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まぎれもない完敗。ここから再出発:東京五輪日記 8.3

 昨日は日記を書けなかった。スペイン戦の敗北のダメージが大きすぎて、まとまった文章を紡ぎ出す自信がなくて、ビデオを見ながら飲んだくれてしまった。まあ、勝ったら勝ったでやはり飲んだくれていただろうけれど。

 書くのはサッカーだけになるけれど、一日遅れの昨日の日記を。

 昨日の準決勝は実はカシマのチケットを持っていた。東武トップツアーが直前に販売した日帰り往復バスツアー。茨城県が有観客だったらメキシコ対ブラジルを見に行って、日本対スペイン戦は帰りのバスの中でのオンライン観戦になっていたはずだ。

惜敗か完敗か?

 結果は延長戦の末0-1で敗北。PK戦まであと5分での決勝点だった。

 惜敗、と言うべきだろうか。完敗、と言うべきだろうか。

 印象としては完敗だ。115分間スコアレスの試合だったが、決定機の数はスペインの方が圧倒的に多かった。もちろんサッカーの勝敗は決定機の数ではなくゴールの数で決まる。けれど、決定機が多い方がゴールが決まる可能性は高い。

 大きな差はビルドアップにあった。日本のビルドアップは機能していなかった。

 特にスペインの4-1-2-3を相手にするのであれば、アンカー脇のスペースを使いたいところだったが、スペインの「即時奪回」のプレッシャーが激しく、実際にボールを失っていたのでそこで落ち着いてビルドアップができず、ロングボールを蹴って回収される展開が頻発した。

 一方、スペインは最終ラインから意図した形でアタッキングサードまで進入することができていた。日本の二列目が3人なこともあって、最終ラインからでも左右にボールを動かしてサイド、サイドからハーフスペース、ラファ・ミルがバイタルに降りてゼロトップの位置を取ってポストプレーと言う形で何回か崩された。そこで失点しなかったのは吉田、板倉、遠藤、田中の中盤がそれでも高い強度で守ったからだ。しかし、日本の攻撃から得点にいたるイメージを感じることはできなかった。

最後のディフェンスの崩しの差

 特に延長戦に入ってからは、日本もいくつかゴールチャンスがあった。けれどそのときでもスペインのディフェンスは崩されていない。決勝点の直前の日本のチャンスでエリア内からの三好のシュートがブロックされたが、正面でシュートブロックに入るとともにキーパーも備えができていた。正直あのシュートが決まる可能性は低かった。

 ニュージーランド戦でもあった、ペナルティエリア内での崩しのコンビネーションが足りないというニュージーランド戦でもあった問題は、この日にもあったと言うことだ。

 一方勝負を決めたアセンシオのシュートの時、ディフェンダーが寄せてはいたがシュートコースはすっぽりと空いていた。エリアに進入するまでの一連のショートパスでディフェンダーが振られ、一瞬だが完全にシュートコースが空いてしまった。あの場面はキーパーはノーチャンス。シュートが枠を外れるのを待つしかない。


冨安欠場のアヤ

 試合前の最大の驚きは三笘薫がベンチにも入っていないことだった。

 ただこの試合、イエローカード累積で冨安が出場できなかったことがアヤとなったように思われる。冨安がいないと言うことは、板倉がセンターバックに入る。板倉はベンチにいればセンターバックとボランチ双方のバックアップになれるが、スタメンに入ってしまうとセンターバックのバックアップを入れなければならなくなる。そのために瀬古が入る。久保と堂安を交代させることを考えると三好と前田も外せない。

 そうやって考えていくと、最後に残る1人に橋岡を入れるか三笘を入れるか、と言う選択が残る。ここで考えなければならないのは相手が自力に勝るスペインと言うこと。全体として守勢は避けられない。そうなるとセンターバックと右サイドバックができる橋岡をチョイスするのは理解できる。

 冨安がいれば冨安自身が右サイドバックのバックアップになり得るので、ディフェンダーのサブは板倉1枚で足りた。しかし冨安がおらず、板倉をベンチにおくこともできなかったので瀬古と橋岡を選んだと言うことだろう。

 ただ、橋岡がいたなら5バック(3バック)のオプションがあったはず。実際、試合終盤には橋岡を入れて吉田をトップに上げている。結果論なのは承知の上だが、延長戦になった段階でPK戦狙いに割り切って(スペイン相手だったらPK戦なら勝てる気がした)、延長戦後半は5バックで5レーン全部埋めて守り切るという選択もあったのではないか。

 三笘を外したことにはもうひとつ疑問がある。「早い時間に点を失い、追いかける展開だったらどうやって点を取ろうとしたのか?」と言う疑問だ。繰り返すが、日本の攻撃からは得点に至るイメージを感じることができなかった。偶発的なゴールでしか得点は奪えなかっただろう。追いかける展開になったらさらに難しい試合になったはず。そのときの打開策として三笘はオプションになり得たはずなのに。

 ただ、実際には延長15分までの防戦一方の試合展開だと、「三笘がいれば!」という形にはならなかった。けれど、失点したあとの最後の5分は、「三笘がいれば!」と心の底から思った。あの時間、スペインのディフェンスは完全に足が止まっていたから、三笘を投入すれば相当の効果を発揮したはずだ。「とにかく自陣からでもドリブルでアタッキングサードまで行け!」という形で最後の攻撃ができたのではないか。

 そのあたり、微妙な消化不良感が残る試合ではあった。けれど、「勝つイメージ」を持てる試合ではなかったという意味で、ベルギー戦後の悔しさとは違う。彼我の力の差を思い知らされた試合だった。「川崎フロンターレを相手にしているチームはこんな風に感じているのか!」というのが試合中の思い。これを惜敗と捉えず、完敗と捉えることから次の一歩が始まるのだと思う。

三位決定戦は見られないのだが

 昨日の試合を見ているとき、なんとなく1998年ワールドカップフランス大会初戦のアルゼンチン戦を思い出した。何が?と言うわけではないが、押し込まれるが必死に守り、チャンスもほとんどない中、キーパーのスーパーセーブで凌ぎ続けるという展開が似ていたからだ。

 次は三位決定戦。決勝に行くつもりだったのでこの日は藍井エイルのコンサートのチケットを取ってしまった(笑)。なのでリアルタイム観戦はできないのだが・・・・。素晴らしいチームの最後を飾る素晴らしい試合を見たいと思う。