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ボールロストマップから振り返る20/21大学ラグビー<1>:明治大学

 大学選手権決勝のあとでボールロストマップを作ってみました。結構面白かったので、ボールロストマップから、2020/21年シーズンの大学チームを振り返ってみようと思います。

 今日はまず第1回、明治大学から。

 今年の明治のシーズンは、慶明戦でつまずいたあと、帝京戦での大逆転劇、早明戦での完勝を経て、大学選手権では日大戦での予想外の苦戦、そして昨年の雪辱を期した決勝の一歩手前、準決勝で天理に完敗して幕を閉じました。

ベストゲームは早明戦

 この今シーズンの明治、ベストゲームはやはり早明戦でしょうか。

 34-10で完勝した試合ですが、ボールロストマップで見るとこんな感じです。
(略語の説明= DT:ダイレクトタッチ、KO:ノックオン、MUP:モールアンプレイアブル、NR:ノット・リリース・ザ・ボール、NS:ノットストレート、OT:オーバー・ザ・トップ、TF:スローフォワード、TO:ラックでのターンオーバー)

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 ボールロストわずか10回。しかもそのうち8回がノックオン。他はノット・リリース・ザ・ボール1回とラックでのターンオーバー1回。他にもペナルティはありましたが、それはディフェンス時のペナルティでアタック時の無駄なペナルティでボールを失うことがなかったのが特色です。

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 これは逆に言えば、早稲田がディフェンスでボール奪取できていなかったことでもあり、この試合での明治の充実ぶりを表しています。

大学選手権での日大戦

 もう1試合、大学選手権準々決勝の日大戦を見てみましょう。

 34-7で勝利しましたが、途中まで苦戦した試合です。
(略語の説明= DT:ダイレクトタッチ、KO:ノックオン、LO:ラインアウト、MUP:モールアンプレイアブル、NR:ノット・リリース・ザ・ボール、NS:ノットストレート、OT:オーバー・ザ・トップ、TF:スローフォワード、TO:ラックでのターンオーバー)

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 ボールロストは14回で早明戦より多いです。この試合のボールロストは、敵陣10mラインを越えてからが多い(9回)というのが特徴です。これで得点機会を逃していったのが苦戦の原因ですね。


敗れた慶明戦では?

 一方、ワーストゲームを挙げるとすれば負けた2試合のどちらか。対抗戦での慶応戦と、最後の試合となった大学選手権準決勝の天理戦です。

 まず慶応戦。

(略語の説明= DT:ダイレクトタッチ、HP:ハイパントでのボールロスト、KO:ノックオン、MUP:モールアンプレイアブル、NR:ノット・リリース・ザ・ボール、NS:ノットストレート、OS:オフサイド、OT:オーバー・ザ・トップ、SP:ショートパントでのボールロスト、TF:スローフォワード、TO:ラックでのターンオーバー)

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 なんとボールロスト22回。ノット・リリース・ザ・ボール5回とタックルに押し込まれてのスローフォワードが2回合わせての7回は慶応のタックルの鋭さによるものです。

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 また、敵陣10mラインよりも自陣側でのボールロストは実に18回(マップで入れたダイレクトタッチは外してあります)。なんと大学選手権決勝の早稲田対天理戦で早稲田が失った16回を上回ります。

 この試合で明治が敵陣22mラインを越えたのはわずか3回だったわけですが、中盤でこれだけボールを失っていてはそうなるのは攻め込めないのはやむを得ないというところ。サッカーに例えるならば、「慶応のハイプレスが上手くはまってビルドアップができなかった」というような状況です。

 また、ハイパント、ショートパントでのボールロスト5回というのも多いです。この試合の明治、15回蹴った中で前進できたのはわずか2回だったわけで、キック戦術が機能してないのも明らかでした。実際、明治はその後キックの数を減らしていきます。

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箸本組、最後の試合となった天理戦

 箸本組の最後の試合となった大学選手権準決勝の天理戦はどうでしょう。

(略語の説明= DT:ダイレクトタッチ、HP:ハイパントでのボールロスト、KO:ノックオン、MUP:モールアンプレイアブル、NR:ノット・リリース・ザ・ボール、NS:ノットストレート、OS:オフサイド、OT:オーバー・ザ・トップ、SP:ショートパントでのボールロスト、TF:スローフォワード、TO:ラックでのターンオーバー)

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 ボールロストは16回と、慶応戦よりかなり少ないです。敵陣10mラインより自陣側でも8回とかなり少ない数字。この試合で敵陣22mラインを超えた回数は天理と同じ7回ですが、早稲田と違い、中盤でボールを失っていないことが、それだけの得点機会をもたらした要因です。

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 一方、敵陣22mラインを越えてからのボールロスト4回は効いてます。そのうち3回はノックオンかパスミスで、ここのミスがなければ、ということは言えます。

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まとめ:1シーズンに2回ピークを作るのは難しい

 こうしてみると、なかなか単一の敗因を見いだすのは難しいですね。

 対抗戦の慶明戦では、慶応の激しい中盤でのディフェンスを突破できなかったのが敗因。

 一方天理戦では、中盤ではそれほどボールを失いませんでしたが、敵陣22mラインを越えてからのミスで仕留めきれなかったのが敗因でした。天理との試合は、決勝で早稲田が中盤でボールを多数失っていた一方で、敵陣22mラインを越えたら確実に仕留めていたのとは対照的でした。

 今年の明治は、箸本主将のリーダーシップの元、フォワード、バックスのバランスはとてもよく仕上がったいいチームだったと思いますが、大学選手権では攻め込んでいるときのミスが多く出てしまいました。このあたりはメンタルも絡んでくるのでしょう。早明戦で一度ピークに持って行った後、1シーズンに2回ピークを作るのはやはり難しい。そういうことなのだと思います。