攻撃の「幅」の差:速報レビュー ラグビーリーグワン サンゴリアス対ヴェルブリッツ
今日は味スタでラグビーのサンゴリアス対ヴェルブリッツ戦を観戦。
昨夜、昨日の試合の写真の整理をしていたらとんでもないニュースが。日本のラグビと縁が深いトンガで火山の大噴火が。ラグビーファンとしては何かしたい、と思って、トンガの国旗を掲げることを思いついたけど、それはまた別に書こうと思う。
ヴェルブリッツ(トヨタ)は昔からの強豪。何人もの日本代表選手を輩出している。しかし勝ちきれないチームでもあって、トップリーグ時代に優勝したことはない。
このあたり、同じくトヨタを母胎とするグランパスにどことなく立ち位置が似ている(グランパスは優勝しているので違いはあるけれど)。
去年は巡り合わせでヴェルブリッツの試合を見ることができなかったので、けっこう楽しみにしていた。
最終スコアは50-8でサンゴリアスの大勝(前半29-3)。サンゴリアスとしては、点の取り合いとなった前節のブレイブルーパス戦とは打って変わって、得点を積み重ねる一方できっちりと相手の攻撃を封じ込める会心の試合となった。
ポイント1:互角だったブレイクダウンとフォワード戦
点差は開いたが、それほど地力の差があったとは思えない。特にフォワード戦はほぼ互角。スクラムでは珍しいくらいがっちりと組み合った。
反則も出たが双方ともにであり、互角の中で高度な駆け引きが行われていたことがうかがえる。
ブレイクダウンも非常に強度が高かった。ここでも双方に反則が出たが、お互いに激しくボールに絡み、ターンオーバーが何度も起こった。
今日に限らず、これまでの二節の試合は、いずれも去年以上に高い強度でブレイクダウンを競い合っているように思える。だとすればいい傾向だろう。
というわけで、フォワード戦やブレイクダウンの攻防はほぼ互角。こんな点差が付くようなものではなかった。
ポイント2:アタックの「幅」
勝敗を分けたのは、アタックオプションの「幅」だったと思う。
お互いにブレイクダウンからまず9シェイプのフォワードで当たる。次はクラッシュもあれば、当たると見せかけてバックドアにパスしてディフェンスをずらそうとする。
実はここで両チームの差が出ていた。サンゴリアスは、スタンドオフの田村煕だけではなく、ダミアン・マッケンジーや中村亮土もゲームメイクができる。そこで彼らがポジションを入れ替えたり近いポジションに立って、ディフェンスの的を絞らせない。
特にマッケンジーは、前節のブレイブルーパス戦に続いてスタンドオフのポジションにしばしば入った。
また、スクラムハーフの流大のハイパントも効果的で、ディフェンスを押し下げることができた。
さらにピックアンドゴーを含め、縦の動きと横の動きがうまく組み合わされていて、ディフェンダーを集めておいて空いたエッジのスペースを使って仕留める形で何本かトライを奪った。サンゴリアスは文字通り、フィールドの「幅」をうまく使うことができていた。
一方、ヴェルブリッツの攻撃パターンはサンゴリアスに比べて単調で、バックドアにパスしたときもきちんとサンゴリアスのディフェンスが詰めてきてつぶされてしまっていた。
そうなるとなかなかディフェンスを破ることはできない。
もちろんキックによる前進も試みたが、マッケンジーにうまく処理され、カウンターで走られてゲインされることが多かった。
そうなってしまうと、キックはただボールを失うだけになってしまう。チャンスはブレイクダウンの攻防の中でサンゴリアスが反則を犯したケースがほとんどで、サンゴリアスのディフェンスを崩しきることはできなかった。
むしろ、サンゴリアスのディフェンスの壁(シールドロック)を破ることができないうちにヴェルブリッツ側が反則を犯してボールを失い、押し戻されて失点するパターンだった。
まとめ
ヴェルブリッツはまだフルバックのウィリー・ルルーが合流できていない。オミクロン株出現に伴う入国制限の強化で合流が遅れたからだ。
その意味でまだヴェルブリッツは完全体ではない。ルルーが入るとまた攻撃パターンは変わるだろう。フォワードは十分以上に機能しているだけに、ルルーの早期合流が待たれる。
サンゴリアスはブレイブルーパス戦での課題だったディフェンスをきちんと修正する事ができた。
これはもっとちゃんと分析してみたいが、去年のボーデン・バレットとは特徴が大きく違うダミアン・マッケンジーをうまく組み込んだ形でのチーム作りの方向が見えてきたように思える。