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チームの「勝つ力」:ラグビー速報レビュー シャイニングアークス対スピアーズ

今日は秩父宮でラグビーリーグワンのシャイニングアークス対スピアーさズ戦を観戦。キックオフは12時という珍しい時間。シャイニングアークス主催試合なので、シャイニングアークスのFCでメインスタンドの最前列を取った。

 シャイニングアークスは、去年はスコットランド代表のグレイグ・レイドローを獲得するなど話題性はあったが成績は低迷。
 今年も、イズラエル・フォラウなど積極的に補強を行ってのシーズンイン。開幕初戦は、リーグワン最初の試合となったスティーラーズ戦に接戦の末勝利し、今年の出来に期待を持たせての二戦目となった。

 スピアーズは去年のプレーオフではベスト4に進出。今年はさらに上を目指してのシーズンインだ。

 最終スコアは19-9(前半6-10)でスピアーズの勝利。トライはスピアーズに一本あっただけで、シャイニングアークスはノートライ。まるでトーナメントのような試合だった。

両チームの攻撃パターン

 お互いにキックを多用し、キックでテリトリーを稼いで前進する意図がはっきり見られた。


クラッシュの強度も高い。反則も、多かったが、ブレイクダウンでのターンオーバーも何度も起こり、見ていてエキサイティングな試合だった。







 なお、攻撃パターンは両チームで違いがあった。

 シャイニングアークスの攻撃はまずは9シェイプのフォワードで当たってブレイクダウン。
 そこからスタンドオフではなく、もう一度フォワードで当たる。あるいは当たると見せかけて多くの場合5番のジミー・トゥポウから後ろのスタンドオフのオテレ・ブラックにパス。そこからキックなりパスなり飛ばしパスで攻めていく組み立て。去年はキヤノンがよく使った攻め方だ。


 ちなみに、フォワードがクラッシュと見せかけて放るこのパスを岸岡に狙われて一度インターセプトされている。

 スピアーズは9シェイプのフォワードが当たったら次はスタンドオフ。ただ、そこに12番の立川が入って縦にクラッシュする事もある。10番の岸岡がボールを受ける場合はクラッシュはまずなく、キック(キックパス含む)かパス。

 勝敗を分けたのはどこだったろうか。シャイニングアークスがリードされて迎えた後半は、シャイニングアークスが攻めている時間が長く、2つ3つはトライが取れていてもおかしくなかった。なのに勝ったのはスピアーズ。
 あまり面白くない仮説はあるのだが、それは三つ目に示すとしてポイントを挙げておく。

ポイント1:両軍に出た決定的な場面でのミス

 これは「勝敗のポイント」というよりこの試合の特徴というべきだろうが、両軍とも、トライにつながる状況でノックオンなどのミスが出た。

 これは前半最後のスピアーズのトライチャンスでのノックオン。

 これは後半のシャイニングアークスのノックオン。

 ノットリリースザボールなどでのボールロストもあったが、ノックオンでトライを逃すのはもったいない。それが起こるのが楕円球のおもしろいところではあるのだけれど。

ポイント2:キックの時のトランジション

 前述したとおり、この試合では両軍ともキックを多用。お互いに巧妙なキック戦術で、キックの応酬のあとのテリトリー確保はほぼ互角立ったと思う。

 しかし、キック戦術の応用問題というべきか、トランジションへの対応ではスピアーズが勝っていた。
 トランジションとは、ボールを保持する側が変わること。ラグビーにおけるキックは、キック時に前方にいるプレイヤーはボールをキャッチできない(オフサイドになる)から、キックのときはトランジションが起こる可能性が高い。
 テリトリーキックは相手に取らせた上でもう一度蹴らせて、そのボールを確保してテリトリーを進める戦術だ。

 シャイニングアークスもスピアーズも相手に蹴らせた上でその後の展開を有利にする意図を持ってキックを使っていた。
 しかしスピアーズにはシャイニングアークスを上回る点があった。それは、シャイニングアークスに蹴られたあと、単に蹴り返すのではなく他の選択肢で切り返すことができたことだ。
 典型的なのは前半終盤、シャイニングアークスが蹴ったボールをスピアーズのフルバックのファンデンヒーファーがキャッチ。蹴り返す素振りでシャイニングアークスがリターンキックに備えた瞬間にランで仕掛けた時だ。
 このとき、シャイニングアークスのディフェンスは対応が遅れ、ビッグゲインを許した。

 このときのように、トランジションの時のアタックオプションの幅と、チーム全体の反応速度においてスピアーズがシャイニングアークスを上回っていた。

ポイント3:チーム全体の「勝つ力」

 ただ、キック時のトランジションへの対応力だけで勝敗が左右されたとは思わない。
 あまりこういう結論は好きではないのだが、最後に勝敗を分けたのは、勝負所での集中力の差だったように思う(好きではないのは、すべてを集中力や精神力のせいにしてしまうことができるから)。

 特に後半、シャイニングアークスは何度かトライチャンスがあった。しかし、そこで取り切ることができなかった。逆にスピアーズに切り返されたところで反則を犯し、PGで点差を広げられていくことになった。
 このあたりの規律や集中力において、スピアーズとシャイニングアークスには、大きくはないが明らかな差があったといえると思う。

まとめ

 今日の勝敗を分けたのは、結局チームとしての経験値の違いだろう。
 着実に成績を上げてきて、去年はベスト4に進出したスピアーズと、開幕戦では金星を上げたものの、まだチームとして修羅場をくぐった経験の少ないシャイニングアークス。今年の開幕戦の勝利をチームとしての強化につなげることができるか。時節以降の試合こそが正念場になるだろう。

 スピアーズはまだマルコム・マークスも合流していないしバーナード・フォーリーもいる。まだ伸び代がある中で、負けてもおかしくなかった今日の試合を拾ったことは、チーム力が確実に付いたことを示しているし、シーズン終盤になって大きな勝ち点になるかもしれない。