、という意味合いを持った戦いでもあった。
 しかし43点の大差がついた。シャイニングアークスのトライ数はわずかに1。ではその差はどこにあったのか。


 シャイニングアークスとワイルドナイツの差Ⅰ:セットピース

 1つはっきりとした差があったのは、セットピースと呼ばれる、スクラムやラインアウトだった。しかも、「セットピースを起点とした攻撃」ではなく、「セットピースそのもの」。
 まずはラインアウト。

 両チームとも、マイボールラインアウトでもボールロストしたことが何回かあったが、シャイニングアークスは特に重要なラインアウトでボールを失ってしまっていた。

 はっきりと大きな差があったのがスクラム。ワイルドナイツは、スクラムならほぼ確実にペナルティを取れるほどスクラムで優位に立っていた。

 そうなると、攻め込んでいても、ノックオンを犯しただけでペナルティ→タッチキックで大きく陣地を後退させられてしまう。自陣であれば、やはりタッチからのラインアウト、さらにモール攻撃やあるいはペナルティゴールで失点を積み重ねてしまう。

 スクラムについては、シャイニングアークスのイリーガルプッシュを取られる局面がいくつかあった。これはスピアーズ戦でも取られていたので、シャイニングアークスとしてはスクラムの押し方をもう一度考え直す必要があるだろう。

 シャイニングアークスとワイルドナイツの差Ⅱ:コンタクト

 2つ目の差はコンタクト。両方ともクラッシュに強い選手がいる。しかしワイルドナイツはクラッシュに強いペネトレイターに対してはダブルタックルで確実に止めていた。

 シャイニングアークスももちろんダブルタックルで止めにかかるが、前述の通りノミネートがずれてしまうことがあるのと、シンプルなクラッシュでもワイルドナイツのサポートが素早くて、ほんの少しでもゲインされて押し込まれる形が頻発した。

 シャイニングアークスは、スピアーズ戦ではトゥポウなどがクラッシュ寸前にパスをすることでディフェンスの目先を変えてゲインできていたが、トゥポウが先発じゃなかったこともあってか、今日はそうしたパスワークがほとんど見られなかった。
 これは何らかの意図を持ってのことなのだろうが、残念ながら機能していなかった。(個人的には、クラッシュ寸前のパスはけっこう好きなプレーで、楽しみに見に来ていたので、ちょっとがっかりした)
 最後はスペースのあるところでフォラウが突破してトライを奪ったが、シャイニングアークスは、この試合を通じて、再現性のある形でゲインラインを突破することができなかった。

シャイニングアークスとワイルドナイツの差Ⅲ:ブレイクダウン

 3つめの差はブレイクダウン。特に立ってプレイする意識。
 ワイルドナイツは、ブレイクダウンで簡単に寝ずに、立ったままジャッカルを試みる。シャイニングアークスはそこでターンオーバーを喫したり、あるいはノット・リリース・ザ・ボールを犯してボールを失った。

 一方、シャイニングアークスのプレイヤーは倒れがちで、オフフィート(オーバー・ザ・トップ)の反則を頻繁に取られた。
 そしてブレイクダウンの劣勢が、シャイニングアークスの攻撃の勢いをそぎ、ゲームの流れをワイルドナイツに向けていった。ワイルドナイツも、珍しく攻め込んでのノット・リリース・ザ・ボールを何度か犯していたが。

まとめ:小さい差の積み重ね


 今シーズンは、これまでの試合の中で、シャイニングアークスがここまで劣勢に立たされたことはなかった。思わず大差となったこの試合だが、細かく見ると、セットピース、コンタクト、ブレイクダウンに差があった。これらはラグビーの基本と言うべきポイントで、劣勢に立たされれてしまうと勝利するのは非常に難しい。
 ただ、どれもほんの少しの差だったと思う。けれどその差が積み重なると、とても大きな点差となるのが一流レベルの試合の怖いところ。
 ここから立て直すことができるか。今年大きな進化を見せているシャイニングアークスの真価を問われるのはここからだ。
 ワイルドナイツは円熟の強さ。果たしてどこが止めるのか。