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ラグビー戦術 基礎の基礎<1>:ジャッカルの成否を知る方法

これから本格的にラグビーシーズンが始まります。私もサッカーだけでなく、ラグビーのマッチレビューも書いていこうと思いますが、その前にラグビー戦術の基本的なことを書いておこうと思い立ちました。

これまでも何回か引用していますが、最新のラグビー戦術については、この本が素晴らしく詳しいです。

しかし、読み解くのにはかなりのラグビー知識を必要とします。私は、僭越ながら、この本を読むのに必要なレベルの入門的な知識を、主に初心者にわかりやすいように書こうと思っています。

新たにラグビーファンになった人のための基本的なルール説明は、動画でもいろいろなところにアップされています。

秩父宮に行っても、トップリーグでは簡単な「ルール講座」の動画が流れていたし、試合中にレフェリーの笛が鳴ったときには、それが何の反則だったのか放送が流れます。(時々レフェリーのコールと違う反則が説明されたりするのですが・・・・)

このように、ルールの入門的な知識はいろいろなところで見ることができますが、戦術の入門的な知識はあまり説明されていません。これから何回かに分けて、そのあたりを書いていきます。

全ての基礎はラインオフサイド

ラグビー戦術を理解する上で不可欠なのが、オフサイドについての知識です。ラグビーというのはサッカーと違い、オフサイドの種類が多いスポーツなのですが、ここで必要なのは「ラインオフサイド」という反則について理解することです。

スクラムやモール、ラックができると、「オフサイドライン」が形成されます。

引かれるラインは、スクラムだったらそれぞれの最後尾、モール、ラックだったら人が「ごちゃごちゃごちゃ」としているかたまりのそれぞれの最後尾です。

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この図で言えば、青チームは、青のオフサイドラインより上に出ればオフサイドになり、赤チームは、赤のオフサイドラインより下に出るとオフサイドになります。

これは2020年2月15日のスーパーラグビー サンウルブズ対チーフス戦でのラックの例です。赤い点線がサンウルブズの側に引かれるオフサイドライン、黒い点線がチーフスの側に引かれるオフサイドラインです。オフサイドラインはインゴールラインより後ろには下がらないので、インゴールラインと重なる形で引かれます。
この状況では、左に写っている黒いジャージを着たチーフスの選手はオフサイドなので、プレーに関わることはできません。

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このタイプのオフサイドは、「ライン」を越えたらオフサイドということで、「ラインオフサイド」と呼ぶのです。(他のオフサイドとしては、キック時の「10mサークルオフサイド」やモール、ラックに斜めに入るオフサイドなどがありますが、ここでは説明を省略します)

アタックラインとディフェンスライン

ただ、実際には上の図みたいな形で、両チームがオフサイドラインに沿って平行に並ぶことはあり得ません。実際には、ボールを持っている方が「アタックライン」というラインを作って斜めに並びます。斜めに並ぶ理由は、トップスピードで走りながらパスされたボールを捕るためです。

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そして、持っていない方は「ディフェンスライン」という横一線のラインを作ります。横一線に並ぶのは、でこぼこを作らないで一直線にタックルに突っ込むためです。いずれ話しますが、でこぼこになっていると躱される可能性が上がるのです。

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そのため、実際の試合では下記の図のように並びます(ボールを保持しているのは水色の方)。ボールを持っている方が斜めにラインを形成し、持っていない方が横一線にラインを形成するわけです。

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ジャッカルを見分ける方法

これが理解できると、「ジャッカル」が起こったかどうかがわかるようになります。

去年のワールドカップで有名になったプレーですが、「ジャッカル」とは、ラックの中で、これまでボールを持っていた側がボールを失い、これまで持っていなかった側がボールを得ることです。

ラックではボールは地面の上にあります。

そしてラグビーでは立っているプレイヤーしかボールに働きかけてはいけませんから、ジャッカルを試みるプレイヤーは立った状態でなければいけません。

次の二枚がジャッカルの例です。チーフスの5番がジャッカルを試み、見事にボール奪取に成功します。

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ジャッカルが成功したかどうかは、スタンドから判別するのは極めて難しいです。しかし、ラックそのものではなく、周りの選手の動きを観察していると、ジャッカルが成功したかどうかわかります。

なぜなら、ジャッカルに成功すると言うことは、ボールを奪取するということなので、成功した側のラインがディフェンスラインからアタックラインに変化するからです。

(なお、ラックでボールを奪取する方法はジャッカルだけではありません。ボールは地面にあるので、相手を押し出して(オーバーして)足で掻き出すこともあります。いずれにしてもボールを奪取できたらディフェンスラインはアタックラインに変わります)

逆に、ボールを奪われた方は、アタックラインから素早くディフェンスラインに変化させなければなりません。このように、ラックから左右に伸びているラインの形の変化を観察することで、ジャッカルが起こったかどうかを知ることができるのです。

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ここまでで2000字を超えてしまいました。次はオフサイドをどのように戦術的に使えるのかについて説明します。

(続く)