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高いディシプリンに支えられた激しいファイト:パナソニックワイルドナイツ対サントリーサンゴリアス<1>(5月23日)

 5月23日、ラグビー日本選手権決勝が行われた。パナソニックワイルドナイツ対サントリーサンゴリアス。日本最強のチーム同士の対戦だ。

 最終スコアは31-26(前半23-7)。決勝戦にふさわしいハイレベルの激闘だった。

プレビューの答え合わせ:まあまあか??

 いちおうまずプレビューの答え合わせを。

 見どころ1として挙げたのはキック。具体的には「サントリーはキックを使うか」。結論から言うと、この試合は両軍とも非常に多くのキックを使ったキッキングゲームになった。

 ただ、サントリーは前半立ち上がりはキックを封印し、普段だったらキックするフェイズでも9シェイプのフォワードで近場のクラッシュを繰り返した。

 しかしそれでは分厚いパナソニックディフェンスを破ることができず、10分当たりから焦れたようにキックを使い始める。一部のキックは、サントリーの「形」としてのキックではなく、「蹴らされた」キックだった。

 それでも、パナソニック得意の、「相手のキックをキャッチして切り返してトライ」は1つもなく(17分に流のキックをキャッチしてからのカウンターから福岡がトライ寸前まで行くが、直前でノックオンしてしまった)、テリトリー前進率もそれほど悪くない(詳細は次回)。

 そう見ると、キック戦術自体は一定の効果があったと言える。ただし、クボタとの2試合ほどには効果的でなかったことも事実。

 2つめの見どころとして挙げたのはブレイクダウン。これは両者とも高い規律の下に素晴らしいコンペティションを見せてくれた。


 ボールロストマップを後掲するが、ターンオーバーされたのはパナソニック1回、サントリー3回。ノット・リリース・ザ・ボールがパナソニック2回、サントリー3回。やはりペナルティゴールの重さを両軍認識しての規律を守ってのプレーだった。このあたりは反則の多い他のチームが見習うべきところ。

 3つ目に挙げたのはアンストラクチャーの攻防。こちらも見応えがあった。パナソニック30分の福岡のトライはターンオーバーからの速攻での福井翔大のビッグゲインがきっかけ。他にもトライには至らないものの大きなゲインが見られた。

 サントリーの70分の齋藤直人のトライも、パナソニックのハイパントをキャッチしてからのボーデン・バレットのすさまじいスピードでの横走りからのアタックによるもの。

ターンオーバー後に少しでも気を緩めると抜かれる、息もつかせない攻防だった。

 4つめに挙げたのはスペシャルプレー。これについてはあまり見られなかった。ただ、スペシャルプレーとは違うが、序盤、パナソニックはボーデン・バレットを取り囲むようにディフェンダーが詰めていくアンブレラディフェンスを敢行。

 これはトップリーグだとクボタの基本的な防御戦術だが、パナソニックは今年は見せていなかったと思う。そこからディラン・ライリーがインターセプトして開始5分の先制トライを奪った。

 この時だけでなく、何度かバレット周辺にタックラーが詰めていく形が見られた。ポイントは、闇雲にバレットめがけて突っ込むのではなく、バレットにパスが回るフェイズまで待つ、と言うことだ。パターン化されたディフェンスではなかったので、クボタ戦と違って、バレットも外側へのキックパスでディフェンスの裏を突くことができなかった。

 また、バレットに対してだけでなく、全体的にいつもよりラインスピードが速かった。この日のサントリーがいつになくノックオンが多かったのは、このパナソニックディフェンスのプレッシャーによるものだろう。

 と、見ると、答え合わせとしてはまあまあと言えるだろうか。甘めの自己採点だけれど(笑)。

パナソニックのボールロスト、13回

 ここでボールロストマップを見てみよう。

 まずパナソニック。

 ボールロスト、わずかに13。うちラインアウトスチールが3つ。ラインアウトスチールを除けばなんと10個になる。


サントリーはノックオンでのボールロストが8回

 ボールロストはパナソニックより多く19。全般的な傾向から見れば際だって多いというわけではないが、パナソニックより6個も多いとやはり試合を難しいものにしてしまう。目立つのはノックオンがなんと8回もあること。しかもそのすべてが敵陣。

 パスミスも3回。インターセプトが1回。これらのハンドリングエラーを合計すると12回。これらを含めてもすべて敵陣。これではなかなか攻撃をリズムに乗せるのは難しい。

 ただこれは、サントリーのスキルがどうのと言うことではない。ミスパスなどは、そこにディフェンダーがいるから起こるもの。つまり、パナソニックのディフェンスのプレッシャーによって誘発されたミスだと考えられる。

得点機会は拮抗

 まとめた表がこれ。

 両軍とも、ペナルティによるボールロストの少なさが際立つ。また、自陣22mライン内側もなし。一方、敵陣22mラインより向こうでのボールロストはパナソニック5、サントリー4と両軍とも多め。それだけ最後のディフェンスが激しかったことを表している。

 得点機会も拮抗。勝ったパナソニックが7回で8回のサントリーよりも少ない。内容を細かく見ていきたいところだが、それは次回。キックのデータと一緒に見てみようと思う。

(続く)